先日PreSonusから、ライブ配信に特化したオーディオインターフェイスRevelator io24が発売されました。エフェクト、ミキサー、ループバックを簡単に操作することができる新世代のインターフェイスとなっており、内蔵DSPも装備しているので、PCに負荷を掛けることなく各種エフェクトを利用することができます。各ソフトウェアの音声をRevelator io24内でミックスできるループバックオーディオ機能や複雑なルーティングを行うことなく配信の準備を整えられるストリームミックスモード機能が搭載されていたりと、便利な機能が盛りだくさん。
もちろん、音楽制作用として使うこともできるスペックを有しており、最大96kHz/24bit、ギターでもマイクでも入力できるコンボジャックを2基搭載、MIDIの入出力にも対応。また、Studio One Artistが付属しているため、これからDTMを…というエントリーユーザーにもピッタリな製品でもあります。さらに総額10万円以上もの音源やエフェクトが付いてくるStudio Magicソフトウェア・スイートが収録されているのに、Revelator io24は27,500円(税込)とコストパフォーマンスが高いのもポイント。実際どんな機材なのか試してみたので紹介していきましょう。なお記事の最後には、なお、記事最後にはサウンドプロデューサーでレコーディングエンジニアの峯岸良行(@Mine_Chang)さんによるRevelator用プリセットについても紹介しています。
Revelator io24を開発したPreSonusは、世界の多くのユーザーに愛用されているDAW Studio Oneを開発しているメーカー。DAW以外のソフトウェアとしは、高品位なプラグインを開発していたり、Notionという楽譜ソフトをリリースしています。また、 Studio Oneと連携して使うスマホアプリを作っている一方、オーディオインターフェイスのQuantumシリーズ、Studio USB-Cシリーズ、AudioBoxシリーズ……などのハードウェアも開発しています。大ヒットしたFaderPortという1チャンネルフェーダー搭載のフィジカルコントローラといった、プロ現場で見かける機材など、PAミキサーのStudioLiveシリーズや真空管プリアンプTubePre V2、真空管チャンネル・ストリップStudio Channel、モニタースピーカーSceptreシリーズ……など、ハードウェアとソフトウェアの両方から幅広く音楽制作をサポートしています。
そんなPreSonusが新たにリリースしたRevelator io24。以前「楽曲制作から配信までこなせる、エフェクト/ミキサー/ループバックを統合した新世代のUSBマイクPreSonus Revelator」という記事で紹介した、USBマイクRevelatorと近いコンセプトのもとリリースされており、配信特化型の機材となっています。
RevelatorがUSBマイクだったので、これ1つで配信を始めることができた一方、Revelator io24はオーディオインターフェイスとなっているので、声を入力するためには別途マイクを用意する必要があります。なので、「まだなにも機材を持っていないけど配信をしてみたい!」という方は、Revelatorを選択するのがいいかもしれません。ですが
、配信も盛んになってきているので、すでにマイクやオーディオインターフェイスを持っているという方は多いと思います。もちろん、従来のオーディオインターフェイスを使って配信することもできるのですが、Revelator io24は配信に特化しているだけあって、音声の管理が圧倒的に楽。すでにある機材を使いつつ、配信環境をアップデートすることができるので、Revelator io24がどんな機材なのか順番に見ていきましょう。
Revelator io24は付属のUSB Type-C-USB TypeAのケーブルで接続することができ、PC側はUSB TypeAの端子。接続すれば、外部電源不必要でバスパワーで駆動するので、別途電源ケーブルを繋ぐ必要なく、WindowsやMacで利用可能です。また、iOS、Androidにも対応しているので、iPhoneやiPadの場合はLightning-USB3カメラアダプタで接続(給電が必要なためLightning-USBカメラアダプタでは利用できません)。AndroidはOTGケーブルを介して接続可能。ただ、後述するUniversal Controlは、PCでしか起動できないため、細かいカスタマイズを行うのであれば、PCが必要。出先で使うときはスマホを使うなど、場面で使い分けるといいと思います。
フロントには、ギターを繋いだり、ライン入力、マイク入力に対応したコンボジャックが2ch搭載してあります。これはPreSonusが誇るソリッドステートのプリアンプ回路「
また、右側に搭載されているノブでは、画面に表示される設定を操作することができ、ホーム画面ではヘッドフォンの音量、メインの音量、モニターのブレンドを調整可能。このノブは、押すことのできるボタンにもなっており、ホーム画面では各種音量のパラメータを切り替えることができます。ホーム画面では、入力レベルや出力レベル、ファンタムのオンオフといった情報を確認することができます。
1または2と書いてあるボタンを押すと、各チャンネルの画面に切り替わり、入力ゲインのコントロール、ハイパスフィルタのオンオフ、+48Vファンタム電源の供給の切り替えを行うことができます。ちなみに1と2の間のボタンは戻るボタンになっており、これを押すとホーム画面に戻ることができます。
ほかにも普通のオーディオインターフェイスでは見かけないメインアウトをミュートするボタンが付いていたり、Presetと書かれたプリセットセレクターボタンが搭載されています。Presetボタンを押すと、後述するUniversal Controlの設定を呼び出すことができます。1チャンネル最大2つまで設定をRevelator io24に保存することができるので、いつものセッティングを保存しておいて、瞬時にプリセットを呼び出すことができますし、スマホで接続しているときなどは、Universal Controlを使わずともEQやコンプを掛けた状態を作り出すことができます。ちなみにPresetボタンは長押しするとバイパス状態にすることができます。
リア側には、USB-Cポート、ヘッドホン端子、メインアウト、MIDIの入出力が装備されています。電源ボタンはないので、PCとUSB接続した場合、そのまま電源がオンになる仕様になっています。詳細な設定はPCから行うようになっていますが、基本的な調整はRevelator io24本体のみで行える設計になっているようですね。
では、ここからUniversal Controlについても見ていきましょう。Revelator io24をPCに接続して、Universal Controlを起動すると、画面に「Revelator IO 24」と表示されるので、まずこれをクリックします。
Universal Controlを起動して、「Revelator IO 24」をクリック
すると、以下の画像のような画面が表示されます。ざっと見方を説明すると、下側が各チャンネルのミキサー、上側がエフェクトの設定を行う場所になっています。
ミキサーでは、Revelator io24本体を操作しても調整できたゲインやファンタム電源のオンオフがChannel1,2で利用可能です。また、ほかの各ソフトウェアの出力をPlayback、Loopback1,2に割り降って、ここで音量を調節することができたり、リバーブを掛けることも可能です。ZOOMやSkypeといった通話アプリでのセッティング例は、マニュアルに乗っているので、ぜひそちらを参考にしてみてください。ループバックを使って、配信の際に声以外にもBGMを掛けたり、通話中に相手の声だけ録音するといった使い方が可能です。
また、Revelator io24のユニークなところは、ストリームミックスモードが搭載されている点。これは、以下のブロック図のように信号の流れを変更することができるもの。ストリームミックスモードをオンにすると、マイク、SkypeまたはZoomからのゲストオーディオ、メディアプレーヤーアプリからのBGMなど、複数のオーディオソースを使用してライブストリーミングを行い、これらすべての要素をステレオ信号でストリーミングソフトウェアに送信することができます。一方オフにすると、Skype、ZoomやBGMを掛けるために起動したSpotifyなどのオーディオソースをRevelator io24の入力とミックスすることなく、DAWなどに録音することが可能です。
ちなみにオンオフは、右上にある「Stream Mix」というボタンから操作可能です。
では、上側にあるエフェクトの設定についても見ていきましょう。左上には、2つのプリセット名が表示が表示されていますが、これがRevelator io24本体のPresetボタンを押したときに呼び出される内容です。1ch、2chそれぞれ2つ設定することができます。また、その右側にあるプリセットセレクターでは、元から用意されているプリセットを8種類、ユーザープリセットを8種類ストックできるようになっています。プリセットセレクターにストックしている内容をプリセットボタンに2つアサインできるようになっているわけです。
そして、プリセットセレクターの右側には、HPF、Gate、Comp、EQ、Limiter、Voiceと書かれているようにエフェクトの設定を変更することができます。ここに表示されているものは、各エフェクトのプリセットとなっており、それぞれ使い勝手のいいものが用意されています。
また、さらに詳細にエフェクトを調整するには、「Fat Channel」という書いてあるところをクリックします。すると各エフェクトの詳細なパラメータが表示されるので、これを使って音作り可能。ちなみにStudio Oneに搭載されているFat Channelと同様の画面となっており、ライブ/スタジオ用デジタル・コンソールPreSonus StudioLiveシリーズのFat Channelプロセッサの一部の技術が使われているこの機能では、ビンテージ機材を再現しているエフェクトも利用可能です。
また特殊なエフェクトとして、
De-Tuner
Vocoder
Ring Modulator
Filters
Delay
を搭載しており、この中から1つを選んで利用することができます。ちなみにこのFat Channelの信号処理は、PCで行われているわけではなく、Revelatorの内部DSPで処理しているので、レイテンシーはまったくありません。
先ほど、ミキサーのところにあったようにLoopback1,2があるので、スペック的には6ch入力/8ch出力。Studio Oneを起動してオーディオI/O設定を見てみると、入力はMic1/inst、Mic2/inst、Loopback input 1 (L)、Loopback input 1 (R)、Loopback input 2 (L)、Loopback input 2 (R)があるのが分かります。
一方出力は、Main/HP Out L、Main/HP Out R、Loopback Output 1 (L)、Loopback Output 1 (R)、Loopback Output 2 (L)、Loopback Output 2 (R)となっています。
ここの入出力の設定からでもループバックのチャンネルが選べるので、たとえばほかのソフトの出力をLoopback input 1 (L)、Loopback input 1 (R)に設定して、Studio Oneに録音していくということも可能ですね。前述したとおりRevelator io24は、音楽制作でも使えるので、配信もしてみたいけどDTMもしてみたい方にとっては、ベストな選択だと思いますよ。
また冒頭でも書いた通り、Revelator io24にはStudio One Artistが付属しています。これは、無料版のStudio One Primeと最上位版のStudio One Professionalの間に位置しているエントリー版。エントリー版であるものの十分音楽制作を行える機能を備えており、Studio One 5にアップデートを果たした段階でAU、VST2、VST3プラグインが使えるようになったので、サードパーティー製の音源やエフェクトを扱えます。
また、以前「PreSonus製品を買うともらえる総額10万円以上のプラグイン集、Studio Magicソフトウェア・スイートがさらに豪華に」という記事でも紹介した通り、10万円以上の音源やエフェクト、サンプルパックがゲットできます。初めての方にとってはいいスタートダッシュを切ることができ、すでにDTMを始めている方にとっても楽曲制作環境を強化する手段になるはず。
なお、現在RevelatorとRevelator io24で使えるプリセットが配布されています。サウンドプロデューサー峯岸良行さんがRevelatorを使う日本人の声に合わせて作ったプリセットととなっており、8種類のプリセットを無料でダウンロード可能です。
Mine-Changプリセット (以下峯岸さんより)
誰でも簡単に「放送にふさわしい音」「印象の良い音」で録れるように、先ずはRevelatorマイクロフォンの特性を測定し、それを基にコンピューターで逆特性のEQカーブ計算をさせ、そのEQカーブを基に8種類のプリセットを作成しました。これらのプリセットは、マイク自体の特性だけではなく、さらに突っ込んで日本人の声の特性に最も合うようにファイン・チューニングも施しています。
収録内容としては、放送用ナレーション・プリセット、ヴォーカルの収録/配信のために、クリーンでナチュラルなJ-POPタイプとアグレッシブな設定を施した海外POPタイプの2種類を用意しました。また、楽器の収録/配信に最適なフラットなプリセット、そして、配信にスパイスを与える「変声」のプリセットもあります。サウンド調整のポイントを解説した動画にも出演していますので合わせてチェックしてください。
・放送用(男性).channel
・放送用(女性).channel
音声を聴き取り易くする男性と女性の放送用プリセットです。プロの現場では、マイクロフォンの音声をそのまま使うことは余りありません。リスナーに聴き取り易くするために、エネルギーが大きく不必要な低音域をハイパス・フィルターでカットして、さらにノイズ処理も施します。そして、EQやコンプレッサーでサウンドを整えてから納品/放送します。
実際に今回作成したプリセットでも、男女で異なるハイパス・フィルターを設定していますし、EQはフラットに収録できるようにチューニングを施しています。また、コンプレッサーには真空管タイプを選び、自然なコンプレッションを深めに設定しています。これにより音圧も上がりリスナーが聴き取り易くなります。ナレーションされる方の声質に合わせて効き具合を微調整していただくと、なお良いかかと思います。
また、ゲートによる不要なノイズも適度にカットする様に設定されています。できるだけ静かな部屋で収録するのが望ましいですが、どうしても現場には様々なノイズが発生します。それらのノイズが適度に抑制されることで、クリアで聴き取り易いナレーション用音声となります。最終ステージには、リミッターを-1dBで設定しています。Revelatorからの最終出力レベルが0dBを超えて放送事故にならないように、特に生配信の時には重要な機能ですね。
・J-POP(女性).channel
・J-POP(男性).channel
クリーンでナチュラルな音質が得られる、男性と女性のJ-POPボーカル用プリセットです。ボーカリストが歌い易く、そして歌の持つ本来の抑揚を正しく表現するために、強く声を張った時に薄らとコンプレッサーが動作する様に真空管タイプを設定しています。VUメーターの針が-6dB〜-10dB辺りを指すようにして使用してみてください。もし、もう少しコンプレッションさせたい場合には、Peak Reductionノブを右に回すと、より深くコンプレッションされます。
このプリセットは、ボーカル用なのでゲートはあえてオフに設定しています。これは、ゲートを有効にすると細かい歌のニュアンスや息遣いなどがカットされてしまうからです。ただし、ライブ配信の時などで背景ノイズが気になる場合は、ゲートをオンにするのも有効かと思います。
・海外POP(女性).channel
・海外POP(男性).channel
J-POPプリセットに比べると、よりアグレッシブな効果が得られる男性と女性の海外POPボーカル用のプリセットです。コンプレッサーはFETタイプで8:1という深めの設定です。J-POPプリセットに比べるとよりパンチのあるサウンドになっています。
このプリセットには、最終ステージにDoublerという特殊エフェクトを使っています。Doublerにより、1オクターブ下の音声がうっすらと入るように設定してあるので、洋楽でよく聴かれる肉厚なボーカル・トラックを制作することが可能です。Doublerの効果は、解説ビデオでも紹介しているのでチェックしてください。もちろん、Doublerの効果が不要に感じる場合にはオフにしてください。
また、この海外POPの女性用のプリセットでは、子音や空気感をより表現できるようにEQで高音域を上げて設定しています。ブライトでクリスプなボーカルが欲しい場合には、海外POP(女性)のプリセットがお勧めです。
・楽器(フラット).channel
ギターなど生楽器を録音する場合に最適なプリセットです。Revelatorマイクロフォンの特性を分析し、できるだけフラットかつ自然なトーンで楽器本来の響きを収録できるように、EQ以外はオフにしています。これは、レコーディングの後で編集をし易いようにするためです。
逆に、ライブ配信時などはいきなり「良い音」「完成した音」が必要な場合があります。Revelatorをライブ配信で使用する場合には、その他のエフェクトを必要に応じてオンにしてください。単にオンにするだけで良いサウンドになるように、各エフェクトの設定は事前に作り込んであります。
エフェクトを使用した低音のモザイク・ボイスのプリセットです。De-Tunerの効果を最大に引き出せるように、最適なEQカーブを設定しています。変声プリセットは1種類しか制作していませんが、VoiceセクションにはDe-Tuner以外にもたくさんのエフェクトが選べるようになっているのでぜひ試してみてください。
【関連情報】
Revelator io24製品情報
Revelatorのエフェクト・プリセット
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