iOS上には、DAWやソフト音源、エフェクト、リニアPCMレコーダー……とさまざまな音楽関連アプリがありますが、日本発のアプリというと、まだまだ少ないのが実情。そんな中、日本のベンチャー企業が開発したPiascoreというアプリおよび、その関連アプリがリリースから7年半を経過した先日、累計で1000万ダウンロードを達成しました。歴史あるアプリなので、使っているという方も多いとは思いますが、ユーザーの77%が海外とのことなので、「知らなかった!」という方も少なくないかもしれません。
Piascore一言でいえば、楽譜を紙ではなくiPadで表示させる楽譜リーダーであり、重い楽譜を持ち歩くことなくペーパーレス化が実現できるというもの。もちろん、世界中のユーザーに受け入れられている背景には、単に楽譜表示するだけでなく、便利な譜めくり機能を装備していたり、膨大なクラシック音楽の楽譜が無料でダウンロードできたり、メトロノームやチューナー、ピアノ機能なども備えるなど、すごく便利なツールになっていることがあります。実際どんなアプリなのか紹介してみましょう。
iPadを利用した電子楽譜リーダー、Piascore
このPiascoreは東京・渋谷にあるベンチャー企業、Piascore株式会社がiOS用に開発した無料アプリ(500円のアプリ内課金によって機能強化できる)。iPadでもiPhoneでも利用することが可能というものです。ただし、楽譜を表示させる、という目的から考えるとiPhoneは画面サイズ的に小さいので、iPadで使うのが一番ピッタリというものです。
iPadでもiPhoneでも使えるが、サイズ的にはiPadが使いやすい
普段、紙の楽譜を持ち歩いている方も多いと思いますが、結構かさばるし、重たいですよね。でもiPadであれば、何千ページ、何万ページあったって、重さはiPadだけ。持ち歩かないにしても、たくさんの楽譜をこの中で管理できてしまうというのは便利です。またステージ上などの暗い場所で使う場合も、iPadならバックライトで見やすいというのも大きなメリットです。
PDFの楽譜をキレイに表示することができるPiascore
一般的に楽譜ソフトというと、finaleとかSibelius、Dorico、またスコアメーカーなんかを思い浮かべる方も多いと思いますが、このPiascoreはちょっと位置づけの異なるものです。基本的にはMIDI機能などは装備せず、単純に楽譜を表示させるものなんです。そのため対応しているデータのフォーマットもPDFファイルとなっているんですね。
iPadを横置きにして、2ページ表示にするといったことも可能
「なんだ、だったらPDFビューワーでいいのでは?」と思う方もいるかもしれません。ところが、単にPDFデータを表示させるだけではなく、楽譜活用という面で非常に便利な機能を数多く装備しているのがPiascoreの面白いところです。
「無料のクラシック音楽楽譜」をタップすると、膨大な楽譜から好きなものが入手できる
まずは13万作品にもおよぶ膨大なクラシック音楽の楽譜を、アプリ内で無料でダウンロードして使えるという点が挙げられます。まあ、これはIMSLP (International Music Score Library Project、国際楽譜図書館プロジェクト) ペトルッチにアクセスするというものなんですが、検索すればいくらでも出てくるので、これを用いて自由にGETして使えるというのは嬉しいポイントです。
「楽譜ストア」ではJ-Popをはじめ人気の楽譜を購入することも可能
また、「楽譜ストア」というものもあり、J-Popやギター曲、ピアノアレンジ曲など人気楽曲を中心に手ごろな価格で入手できるというのも便利なところです。また「手元にある紙の楽譜は取り込めないの?」という要望もあるでしょ。そんなときのために「楽譜のスキャン」という機能も用意されています。これはiPad/iPhoneのカメラ機能を用いて楽譜を取り込むというもの。実は、撮影した楽譜をすぐにPDF変換する機能が備わっているので、取り込んだ後は他の楽譜と同じように使うことができるのです。
このように入手したPDFの楽譜はiPad本体内に保存して管理できる一方、クラウドとの連携も可能になっているのも便利なところです。具体的にはDropbox、Google Drive、OneDrive、Box、iCound、WebDAVと思いつくサービスには一通り対応しているので、とりあえず持っている楽譜データはみんなクラウドにUPしておくというのが便利かもしれません。
DropboxやGoogle Driveなど各種クラウドサービスとの連携も可能
もちろん、膨大な楽譜があっても、検索機能が充実しているから、見つけ出すのも簡単。実際、タグで管理したり、検索機能でアプリ内の楽譜を探すことができるんですね。しかも、ライブステージなどで使いやすいように、セットリストを組む機能も用意されているから、なかなか実用的です。
さて、その実用面という点で、Piascoreが非常に優れている点が、譜めくり機能です。ステージの本番での演奏でも、また家で練習するときでも、楽譜を扱う上で面倒なのが譜めくりです。演奏中に次のページをめくるために演奏が止まっては困るし、かといって誰かに手伝ってもらうというのも、簡単ではありません。でも、Piascoreを用いれば、そんな譜めくりの面倒さから解放されるんです。これがPiascoreを利用する上での最大のメリットといっても過言ではないわけですが、いろいろな機能があるので、順に紹介してみましょう。
通常は、電子書籍の扱いと同様に、ページをフリックして譜めくりするのですが、シンプルながら、非常に使いやすいのが自動縦スクロール機能。演奏が進むにしたがって、楽譜が縦にスクロールしていくから、そもそも譜めくりという概念から解放されるわけです。もちろん、この楽譜はPDFであり、MIDIデータではないからどういうタイミングでスクロールすべきなのかは難しいところ。これはスピード調整機能を用いて、手動で調整してみてください。
譜めくりに関して、各種設定ができるようになっている
一方、スクロールではなく、やはり譜めくりがいい…という人も多いはず。そんなときは、Bluetooth接続のフットペダルを用いて足で譜めくりをするというのも、ほかにはない強力な機能です。でも「Bluetoothのフットペダルって何だ??」と思う方も多いですよね?でも、そんなものがあるんですよ。
左右のペダルで譜めくりができるAirTurn PED pro
Piascoreオンラインストアで扱っている「AirTurn PED pro」(9,600円)が推奨デバイスですが、私が持っているIK MultimediaのiRig BlueBoardでも使うことができたし、同じくIK MultimediaのiRig BlueTurnなどサポートされているようです。つまり、フットペダルで次のページ、前のページと操作することで、画面が切り替わっていくのです。そのほか、別売アプリのPiascore Air(240円)を使い、iPhoneなど別のiOSデバイスから譜めくりを行うことができるし、Piascore同士を同期させて、iPhoneでフリックしてページを切り替えると、それと同様にiPad側も切り替わっていくということも可能になっています。
楽譜内に自由に書き込んでいくことも可能
なお、紙の楽譜の場合、譜読みしたときなど、ペンで書き込みをするというケースも多いでしょう。もちろんPiascoreでも書き込みは可能となっており、色・太さ・筆先が変えられる4種類のペン機能が使えます。
さらに、テキストを書き込んだり、指番号や音符、臨時記号の入力に便利なスタンプ機能が利用できたり、クレッシェンド・デクレッシェンド、繰り返し記号などを入力できる図形機能なんかも備わっています。
さらに一般のPDFビューワーではなく、楽譜用アプリであるPiascoreだからこそ装備している機能が数多く備わっています。たとえば、メトロノーム機能は演奏の練習には欠かせない機能ですし、チューナー機能も装備しています。
また合唱などで使う場合は、基準の音がわかると安心ですが、そうしたときのために電子ピアノとして音が出せるキーボード機能も備わっています。そのほかにも、演奏した音を録音するレコーダー機能、動画再生を可能にするYouTube再生機能なども備わっています。
このYouTube再生機能は、現在読み込まれている楽譜のタイトル名から自動で動画検索する機能も備わっているため、起動すれば、その曲をすぐに見つけ出して再生できるし、もちろん、iTunesで納めている音楽データを再生できるミュージック機能を持っているなど、かなり便利に使うことが可能です。
自動的にタイトルを元にした検索をしてくれるYouTube機能
このPiascoreは冒頭でも紹介した通り無料のアプリではありますが、メトロノーム機能やチューナー機能、キーボード機能などは、500円のアプリ内課金でアップグレードすることで、すべての制限なしに使えるようになります。もっとも、どの機能も「30秒のお試し」機能を何度でも使うことができるので、まずは確認して納得いってから購入すればOKですよ。
アップグレード価格は500円。これによってすべての機能を無制限に使えるようになる
「すごい便利そうだけど、iPadを持ってないよ…」なんて方は、この機会にiPadを買ってみても損はないと思いますよ。つい先日発売された新しい9.7インチiPadは、37,800円~とずいぶん安くなりましたからね。もしPiascoreが目的なら、この一番安いWi-Fi 32GBのモデルでまったく問題ないですよ!
【関連情報】
Piascoreサイト
Piascoreオンラインヘルプ
【ダウンロード】
◎App Store ⇒ Piascore
◎App Store ⇒ 譜めくりリモコンPiascore Air
【価格チェック&購入】
◎Piascoreオンラインストア ⇒ AirTurn PED pro
◎Amazon ⇒ iRig BlueTurn
◎Amazon ⇒ iPad Wi-Fi 32GB スペースグレイ 2017年春モデル