iRig2を内蔵したギターが登場!?melocyとESPギタークラフト・アカデミーが共同開発したインターフェイス内蔵のmelocyギター

ギタリストにとって、いまやスマホは万能アイテムともいえる機材となってきました。つまりアプリを立ち上げればアンプシミュレーターにもなるし、ディストーション、ディレイ、コンプ、フランジャー……などとして使えるマルチエフェクターにもなるし、ここでレコーディングもできる上、ネット接続することでいろいろな人たちとコラボというかセッションできてしまう時代です。ただ、そのスマホとギターを接続するのがちょっと面倒だったりもします。

だったら、スマホと直結できるギターを作ってしまおう、と実践してしまったのが音楽コラボアプリのmelocy(メロシー)を運営している株式会社ignoteの代表、中西孝之さん。日本のギターメーカーであり、音楽教育事業なども展開する株式会社ESPのクラフトマン養成学校、ESPギタークラフト・アカデミーの協力を得て、インターフェイス内蔵の melocyギターを完成させたのです。DTMステーション的にも、なかなか興味をそそられるこの melocyギターとはどんなものなのか、中⻄さんとESPギタークラフト・アカデミー講師の高橋泰典さんにお話しを伺ってみました。

iRig2を内蔵したユニークなギター、melocyギター誕生!



--melocyギター、なかなかド派手なデザインですね。聞くところによれば、ちょっと変わった仕掛けがしてあるギターだそうですが、これはいったいどんなギターなんですか?
中西:一言でいえば、スマホ専用ギターであり、melocyのために作ったギターなんです。もともとESPさんで、オリジナルカラーのギターを作ってもらうことができるというのは知っていたので、melocyギターを作ってみたいな……という思いを持っていました。一方で、melocyユーザーの中で、楽器の演奏をするユーザーは多いのですが、その大半はギターを弾く人なんです。みんなにどうやってmelocyで使っているのかを聴いてみると、スマホとギターを繋ぐのに、IK MultimediaのiRigを使うケースがほとんどのようなのです。だったらiRigをギターの中に入れたら、もっと簡単に使えるようになるし、面白いんじゃないか……と思ってESPさんにお願いして作ってもらうことにしたんです。単純にオリジナルカラーだけではない、ギミックを入れたものを作ったら、面白いだろうな、と。

完成したばかりのmelocyギターを手にする、社長の中西孝之さん
--なるほど、ずばりスマホ専用ギターということなんですね。

中西:そうです。melocyギターは公式オフ会の時に持参して、ユーザーの皆さんに使ってもらえるようにしようと思っています。普段、何も使わないというのももったないので、場合によっては、レンタル品としてユーザーさんに使ってもらえるようにするのもいいかな、と。このmelocyギター自体は、これが完成形というわけではないんです。公式オフ会で全国を回ったときや、レンタルをしたときのフィードバックを活かして機能や性能を上げていきたいと思っています。

高橋さんが、melocyギターの動作状況を入念にチェック
--バージョンアップしていくギターなんですね。なかなか面白いプロジェクトですが、今回のmelocyギターの仕様は最初からハッキリしていたんですか?
中西:このプロジェクト自体昨年の7月頃から始めたのですが、当初はインターフェイス機能を搭載したギターにしようと思っていたのと同時に、スマホも埋め込めるようにしよう……と思っていました。さらにそこにスピーカーをつけて、単体で音が完結するものを作っても面白いかなと考えていたのです。しかし、高橋さんと仕様を詰めていく中、スマホは機種によってかなりサイズが異なるので、ぴったりフィットさせるのは難しいだろう、と断念しました。またスマホに特化したものにするのであれば、どういう機能があるといいか、高橋さんとも相談しつつ、アイディアベースで色々考えていました。

段差のある立体的なボディーになっている
--アイディアは色々あったということなんですね。実際に完成したこのmelocyギターは最終的にどういったものになったのですか?

高橋:ギター本体はテレキャスターシェイプのものになりました。スケール関連もテレキャスターと同じ仕様になっています。まずは、ESPが作るからにはギターとしてちゃんと使えるところを大切にしました。その上で、人目を少しでも引くようなギターにしたかったので、立体的な作りのボディーに仕上げました。ギターのボディー内にiRigを埋め込んでいるのですが、それにともないさまざまなスイッチや端子が搭載されているんです。

ボディーはテレキャスターをシェイプしたものとなっている
--もう少し具体的に教えてもらえますか?

高橋:まずは一般的なエレキギターにも搭載してあるボリュームのツマミとトーンのツマミ、ピックアップセレクターがあります。そして普通のギターとして使えるようにシールドを通してギターアンプと接続するための端子を用意しています。一方で、iRigモードとアンプモードを切り替えるスイッチを搭載しているほか、音色がたくさん出た方がユーザーに使ってもらえるだろうということで、各ピックアップのタップスイッチが付いています。そして、普通のギターには絶対にない端子が2つ。3.5mmミニプラグ用のジャックが2つ付いています。1つはPCやスマホに繋ぐ4極プラグのジャック、もう片方は、直接ギターにイヤホンを挿すためのジャックになっています。


普通のギターとして使えるように、アンプ接続のための端子も用意されている

--機能、デザイン共にかなりいい感じに仕上がっていますよね。話の中でiRigモードという言葉が出てきましたが、iRigがそのまま入っているのですか?
高橋:iRigではなく、iRig2が入っています。正確にいえばiRig2がまるごと入っているのではなく、iRig2を分解した中身がギター内に内蔵されている形です。勝手にiRig2を入れちゃいました(笑)
中西:一応、iRig2の国内発売元である、フックアップさんには確認をとりましたよ(笑)

裏側をあけるとそこには空洞があり……

スポンジに包まれて固定される形でiRig2の中身が入っている

--つまり、iRigモードにしてiPhoneなどと接続するとともに、ここにヘッドホンを接続すればギターアンプなどを使うことなく、存分に演奏することができるわけですね。実際に完成したものを使った感じはどうですか?
中西:スマホと接続がしやすく、スマホの利用シーンに上手くフィットしていて大満足です。機能的にはギター+iRig2そのものなのですが、iRigって軽いだけに固定させることができず、扱いにくいという面があります。でも、これならその心配がないのもうれしいところです。完成したばかりのこのmelocyギターを今日、まさに受け取って持ち帰るので、たくさん使ってレビューをmelocyのブログにアップしていきたいと思います。

取材した日が、まさにmelocyギターが完成して引き渡しが行われる日だった
--高橋さんから見てギターそのものクオリティーはどうですか?
高橋:ESPの名に恥じぬよう、一般的なギターよりクオリティー高く作ることができました。色々な機能が搭載してあっても、持ったときのバランス感だったり、それぞれのスイッチ系やジャックが演奏の邪魔をしない構造ができたことに満足しています。

通常のギターとしても十分高いクオリティーになっている
--もし、このギターが欲しい人がでてきたら買えるんですか?
中西:現時点においては、これ自体を販売する予定はありません。

高橋:ギターの見た目が欲しいのか機能がほしいのかにもよりますが、デザイン的なところを求めるのであれば、ESPギタークラフト・アカデミーの体験入学参加していただければ、材料費込みで5万円ぐらいで作れますよ。工場にmelocyギターのカラーを発注して、組み込み部分を体験していただくことは現実的に可能です。

ギター工房ともいえるESPギタークラフト・アカデミー
--5万円で作れるんですね。改めてこのESPギタークラフト・アカデミーは何をしているところか教えてください。
高橋:ギターメーカーESPが直接運営する職人養成機関です。ギターメーカーが運営していますので、ESPの職人やアーティストを担当している職人から直接指導を受けることができます。学校法人の専門学校ではないので、今年度の入学生で一番若い人は16歳の方ですね。一番上の方で63歳の方が入学されます。楽器業界に就職したい方、一度就職されてやっぱり楽器を作りたいと思った方、定年退職されて趣味としてギターを作りたい方。それぞれ志があって入学されています。基本的は1年制です。しっかり学べるように2年3年も用意しています。ですが、社会人の方や金銭的に余裕のない方もいますので、それぞれに合った形で学べるようになっています。

ギターの塗装工程。ここでは幅広い年齢層の人達がギターづくりについて学んでいる
--実際にはどんな授業をされているんですか?

高橋:まずはギターの仕組みを学んでいただいて、木工に移り木の板からギターの形にしていきます。その後に塗装や組み込みなどの作業を学べます。組み込みというのは、ピックアップの配線だとか、フレットのすり合わせやナットの溝を調節したり、エレキギターとして成立させるための重要な部分です。そして最終的に調整をして、完成という流れになっています。1年生はギターを3本作るカリキュラムになっています。2年生以降は基本的に自由ですので、最大で10数本作る方も居ますし、すごくこだわって年間2.3本のギターを作る方もいます。アーティストのギターを教室で実際に直してみたりカスタマイズする授業もあったりしますよ。

塗装したボディーを研磨することで、光沢ある輝きが得られる
--アーティストさんのギターのリペアやカスタマイズを見れるのは面白いですね。最後になりますが、今後melocyギターに続く新しい展開はあるのでしょうか?
中西:4月28日(土)に、ESPさんと共同で「自作エフェクターワークショップ」をここ東京お茶の水で開催する予定です。これは去年11月に、やはりESPさんと一緒に行ったものの第2回目で、参加費は無料です!。
高橋:電子工作なんてしたことがない、はんだ付けなんてしたことない、という人でも気軽に楽しくできるようなワークショップにしていく予定です。当日はファズを作りたいと思っています。

melocyギターに続き、「自作エフェクターワークショップ」が開催される
--それは楽しそうですね。しかも無料とはすごいですね。どうすれば参加できるのでしょうか?
中西:参加はmelocyユーザーを対象としているので、まだユーザーでない方は、まずはお手持ちのiPhoneやAndroidにmelocyをインストールした上で、melocyにユーザー登録してください。その上で下記のサイトからエントリーをお願いします。基本的には先着10名としていますが、エントリーの際、氏名の後ろに「DTMステーションを見た」と記載していただければ、DTMステーション読者枠として参加いただけるようにいたします。ただし参加希望者が多かった場合は抽選になることがありますが、ぜひご応募いただければと思います。

--ありがとうございました。
【関連情報】
melocyサイト 
melocyギターついに完成!(melocyオフィシャルサイト)
【ESPギタークラフトアカデミー】
第2回エフェクター製作体験&見学会
https://melocy.azurewebsites.net/info/gca1804/

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【アプリダウンロード】
◎iTunes ⇒ melocy
◎Google Play ⇒ melocy

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