オーディオインターフェイスを超高機能ミキシングコンソールに変身させるiOSアプリ、AUMが秀逸

最近はマルチ入出力を装備したオーディオインターフェイスがかなり手ごろな価格で入手できるようになっています。たとえばPreSonusの6IN/8OUTのオーディオインターフェイスStudio 6|8なら36,800円程度、TASCAMの16IN/8OUTであるUS-16×08で32,700円程度、またSteinbergの8IN/8OUTのUR824でも70,000円程度と、そんなに安くなってるの…と驚くほどです。

そのオーディオインターフェイスを普通にDAWと接続して使うのもいいのですが、これをiPhoneやiPadと接続することで超高機能・高性能なミキシングコンソールにできてしまうというスゴイiOSアプリがあるんです。もう2年ほど前に発売されていたようですが、先日たまたま見つけた買ったAUMというのがそれ。スウェーデンのKymaticaさんという方が開発したものなんですが、かなり強力な機能を備えているので、どんなものなのか紹介してみたいと思います。

オーディオインターフェイスを高性能・高機能なミキシングコンソールにできるアプリ、AUM


AUMは、iOS用のデジタルミキサーで、チャンネル数無制限、最高で32bit/96kHzまで扱うことが可能というアプリ。iOS上の各種シンセサイザや音源、エフェクト、さらにはDAWを自由自在に接続可能なハブというかゲートウェイともいえるものなのです。

AUMの画面例

そのため、iPhone単体、iPad単体でも使えるアプリとなっているんですが、これが何とも多機能・高性能でよくできているんです。たとえば上の画面をご覧ください。ここでは4chのミキサーとなっていますが、左からbs16i、iSEM、iSEM、Gadgetと4つの音源が立ち上がっていて、そこに各種エフェクトが入っているという構成になっています。

iPadだけでなく、iPhoneでも利用可能なユニバーサルアプリになっている

出力先はCHAN1とCHAN2はBusAへ、CHAN3が内蔵スピーカーへ、CHAN4がBusDへと接続されていることからも、かなり自由度の高いミックスができているのがお分かりいただけると思います。

入力チャンネル部分をタップすると選択肢が現れる
たとえば、上の入力チャンネル部分をタップすると、

という選択肢が現れ、ここでAudio Unit Extentionを選べば、現在インストールされているAU対応のアプリの一覧が表示され、そこから好きな音源を選択できるといった仕様になっています。

Audio Unit Extentionを選ぶと各種シンセ音源を選ぶことができる
同様にミキサーフェーダー部分にあるインサート部分をタップすれば

というメニューがでてきます。


エフェクトとしても様々なものをセットできる

ここで各種エフェクトアプリを設定できるほか、Filter & EQを選べば、AUM内蔵のローパスフィルターやハイパスフィルター、パラメトリックEQなどを選択することができます。

AUM内蔵のエフェクト、フィルタなどもいろいろ

さらにはStereo Processingを選択すると、通常のステレオ処理以外にMS処理なども選ぶことが可能になっているのです。なかなか優秀でしょ。


通常のステレオ処理以外にも、さまざまなプロセスを選択することも可能

もちろん、インサートできるエフェクトは1つだけではなく、複数挿していくことができるし、それをフェーダーの前に置くのか、後に置くのかといった設定もできるようになっているのです。


複数のエフェクトを設定し、プリフェーダー、ポストフェーダーの選択もできる

しかもMIDIのルーティングもなかなか秀逸で、このAUMにキーボードを表示させて演奏することもできるし、Lightning接続のMIDIキーボードはもちろん、KORGのmicroKEY AirのようなBLE-MIDI(MIDI over Bluetooth LE)対応のキーボードを接続して弾くことも可能になっています。

MIDIに関してもさまざまなルーチンぐが可能
さて、ここで本題です。このアプリをオーディオインターフェイスと接続すると、さらに自由度が高くなり、オーディオインターフェイスを思い切り活用することができるようになるのです。

たとえば、前述のTASCAMのオーディオインターフェイス、US-16×08と接続してみましょう。すると出力先が内蔵スピーカーではなく、USBの表示に代わるとともに、US-16×08の8chの出力に自由に割り振れるようになります。


Lightning-USBカメラアダプタ経由でUS-16×08を接続すると、入出力に自由にルーティングできる

同様に入力のほうもUS-16×08の16chの入力に設定することが可能です。そもそもAUMはチャンネル数が限定されたミキシングコンソールというわけではなく、チャンネル数ゼロからスタートして、無制限にいくらでもチャンネル数を増やしていくことができるミキシングコンソールとなっているので、必要なだけチャンネルを作っていけばいいのです。


もちろん入力側にオーディオインターフェイスの各チャンネルを設定できる

たとえばオーディオインターフェイスにコンデンサマイクを接続してボーカルを入力して、これにEQやコンプ、またリバーブといったエフェクトで加工していくことが自由にできるわけですね。

エフェクトに関してはインサーションはあるけれど、センド/リターンがないのがちょっと気になったところですが、これはA~Hまで8つあるバスを利用することで解決できそうですね。

8つあるバスを利用することで、さまざまなルーティングングが可能になる

なお、ここではUS-16×08を接続しましたが、前述のPreSonusのStudio 6|8やSteinbergのUR824など、USBクラスコンプライアントのオーディオインターフェイスであれば、Lightning-USBカメラアダプタ経由で接続して何でも使うことが可能ですよ。つまり、これらオーディオインターフェイスと、iPhoneやiPadを持ち歩けば、これをかなり強力なミキシングコンソールとして使うことが可能になる、というわけなのです。

各チャンネルのRECボタンをONにすることでレコーディングも可能

しかも、AUMはオーディオインターフェイス、音源、エフェクトを接続するだけでなく、iOSのレコーダーアプリやDAWとも接続することができるので、ミキシング結果をこれらのアプリでレコーディングすることができるほか、AUM自身もレコーディング機能を装備しており、各チャンネルのRECボタンをタップしてONにすれば、それらをオーディオでレコーディングしていくことが可能となっているのです。

MIDIクロック出力のほか、Ableton Linkにも対応
しかも設定されたテンポに合わせ、MIDIインターフェイス経由でMIDIクロックを出力できるほか、Ableton Linkにも対応しているから、KORG Gadgetをはじめ、さまざまなアプリ、DAWとも同期をとって使うことができてしまうという、まさに無敵のアプリなんです。

ちなみに、使っていて最初戸惑ったのは、設定した入出力やシンセやエフェクトなどのデバイスを変更したり、削除する方法が見つからなかったこと。タップしても長押ししてもダメで、どうするんだろう…?と思ったのです。がしばらくして分かりました。左側にフリックすればよかったんですね。とにかく、いろんなことができるアプリなので、ぜひ試してみてはいかがですか?
【ダウンロード購入】
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