実はCDが売れてないのはメジャーだけ!? 万単位の人が押し寄せ、CDを買い漁る、音系・メディアミックス同人即売会[M3]

先週、10月29日に音系・メディアミックス同人即売会 [M3](エム・スリー)が東京流通センターで開催されました。春と秋、年に2回のペースで行われているM3、まだご存じない方もいると思いますが、初めてこの様子を見たら、カルチャーショックを受けること間違いなしのイベントなんです。「CDが売れない」、「音楽が売れない」と言われている昨今ではありますが、ここには日本全国から万単位での人が訪れ、各ブースに行列をなして、CDが飛ぶように売れていくんです。

膨大な広さの会場には、1,000以上のサークル、個人がCDを販売するブースがズラリと並び、そこにおびただしい数の人が詰めかけるという構図。これを見ると「どこがCD不況なのか?」と思ってしまいますよね。しかも開催時間は午前11時~午後3時半までという短期決戦で、開催日もたった1日だけというのも面白いところ。同人即売会だから、メジャーはおらず、インディーズ、個人ばかりですが、著名なプロも結構見受けられるのも昨今のM3の特徴です。今回、私も久しぶりM3に行ってきたので、会場で見つけた知人を写真で紹介しつつ、M3とはどんなイベントなのかを紹介していきます。また記事の最後では、DTMステーションとしての決意(!?)を宣言しますね。


とにかく膨大な人たちがCDを買いに集まりごった返す、M3


今秋のM3は、まさに台風22号が東京を直撃するタイミング。私は開場となる11時の少し前に到着したのですが、外はまさに暴風雨。そうした中、みんなおとなしくM3準備会のスタッフの方々の指示にしたがって、列を作って数千人の人たちが待っていたんです。


M3準備会のスタッフの指示に従って先頭で入場してくる来場者

今回は許可を得て、事前に中に入って、みなさんが入ってくるのを待ち構えていました。押し合いのパニック状態になったりしないのだろうか……と心配していたけれど、混乱はなく、すごく行儀がいいんだなぁ、と感心したしだい。とはいえ、開場後5分もすると、場内はもう人、人、人、人というすごい混雑状態になっていきました。

YUC’e(@yuce_e)さん(左)とNor(@NOR0910)さん(右)


新譜Future CakeがSpotifyのバイラルトップ50(日本)の1位を連続10日間記録し、ノリにノってるYUC’eさん。M3では、Norさんとの共作アルバムをリリース。使用DAWはCubase Pro 9

人気のブースでは、整理券を配布したり、整理員の人がプラカードを持って行列を案内する……といった光景が随所に見られます。1,000を超える各ブースでは、ミュージシャン自身がCDを手売りしているのですから、ファンからすれば、まさに大チャンスなわけです。

朝日太一(@TaichiGENIUS)さん(左)とイマイケンタロウ(@aprils_imai)さん(右)

ジーニアスの朝日さんと、CTO LABのイマイさんがVIRTUALBOYSというユニットを組んでの参戦。2人ともDAWはCubase。今回の音源にはYMCKさんのMagical 8bit Plugを主に活用

ボカロ系、東方系はもちろん、ロック、ジャズ、フュージョン、クラシック、民族音楽……と、もうあらゆるジャンルのミュージシャンがここに集結し、ここでCDを売っているわけですね。また、このM3開催日に新譜をリリースする人も多いため、それを目指して日本各地からM3めがけてやってくるわけです。

許瑛子(@kyo_eiko)さん(中央)を中心とするkurnauとシンガーソングライターのみなさん

作詞家の許さんを中心とするkurnauでは2018年制作のボイスドラマ「絵術師ルミナと神様の筆」続編の応募要項と応募用楽曲CDを無料頒布。キャスト&歌い手募集とのこと。写真は木村真紀さん(左上)、池間史規さん(中上)、aya Suekiさん(右上)
もちろん、大人気ブースがある一方で、人があまり来ないマイナーブースもいっぱい。とはいえ、M3の来場者は、何か気に入る音楽はないだろうか……と会場内を散策しているので、ここで面白い出会いもいろいろあるみたいですよ。ブースによっては、CDプレイヤーとヘッドホンを用意してその場で聴けるようにしていたり、中にはサンプルCDを配布するところも。それぞれ、いろいろな工夫をしているんですよね。
ねじ式(@nejishiki0221)さん

新アルバムリリースとともに、無料CD頒布も行っていた、ねじ式さん。使用DAWはCubase Pro 8.5。音源はAddictive DrumsAddictive Keysなどを使っているとのこと
ブースサイズは、間口60cmでイス1脚というミニ、間口90cmのシングル、180cmのダブルと大きく3種類があり、サークルの規模によって、いろいろ。その出展料金=参加費はミニなら4,000円、ダブルでも11,300円と手ごろなので、気軽に出展できるというのはミュージシャンにとっても大きな魅力です。
Heaven+Hell Music(@the_greedd)のみなさん


ボーカルの渡辺由紀(@kikikira2)さん、Guitar & Keyboardの須藤祐(@you_gt)さんなど、プロメンバーによるユニット。Cubaseで制作し、Studio Oneでマスタリング。

実際、この10月29日のM3は、4か月前の6月12日~30日に参加の申し込み受付を行っていたそうですが、申込者全員が出展できるというわけではなく、抽選となっているようですよ。それだけ多くのミュージシャンがいて、それを求める音楽ファンの人がいるという証拠でもありますよね。
ぽらぽら。(@poraporanet)さん

エレクトロポップをベースを弾きながら歌う、ぽらぽら。さん。トラック制作はAbleton Liveを使う一方、ボーカル録りはSONARを使っている。音源はほぼKORG Legacy Collection

ちなみに、M3会場で、多くの人が並んでいるブースは、たいてい壁側だったり、列の先端の大きい通路側にあるのですが、これってどうしてだかご存じですか?別に、本人が希望してそういう場所になっているわけではないんです。各ミュージシャンは、ミニ、シングル、ダブルというサイズを指定して申し込んでいるだけなのにに、うまいことにいい場所に配置されるんです。

中原涼(@nakaharasuzuka)さんと細井聡司(@hosplug_hosoi)さん

元ボーカロイドストア店長でもある中原さんと、ゲーム音楽家の細井さんとの合作。細井さんがLogic&SynthMaster、Ivory Pianoなどでトラックを作り、中原さんがCubaseでボーカル録音
これこそが、M3準備会の実力なんです。M3には基本ボランティアのスタッフが数多く参加しています。カタログ編集や定期通信の発行をする人、即売会の事務を仕切る人、会場運営をするスタッフ……、などなど多くの方がいることで、M3が毎回スムーズに運営されているわけです。

Nina Branch(@ninabranch)さん(左)とはりぃ(@studioharry)さん(右)

YAMAHAのNetduettoの開発者でもある、はりぃさん。M3常連で、10年近く出展しているそうです。DAWはReaperを使用。音源はKONTAKTが中心とのこと

ブースを出展するサークル参加を兼ねながら、このスタッフをしている人も多いそうですが、共通しているのは音楽が好きで、同人活動が好きな人であること。だからこそ、このスタッフの情報力はすごいんです。Twitterのフォロワー数や、ニコ動、YouTubeなどの動画再生数、もちろんそれぞれのミュージシャンの活動内容などもしっかり把握した上で、どの参加サークルに人気が集まるのかの予測をし、それに応じたブース配置を行っているんですね。この情報力の凄さは驚くばかりですが、時にはブースの配置を決めた後に大ヒットして、狭い場所にお客さんが集中してしまうこともあるんだとか……。そうしたハプニングもM3ならではの面白さかもしれません。

M3の入場券代わりとなる、カタログ。入場する際には、かならずこれをスタッフに見える形で提示する必要がある
ところで、一般来場者がM3の会場に入るためには、入場チケット替わりとなるカタログを入手しておく必要があります。これは全国のタワーレコード、とらのあな、アニメイト、メロンブックスなどで販売されているので、事前に入手しておくのがスムーズに入場できるポイントです。もちろん、当日会場でも購入可能ですよ。

会場を見て回っていて、結構目立っていたのが学校のサークルです。早稲田大学作曲研究会東京工業大学デジタル創作同好会、東京農工大学 作曲・DTMサークル、学習院大学コンピュータ研究会、東京工科大学テクノ同好会……といろいろあるのですが、会場を歩き始めて、すぐに見つけて驚いたのが、音楽学校メーザー・ハウスの同好会でした。そう、私と作曲家の多田彰文さんとで隔週放送しているDTMステーションPlus!は、現在、メーザーのスタジオから放送しているのですが、そこの先生たちがいっぱい集まっていたのです。
メーザー・ハウス(@mesarhaus)の有志、MCLのみなさん

メーザー・ハウスのみなさん。15人(ユニット)がそれぞれ曲を持ち寄ってアルバムを制作。先生たちも全面的に協力して作り上げたとのこと。今回がM3初出展とのことでした。

話を聞いてみると、MCLという同好会名で今回M3に初参戦したのだとか。メーザーの在校生、15ユニットがあつまり、1つのアルバムを完成。ジャケットのイラストは日本工学院のデザイン科の学生が描く形で作られた作品をみんなで売っていました。

みるくてぃー(@milk_tea_0712)さん

メーザー・ハウスのレコーディング課に通う傍ら、DTM女子として活動し、ときどき地下ライブでも歌っているという、みるくてぃーさん。Pro Toolsでボーカルを録り、Melodyneで自らピッチ編集

聞いてみると、授業で扱っているLogicで制作している人が大半でしたが、中にはCubaseを使っている人、FL Studioを使っている人もいました。1つのアルバムではありますが、中身のジャンルはいろいろ。最終的には先生がマスタリングを行っているとのことで、学校あげてのお祭り的なものになっていたようですね。

氏家克典(@Katsunori_UJIIE)さんが、KDJ-ONEのデモを実演
このM3ではミュージシャンがブースを出して出展するエリアが大半を占める一方、企業出展エリアというのもあり、DTM系メーカー各社も出展しています。一番大きいスペースで出展していたのはゲーム機風DAW、KDJ-ONEを間もなく発売するサイバーステップ。サイバーステップでは、別の部屋も押さえて、氏家克典さんによるデモ演奏なども行われていましたが、その様子は改めて別途記事で紹介する予定です。

セミナールームで行われたKDJ-ONEの実演には在京・地方のテレビ局が5社も入って撮影
一方、コルグでは間もなくリリースする予定のKORG Gadgetの新バージョンを参考出品。これには、なんと隣でブースを構えていたDotec-Audioとコラボで、あのDeeMAXが搭載されるのだとか……。

フランク重虎(@thevalkilly)さん、飯島進仁(@shinji_fmfm)さんによるDotec-Audio(@DotecAudio)はKORGとコラボして、KORG GadgetにDeeMAXを搭載
さらにコルグ関連では、Nitendo Switchを使った4人対戦型のKORG Gadgetも来春リリース予定で、開発中とのこと。こちらはM01DやDSN-12などでもお馴染み、佐野電磁さん率いるDetuneからの発売になるようですが、Gadgetの音源をそのままに、4人がコラボしながら音楽を作っていけるとのことなので、なかなか楽しみです。

佐野電磁(@sanodg)さん(中央)は、来年3月ごろをメドにNintendo Switchで動くKORG Gadgetを開発中。リリースは佐野さんのDetuneからとなる模様

一方、プロ向けのプラグインメーカーとして定評のあるA.O.M.も企業ブースを出していました。ここでは、各種プラグインを展示している一方、こっそり新プラグインのベータ版を出していました。聞いてみたところ、これは年内発売目標で開発しているSAKURA DITHERというもの。シェーピングなどとは異なる秘密の技術を使ったもので、ビット深度の変換をした際のザラつきをなくしてくれるのだとか……。展示されていたのはUIのできていないエンジン部分でしたが、これも楽しみなネタです。

A.O.M.が開発中のSAKURA DITHER。画面は動作チェック用のもので、現在UIを制作中とのことですが、かなり滑らかな音になるディザーとのこと
さて、最後にDTMステーションとしての発表を。実は、今回M3に行った最大の理由は、偵察・下見でした。来年4月末に予定されている次回のM3に、DTMステーションとして参戦しようと思います!

もっとも、私が歌うとか曲を作るというわけではなく、DTMステーションPlus!でもお馴染み、作曲家の多田彰文(@akifumitada)さんと組んで、「DTMステーションCreative」というレーベルを立ち上げ、次回M3でのリリースに向けて作品作りに取り組んでいく所存です。まだ秘密ですが、某人気シンガーさんを起用する形で、現在制作に着手したところ。もちろん、ヒット曲を目指してのリリースですよ!

今後、その制作過程なども紹介するとともに、実際のお金の動きがどうなるのか、すべてガラス張りで公開してみよう…と多田さんと打ち合わせているところです。まあ、ホントに次回M3に出展できるのかは、実際に応募して、抽選に当たらないと話にもならない、まだ仮定のことではありますが、その辺のことも含めて随時紹介していきますので、お楽しみに!

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