昨年「Finale、Sibeliusに殴り込み。Steinbergの楽譜作成ソフト、Doricoが国内11月下旬発売に決定」という記事でも紹介した、SteinbergのDorico(ドリコ)。先日のニコニコ生放送、Fresh!で放送したDTMステーションPlus!の番組では、Finale、Sibelius、DoricoにNotionを加えた4大ソフトでバトルを繰り広げたわけですが、新規参入のDoricoは、初期バージョンの1.0ということもあって、機能がすべて揃っていないという状況だったのも事実です。
番組中でも「今後、随時バージョンアップして機能向上を図っていく」と宣言していましたが、つい先日、無償のアップデータが登場してDorico 1.1になるとともに、さまざまな機能が追加され、強力なソフトへと進化しています。実際に見てみても、非常にサクサクと動くのも気持ちいい感じは、過去のしがらみがなく、現在の技術でゼロから作り上げたソフトの特徴なんでしょう。実際、どんな機能が追加されたのか、DTMステーションPlus!でも出演いただいた、ヤマハの専属インストラクター、徳生楓(とくしょうかえで)さんにデモをしてもらったので、ビデオを交えながら紹介してみたいと思います。
楽譜作成ソフトのDoricoが無償アップデートでより機能強化
改めてDoricoについて簡単に紹介しておくと、これはドイツ、Steinbergが開発した楽譜作成ソフトで、まさにFinale、Sibelius、Notionの競合となるソフト。Steinberg開発ということで、「Cubaseのスコア機能を抜き出して発展させたもの?」と思う方もいると思いますが、そうではないようですね。
今回、Dorico 1.1について説明してくれたインストラクターの徳生楓さん
情報によれば、競合メーカーからスピンアウトしたメンバー2人が中心になって、まったく新たに作ったソフトなのだとか。その意味でも競合ソフトを知り尽くした上で、作り上げたソフトなんですね。
もちろん、目的としては、オーケストラを含め、さまざまな奏者にとって読みやすい楽譜を作成すること。その一方で、出版社や浄書家の高度な要望にも応えられる、業務用の楽譜DTPソフトとしての作りこまれたソフトでもあるのです。
ただ、最初にリリースされたバージョン1.0では想定していたすべての機能が装備されていない状況だったため、どんどん追加機能を搭載しているとのことですが、それがある程度まとまったということでリリースされたのが、今回のバージョン1.1。主に6つの新機能があるので順番に見ていきましょう。
実際にその操作感、スピードを含め、ビデオを見ると分かりやすいと思います。1つ目がリピート括弧です。
MIDIキーボードを使いながら、サクサクと入力しているのが分かると思いますが、そこに1括弧、2括弧といった表記やリピート記号などを簡単に入力することができ、その線の伸ばし方なども、好みに応じて微妙な調整ができるのが嬉しいところ。もちろん、リピート括弧を指定した結果をMIDIで演奏して確認することもできるようになっています。
2つ目はMIDIキーボードからの入力機能の強化についてです。先ほどのリポート括弧のビデオでも見た通り、音符を指定してMIDIキーボードを弾いていけば、どんどん入力できるわけですが、今回半音の表記の仕方が、ちょっと進化しているんです。
MIDIキーボードでC、B、#Aと弾くと、まずはこのように入力される
さらに続けて、#A、Bと弾いていくと、自動的にこのように入力されていく
たとえば、C、B、#Aと入力していくと、このように入力されていくのですが、さらにAを入力すると、#Aが♭Bと変わるんですよね。さらに#A、Bと入力すると、今度は#A、そして?Bとなるんです。なかなか賢いですよね。
とても充実したペダル記号が用意されている
3つ目はペダル記号が追加されたこと。キーボードの記号を見ると、サステインペダル、スソテヌートペダル、ウナコルダペダルといったものも扱えます。さらには踏み込み具合を表すハーフペダルや、1/4ペダルなどが扱えたり、ラインや点線が入ったものも扱えるなど、とにかく充実したペダル表記が可能になっているのです。
かなり複雑なコードの入力も可能になっている
4つ目は、バンドスコアにおいて重要になってくるコード記号の入力です。このビデオにあるように、SHIFT+Qのショートカットキーで、コード入力が可能になり、普通に“C”とか“D7”のようにPCのキーボードから入力していくこともできるし、鍵盤でコードを弾けば、それを認識してくれるので、そのままコードとして入れていくことも可能です。
さらに、onコードなど、日本のユーザーがよく使えるこだわりのある表記がありますが、その辺をかなりマニアックといってもいいほどに細かく指定していくこともできるんですよね。
目的の情報を簡単に抜き出すことができるフィルタリング機能
そして5つ目は編集に便利なフィルター機能の追加です。これはその名の通り、データをフィルタリングするためのもので、大きな楽譜の中から、コード機能だけを抜き出して削除するとか、休符記号が抜き出してみるとか、さまざまなことが可能になっているのです。
そして最後の6つ目が、楽譜をキレイに整えるためのスペーシング、という機能です。これは浄書機能の一つとして追加されたものですが、譜表のスペーシングと音符のスペーシングという2つがあります。
譜表のスペーシングでは、高さ方向での位置調整を細かく行えるもので、それぞれの間隔が何mmであるか、といったことを細かく、そして自由に設定できるようになっています。
音符のスペーシングで音符間の調整を行う
一方の音符のスペーシングでは横方向というか、音符と音符の間隔を1つずつ細かく指定することが可能になっているのです。いずれも、普通に入力していっても、バランスよく配置されるようにはなっているのですが、ユーザーとして、位置をもう少し整えたい、と思った際に、思い通りにできるのはやはり嬉しいところです。
このようにバージョン1.1では特徴的な6つの機能が追加されたほかにも、編集操作機能が強化されたり、プロジェクト管理機能が拡張されたりおしています。
たとえばダイナミクス、スラー、ヘアピン、オクターブ線…などの記号を簡単にマウスで移動し、最適な位置にスナップできるとか、他のプロジェクトや MusicXML ファイルから現在のプロジェクトへの読み込み、および選択範囲の書き出し (Dorico / MIDI / MusicXML / オーディオ)が可能になるなど、細かな点ではいろいろと強化されているようです。
インストラクターの徳生さんによると、「バージョン1.1になって、機能が追加されたのとともに、安定性もさらに増して、より安心して使えるようになりました」とのことなので、かなり実用的なソフトになってきているようですね。
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