進化するSteinberg URシリーズ、iOSでもDSPが使えるメリット

コストパフォーマンスの高さで、国内オーディオインターフェイスの人気上位を独占しているSteinbergURシリーズ。現在そのラインナップは上からUR824UR28MUR44UR242UR22mkIIUR12と6機種ありますが、その機能はファームウェアやドライバのアップデートなどでさらに進化しています。

6月27日にWindows版のドライバの新バージョンが出て、V1.9.10となって一部の不具合が調整された一方、5月にはiPhone版のアプリとしてdspMixFxのiPhone版がリリースされ、iPhoneからURシリーズ内蔵のエフェクトを操作したり、iOSのDAWにおいて、そのエフェクトの掛かった音での掛け録りが可能になるのなど、さまざまな応用的な使い方が可能になっているのです。この辺の機能、使ったことがない方も多そうなので、ちょっと紹介してみたいと思います。

Windows、Macはもちろん、iPadさらにはiPhoneでもDSPコントロール可能になったURシリーズ



改めてこのURシリーズ6製品のスペックを見てみると、以下のようになっており、それぞれ違いがあるわけですが、DSPを搭載していてエフェクトが使えるかどうか、という観点で捉えると、UR22mkII以下とUR242以上に分類することができます。
UR12 UR22mkII UR242 UR44 UR28M UR824
入出力合計 2IN/2OUT 2IN/2OUT 4IN/2OUT 6IN/4OUT 6IN/8OUT 24IN/24OUT
アナログ入力 1XR,1TS 2Combo 2Combo,
2TRS
4Combo,
2TRS
2Combo,
2TRS
8Combo
マイク入力 1 2 2 4 2 8
Hi-Z入力 1 1 1 2 2 2
アナログ出力 2RCA 2 2 4 6 8
最高bit/kHz 24/192 24/192 24/96 24/192
USBバスパワー × × × ×
CCモード
ループバック機能
DSP機能 × ×
実売価格(税抜) 10,000円前後 14,500円前後 20,000円前後 27,500円前後 33,000円前後 76,000円前後

ここではそのUR242以上というところで見てみることにします。これらの機種に共通するのは、内蔵DSPを搭載しており、大きく3種類(細かく見ると8つ)のエフェクトが利用できるという点です。具体的にいうと

のそれぞれです。


UR 242以上のDSP搭載機で利用できるチャンネルストリップ

WindowsやMac上のCubaseで使う場合、Cubaseと完全に一体化するため、Cubase内蔵エフェクトとして利用できるのがユニークであり非常に便利なところ。この場合はPCのCPUパワーを喰うことなく、オーディオインターフェイス側の処理でエフェクトが掛けられるのがメリットです。


Cubaseの場合、URシリーズのハードウェア機能がMixConsoleに完全一体化する

ただし、プラグインとは少し違う位置づけであるため、人によってはちょっと戸惑いもあるだろうということで、VSTプラグイン版のエフェクトも用意されているというのも面白いところです。そう、これらのオーディオインターフェイスを入手したユーザーは、無償で使うことができるプラグインとなっているんですよね。


VSTプラグインとして動かす場合、右下に「VST」の表示がある

画面も音も完全に同じですが、どっちが起動しているかは画面右下にDSPと記載されているかVSTと記載されているかで見分けることができます。


dspMixFxからDSPとして使った場合には右下に「DSP」の表示がある

でも、実はこのDSPがより威力を発揮するのは、WindowsやMacなどのPCでの利用よりも、iOSでの利用時です。というのも、PCであれば、かなりのCPUパワーを持っているので、チャンネルストリップやリバーブ、ギターアンプシミュレーターをプラグインとして使ったところで、それほど莫大な負荷にはならないけれど、CPUパワーがPCと比較して低いiPhoneやiPadの場合、これが死活問題ともなる環境だからです。

ご存じの通り、いまやiPhoneやiPadでDAWが動く時代。iPhoneであればGarageBandやMulititrackDAW、FLStudio Mobile、iPadならさらにCubasis、Auria ProなどさまざまなDAWがあり、マルチトラックでレコーディングしたり、ミックスしたりすることができますが、利用可能なエフェクトとなると、やはりCPUパワーによって制限が出てきます。

非常に強力な機能を備えたCubasisだが、iPadのCPUパワーには限界も……

たとえば最新のCubasisの場合、オプションでFX Pack 1、FX Pack 2というものが用意されていて、かなり強力なエフェクトとして使うことができるし、Inter-App Audioも利用できるからエフェクト自体は充実しているのですが、重たいエフェクトをいくつか使っていくとすぐにパワーが足りなくなってしまいます。

UR242、UR44、UR28M、UR824の各機種にはDSPが搭載されていてCPUパワーを使わずにエフェクト処理できる

 

そこで登場してくるのが、このDSPなのです。DSPでエフェクトを動かす場合、負荷はDSPが搭載されているオーディオインターフェイス側にかかるのであって、iPhoneやiPadには負荷がかからないのです。つまり、前述のチャンネルストリップやギターアンプシミュレーターを利用する上でiPhoneやiPadに負荷がかからないから、安心して利用することができるんですね。


Windows版のdspFxMix

そのDSPによるエフェクトを使うためのアプリが、dspFxMixというものです。これはURシリーズをミキサー&エフェクトとして見立てて操作するためのもので、WindowsおよびMac上にもまったく同じものがあります。またご存知の方もいると思いますが、実はこのアプリ自体は以前からiPad用には存在していたのですが、今回iPhoneでも利用できるようになったのです。


iPhone版のdspFxMix

 

画面を見ても分かる通り、エフェクトの設定画面自体はPCのものとまったく同じ。当然、これらエフェクトはDSPで動くわけだから、音質も機能もまったく同じです。ちょうど先日買ったばかりのiPad Pro 10.5inchで使ってみましたが快適ですね。またiPhone 7と接続すればiPhone 7でも同じように使うことができます。

iPad版のdspFxMixは広い画面で快適に使うことができる

ただし、iPadとiPhoneでは画面サイズが違うため、iPhoneでミキサーの表示をするにはやや窮屈。UI的には非常によくできていますが、細かな機能をいじるためにはフリックして画面を切り替えながら操作するなど、多少面倒な面はあります。それでもPCを使わずにiPhoneでURシリーズを思う存分コントロールできてしまうのは嬉しいところです。たとえば出先にUR242だけ持っていき、そこで手持ちのiPhoneと接続すれば、エフェクトを存分に活用すると同時に、その音をiPhoneで録れてしまうというのは便利ですよね。


URシリーズのコントロールをiPhoneでできてしまうのは、なかなか便利

ちなみに、dspFxMix側の設定によって、録音結果にはエフェクトは反映させず、あくまでもモニター音だけにエフェクトをかけるということもできるし、エフェクトをかけた音を録音していく、いわゆる掛け録りも可能となっています。

iPhone版の場合、画面が小さいだけに、画面をフリックして切り替えて使う

ところで、これらURシリーズにはもう一つ面白い使い方があります。それはWindowsやMacなどのPC、またiPhoneやiPadなどのデバイスもつながず、本体だけのスタンドアロン状態でも内蔵DSPのエフェクトを使い、ミキサー的に動作させる、という使い方です。たとえば「ギター入力の端子にエレキギターを接続し、Guitar Amp ClassicsのLeadを使ってアンプシミュレーションをすると同時にリバーブを掛けた音をメイン出力から出す」ということをオーディオインターフェイス単独でできるのです。

入力を-10dBVにするか+4dBuにするか、ローをどこでカットするかなどの設定もできる(UR242用の設定画面)

この際の設定は事前にdspFxMixで行っておくのですが、一度設定したら、USB接続を抜いても本体が覚えておいてくれるので、そのままエフェクト兼ミキサーとして使うことができるんです。また、ちょっと設定を変えたいとなったら、iPhoneを接続すれば、UR内に記憶されている状態がdspFxMixに読み込まれ、ここで各パラメータを確認してみることができるし、ここで音作りをしていくことも可能です。

その上でiOS上のDAWでレコーディングしていくこともできるのですから、なかなか応用範囲が広く、便利に活用できますよね。普段URシリーズを単にオーディオの入出力だけのために使っている人がほとんどだと思いますが、せっかくの機能なのですから、ぜひ存分に活用してみてはいかがですか?

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【製品情報】
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