今年の1月14日に誕生したPicotune(ピコチューン)というサイトをご存じですか?私も以前Twitterでこのサイトを知って、アクセスしてみたんです。するとシンプルながらすごく楽しいシステムになっていて、いわゆるチップチューン音源が楽しめるのと同時に、ちょっと懐かしい感じもするMIDIデータ共有サイトになっていたんですよね。
このPicotuneを開発し、サイト運営しているのは現在、慶應義塾大学(SFC)の4年生である古林峻(こばやししゅん)@cagpieさん。SFCといえば先日「YouTubeで次々とDTM作品を発表するAKB48の竹内美宥さんが目指す夢」の記事で紹介した竹内さんも在籍しているキャンパス。いろんな人材がいるんだなぁ……、と改めて感心した次第です。今回、その古林さんにお会いして、開発した経緯なども伺ったので、Picotuneをどう楽しめばいいかとともに紹介してみたいと思います。
チップチューンでMIDIファイルを再生し、共有できるサイト、PicotuneはSFCの古林俊さんが開発した
Picotuneはブラウザでアクセスすれば、すぐに音楽を楽しめるサイトなので、見たことがない方は、まずは以下のURLからちょっとアクセスしてみてください。
http://picotune.me/
再生ボタンをクリックすれば、すぐにピアノロールが流れ出して音がでます。アクセスする上での推奨ブラウザはGoogleのChromeです。WindowsでもMacでも使えるし、FirefoxやEdge、Safariなどでも動きますが、IEは非対応なので、普段IEを使っている方はなるべくChromeを使うようにしてくださいね。
また面白いのはPCだけでなく、iPhone/iPad、Androidでも使うことができるということ。これならベッドの中で使うこともできるし、電車で移動中にMIDIを楽しむなんてこともできますよね。
iPhoneでもSafariから利用することができる
実際、音を聴いてみていかがですか?いかにも昔のゲームサウンドの、いわゆるチップチューンサウンド。仕様を見てみると、音色の波形的には
- Sine(サイン波)
- Square(矩形波)
- Sawtooth(ノコギリ波)
- Triangle(三角波)
の4種類および、ノイズを使ったリズムサウンドが出せるシステムになっています。
Picotuneにはすでに数多くのユーザーが投稿したMIDIデータが登録されているので、右側のリストから選択して曲を選び、再生ボタンをクリックすれば、いろいろな曲を聴くことができます。
再生すると画面左下に、コードが表示される
この再生時には、ピアノロールでMIDIデータが表示されるとともに、そこで使われているノート情報を元にPictuneが推測したコードが左下に表示されるのも楽しいところ。
現在Picotuneの規定で、投稿するのはオリジナル曲(アップロード者が所有権を持つコンテンツ)のみに制限されていて、いわゆるコピー曲、カバー曲などをUPすることはできませんが、それでもすでに1,000曲近い楽曲がアップロードされているようですよ。
「とはいえ、手元にある昔のMIDIデータを再生してみたい」、「以前に打ち込んだコピー曲を、このピコピコサウンドで鳴らすことはできないだろうか」……なんて人もいますよね。ご安心ください。アップロードするのではなく、あくまでも自分の手元で鳴らすということが前提とはなりますが、Picotuneを音源として鳴らして遊ぶことができますよ!
Localボタンをクリックすると、MIDIファイルを選択するための画面に切り替わる
方法は簡単。右上にLocalボタンをクリックすると、MIDIファイルの選択画面が現れるので、これ利用して手元にあるMIDIファイルを選ぶのです。すると、画面にはピアノロールが表示されるので、プレイボタンをクリックするだけ。これで手元のMIDIファイルをピコピコサウンドで演奏することができます。
ただ、これだけだと、各チャンネルの音色は設定されておらず、すべて同じ音色で鳴ってしまいます。たとえProgram Changeで音色設定がされていたとしても、これが無視されてしまうのです。
各チャンネルごとに、音色を設定することができる
しかし、この画面下には各チャンネルごとの音色設定画面が現るので、ここでサイン波にするのか、矩形波、ノコギリ波、三角波にするのかを設定するととも、エンベロープおよび各音量の設定を行うことで、ある程度目的に沿った演奏ができるようになるのではないでしょうか?
このように、Picotuneは音源としても使えるシステムなのですが、どうして大学生がこうしたシステムを開発・運営することになったのでしょうか?
Picotuneを開発した古林さん
「Picotune開発のきっかけは、MIDIやプログラミングの勉強をしたいと思い、SMF(MIDIファイル)の解析プログラムを書いたことでした。公開に向けては、作曲や打ち込みのノウハウをMIDIで共有できる環境を提供できたらと思って開発を進めました」と話す古林さん。
大学では環境情報学部で機械学習やAI関連を研究しているとのことですが、小学校1年生のころからパソコンを使いだし、5年生ころには「Tonyu System」というものを使ってプログラミングも始めていたのだとか。
「子供のころはゲームを作ってみたくて、プログラムを覚えると同時にTonyu Systemを利用しながら作曲もし、頑張って絵も描いたりしたんですよ。中学校に入ってからはTwitterがやりたくて、PHPを使ってTwitterクライアントもどきを作ってみたり、高校でもWebアプリを作ったりはしていました。でも中学校・高校は吹奏楽部に入ったので、プログラムより音楽が中心な生活でしたね」と古林さん。やっぱり現代っ子?はスゴいですよね。
このPicotuneは大学に入ってから身に着けたJavaScriptでほとんどを書いているとのこと。また、この音が出る仕組みは、DTMステーションでも何度か取り上げてきたWebAudio APIを使っており、4つある音色もWebAudio APIのものをそのまま使っているそうですよ。
Uploadボタンをクリックし、タイトルなどを付けた上で、アップロードする
「Picotuneも当初は共有機能などはなく、自分のMIDIの勉強になればいい、という程度に思っていたのです。ただ、開発しているうちに、MIDIデータをみんなで共有できる機能を搭載すべきという使命感にも似たものを持つようになったんですよ。そのころ、大学の寄附講座でニフティの方とお会いしたことがあり、相談させていただくことができました。ここで、主に投稿データの権利の部分をお伺いした結果、クリエイティブコモンズを採用することになったんですよ」と古林さん。
実際に使ってみると分かりますが、共有された曲に対して「いいね」ボタンが押せる仕組みが搭載されており、その「いいね」も「曲のどこがいいのか」に対してマークできるようになっているのも面白いところです。
Picotuneを使ってみて、なんとなく80年代、90年代風な懐かしい雰囲気を感じたのは、チップチューンサウンドだからだけでなく、FMIDIのようなMIDIデータ共有の仕組みがあったからかもしれませんね。
「Web MIDIモード(仮)」にチェックを入れる
ちなみに、Pictuneでは、この内蔵音源を鳴らすだけでなく、外部にMIDI音源を接続して、それを鳴らすという機能も搭載されています。具体的には、設定画面において「Web MIDIモード(仮)」にチェックをして保存すると、MIDI OUTPUTという選択肢が現れるので、ここでMIDI音源が接続されている出力ポートを選べば、それを鳴らすことができるのです。
出力先のMIDIポートを選択することで外部音源を鳴らすことができる
「今後は国内だけでなく、海外へもサービスを広げていきたいな、と思っています。またボツをボツのままで終わらせない仕組みも提供できたらな、と考えているところです」と古林さん。その古林さんは、卒業後は某大手情報サービス会社への就職が決まっているそうですが、入社後もPicotuneについては積極的に運営していくとのことなので、大変だとは思いますが、ぜひ頑張って欲しいところですよね。
【関連サイト】
Picotuneサイト