昨夜オランダからのお客様、Rob Papen氏をお迎えしてのニコニコ生放送・Fresh! by CyberAgentのDTMステーションPlus!を終えて自宅に戻りTwitterやFacebookを見たら「Studio One 3.5」という文字が目に飛び込んできました。確認すると国内発売元のエムアイセブン・ジャパンからも「[速報] Studio One 3.5発表!60を超える新機能と機能向上をStudio One 3登録済みオーナー全員へ無償提供」というタイトルのメールが届いていて、ちょっとビックリしました。
これまでのSutdio One 3.3から3.5へとアップデートされ、かなり機能的にも強化されているようなんですよね。しかもStudio One 3のユーザーであれば、今回は無償でダウンロードできるとのこと。もちろん、Studio One 3ユーザーでなくても、無料版のStudio One Primeがありますから、誰でもこれで試すことができます。というわけでさっそく深夜、寝ている間に3.5へアップデートしておいたので、新しくなった3.5を試してみました。まだ、しっかり使い込んでいるわけではありませんが、新しくなったポイントをチェックしてみたいと思います。
Studio Oneが3.5へとバージョンアップされ、ユーザーは無償で入手できる
まず、Studio Oneの開発元であるPreSonusがStudio One 3.5のバージョンアップ内容として一番に訴えていたのが、「オーディオ・エンジンの最適化」という点についてです。これはDAWユーザーであれば、誰もが常により高い性能を求めている部分ではありますが、今回のバージョンアップによって、オーディオの低レイテンシー・モニタリングが可能になったといいます。
オーディオエンジンの性能が向上したとのこと
実レイテンシーの測定までは行いませんでしたが、Studio One上でもっとも低レイテンシーの設定にしても、まったく問題なく安定した動作させることができることは確認できました。
ここでオーディオ設定のプロセッシングという項目を見ると、新たに「プロセッシング」という項目が追加されています。これはプロセッシングのドロップアウトを保護する機能とのこと。
「ドロップアウト保護」を高くするに比例して、「モニタリングレーテンシー」の「スタンダード」の数値が変わっていきます。つまりは、「オーディオデバイス」設定でデバイスブロックサイズを小さくするとモニターのレーテンシーも小さくなりますが、CPU負荷が大きくなるので音切れなどが生じます。これを軽減するために、ドロップアウト保護を入れると、モニターのレーテンシーは小さいままで、処理の負荷も下げられるということなんですね。簡単に言えば、処理と音のバッファーをそれぞれ持っているというわけです。
ミキサーの操作に関する履歴機能が搭載された
一方で、「Cubase 9が実現させて便利だ!」と思っていたミキサーの履歴機能について、Studio One 3.5でもさっそく取り込んで追いついています。これまでオーディオやMIDIを編集でいじった場合、その履歴は残って元に戻すことは可能でしたが、たとえばフェーダーを動かしたとか、PANを動かしたといった場合は履歴として残らなかったため、前の状態に戻すということができませんでした。
もちろんオートメーションでフェーダーの動きを記録し、その時々の状態に戻すということはできましたが、普通にフェーダーを触った場合は履歴に残らなかったわけです。それを今回のStudio One 3.5では履歴として残すことを実現したので、安心して使えるようになりました。
これはフェーダーやPANの操作に限らずプラグイン、インストゥルメント、ルーティング、ミュート操作などすべてを記録してくれるようになったので、なかなか大きな進化点だと思います。
これまでもDDPのエクスポート機能はあったが……
一方、私が個人的にStudio One 3.5で最大の機能向上ポイントだと思ったのがDDPのインポート機能を装備したということです。ご存知の通り、Studio One ProfessionalではプロジェクトページでCDのマスタリングをすることができ、その結果をDDPで出力することができたので、これをCDのプレス工場に出せば、すぐにCDの生産に入ることが可能となっていました。
今回ついにDDPのインポート機能が搭載された
ところが、実際に書き出したDDPのデータを再度確認しようと思っても、Studio One 3にDDPのインポート機能が装備されていなかったためにその術がなかったんですよね。それが今回のStudio One 3.5ではそのインポート機能が装備されたので、これを確認し、必要あれば編集した上で再度DDPの書き出しをすることが可能になったのです。
国内発売元であるエムセブン・ジャパンに確認したところ、DDPの読み込みについては日本のユーザーからも多くリクエストがあったため、日本側から強く要望していたもので、今回それがようやく実現されたのだとか。「DDP自体はオープンプロトコルで書き出し機能は誰でも実装可能です。ただし、読み込みに関しては各社とも自社開発が必要なので、日本のユーザーさんのために今回新たに開発されました」とのこと。やっぱり嬉しいところですよね。
DDPをインポートすると、オーディオデータとともにプロジェクト画面に展開される
もちろんほかの人が作ったDDPのデータを読み込み、そこからWAVを抽出するとか、手元にCD-RドライブでCDを作成するといったこともできますからね。おそらく、DDPインポートのために別のツールを購入していたという人も多いと思うので、これは有償でもおかしくない大きな進化ポイントといえると思います。
見た目にもちょっとカッコよくなった、マスタリング用のプロジェクト画面
ちなみに、このマスタリングのためのプロジェクト・ページのデザインも少し変わってカッコよく、使いやすくなっています。独立したトラックマーカー、柔軟なラウドネス検出オプションなど、マスタリングツールとして見てもなかなかいいソフトになっているようです。
スペクトラル/ラウドネス・メーターも強化されている
また新しいスペクトラル/ラウドネス・メーターが搭載されたというのも、マスタリング系においては大きなトピックスです。最新のラウドネス標準に対応したメータリングになっており、YouTubeなどのネット動画でのオーディオ設定もより確実に行えるようになっています。またオーディオ信号内のキーやチューニングを簡単に検出できるといったのも新機能ですね。
FatChannel XTにVintageEQやTubeCompなどが搭載されて強化された
プラグイン関連でいうと、これまでもあったFatChannelXTが、より強力なものへと進化しています。従来からの機能に加え、新しいビンテージEQとコンプレッサが追加され、まさにビンテージアナログな雰囲気での音作りが可能になっています。見た目にもなかなかグッとくる感じです。
Studio OneからNotionへデータをシームレスにもっていける
そのほか、同じPreSonusの譜面作成ソフトであるNotion 6との連携機能も強化されています。Studio OneのデータをNotionへ持っていって譜面表示させたいという場合、Studio OneのバックグラウンドでNotionを起動した状態で、ソングメニューから「Notionへ送信」とすることでデータを持っていくことが可能です。
MIDIだけでなくオーディオもいっしょにNotionへ持っていけるのもポイント
この際、MIDIのデータだけでなく、オーディオ情報も一緒に持ち出すことができるのもユニークな点です。つまりNotion側で演奏する際にMIDIだけでなく、オーディオも鳴らすことができるわけですね。この際、テンポ・マップも扱うことができるようになっているので、かなり柔軟なやりとりができそうです。
ところで冒頭でオーディオエンジンの改善という話をしましたが、これに関連してもうひとつ大きなトピックスがあります。それはMacにおいて「オーディオデバイス」設定で入力と出力で異なるオーディオインターフェースが選択可能になった、という点です。これは入力のみのUSBマイクしか持っていない方や、あえて違うオーディオインターフェスのヘッドアンプだけを使いたい場合などに有効です。
入力と出力のオーディオインターフェイスを別々に設定できる
実際、上記の画面はStudio 192とStudio 192 Mobileを組み合わせたものです。この際、入力レーテンシーが先ほどの画面のSteinberg USBより値が大きいのは、ハードウェアDSPが関係しているからですね。
以上、ごく触りではありますが、Studio One 3.5で強化されたポイントについて見てみました。アップデート情報を見るとほかにも「保存と自動保存の機能向上し、処理速度が最大10倍速くなった」、「複数の選択トラックを1クリックでミックスダウン/バウンス可能になった」、「オートメーション機能が向上し、完全なオートメーション表示/非表示が可能になった」、「インストゥルメントトラックのオートメーション・レーンが新設された」などなど、いろいろと強化されているようです。
Studio One 3.3から3.5とバージョン番号的にはたった0.2のバージョンアップではあるのですが、かなりいろいろと強化されており、しかも無料で入手できるのですから、Studio Oneユーザーの方はさっそく試してみるといいと思います。またこれでStudio Oneに興味を持ったという方は、まずは無料のStudio One Primeから試してみてはいかがでしょうか?
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Studio One 3製品情報
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