TASCAMのニコニコ公式機材、MiNiSTUDIOをDTM用オーディオインターフェイスに使ったら予想以上に強力だった!

以前、「ポン出しも、エフェクトも、DAWとの連携もこれ1つでOK!ニコニコ公式放送機材、TASCAM MiNiSTUDIOが凄い!」という記事でも紹介した、TASCAMMiNiSTUDIO。上位版のMiNiSTUDIO CREATOR US-42と標準版でマイク内蔵のMiNiSTUDIO PERSONAL US-32の2種類がありますが、遅まきながら先日、上位版のMiNi STUDIO CREATORのほうを入手して試してみました。

この機材、ニコニコ生放送をはじめ、AbemaTV FRESH!SHOWROOMツイキャス、またUSTREAMといったインターネット生放送を手軽に簡単にスタートできるということで、話題を呼んでいるのですが、DTM用途のオーディオインターフェイスとしても、なかなか高機能・高性能なんです。そこで今回は、US-42をDTM的に見てどうなのか、という視点でチェックしてみたいと思います。


TASCAMのMiNiSTUDIO CREASTOR US-42をオーディオインターフェイスとして使ってみた



ネット放送の世界では大きな話題となっているMiNiSTUDIOシリーズですが、まったく知らないという人も少なくないと思うので、まずはMiNiSTUDIO CREATOR US-42について、改めて簡単に紹介しておきましょう。

作曲家の多田彰文さんと私とで隔週火曜日に放送しているニコニコ生放送、DTMステーションPlus!もそうですが、思った通りの音を放送するためにはいろいろな工夫が必要となってきます。たとえばしゃべった声を適度な音量で送出するには、音量調整だけでなく、コンプレッサを必要としたり、PCから出るiTunesの音や、ゲームの音を放送するためには、専用の機材かもう一台のコンピュータが必要となったり、複数のソースの音を切り替えたり、重ねるならミキサーが必要になるなど、結構大がかりになりがちです。


ステレオのレベルメーターも装備するMiNiSTUDIO CREASTOR US-42 

それをパソコンとこのコンパクトな機材1つとだけで実現してしまおうというのがMiNiSTUDIOなのです。上位機種であるUS-42であっても、軽いし、見た目はシンプルではあるのに、かなりな高機能。上面に用意された2つの入力端子はマイクでもギターでも、ラインでも入力できるような設計になっており、その入力レベルを中央のレベルメーターでチェックすることができます。


2つあるコンボジャックに何を接続したかをスイッチで設定する
この際2つあるコンボジャックには、ダイナミックマイク、コンデンサマイク、ギター、ラインの接続が可能で、どの機器を接続するかでスイッチを切り替えるようになっています。ここでコンデンサマイクのアイコンを選択すれば自動的にファンタム電源がONになるというのも、初心者にはわかりやすい工夫になっていますよね。

EFFECTボタンを押すと、内蔵DSPによるエフェクトが機能する

さらに、マイクから入るしゃべり声や歌声にツマミひとつでリバーブを掛けていくことができるし、EFFECTボタンを押せば、前述のコンプレッサやEQのほかいろいろなエフェクトが使えるようになっています。そして、ループバック機能を装備しているので、PCから出す音も、US-42内でミックスすることができるし、AUX入力にiPhoneなどのオーディオ出力を入れれば、これも同じくミックスすることができる仕組みです。


ヘッドホン出力は標準とミニ、また右側にはAUX入力があるほか、ヘッドセット用のマイク入力も用意されている 

また、MiNiSTUDIOならではの機能として用意されているのがPONボタン。いわゆるポン出し機能であり、ボタンひとつで「ピンポーン!」、「ブブーー!」、「わぁ~(拍手喝采)」といった音を鳴らすことができるのも便利なところです。

もちろんWindowsでもMacでも使うことができ、配信ソフトもWireCast、Niconico Live Encoder、Flash Media Live Encoderでも、またブラウザ標準のものでも何でも使えるのも大きな特徴です。

スイッチで放送用のBROADCASTモード、DAW用のCREATORモードに切り替えることができる
でも、このMiNiSTUDIOには、スイッチ一つでBROADCASTモードとCREATORモードというのに切り替えることができるのが重要なポイントとなっているのです。名前からも想像できるとおり、BROADCASTモードというのは、放送用のモードであり、ON AIRボタンでインターネット放送の送出をON/OFFできるようになっています。

一方、CREATORモードにすると、最高で24bit/96kHzで動作する2IN/2OUTのASIO/CoreAudio対応のオーディオインターフェイスに変身するのです。でも、単なるオーディオインターフェイスに留まらず、DSP内蔵の高性能オーディオインターフェイスとして動作してくれるのです。

CREATORモードのブロックダイアグラム
まずはこのCREATORモードでのブロックダイアグラムをご覧ください。初心者ユーザーにはちょっと難しいかもしれませんが、中級・上級者の方なら、これを見ることで、US-42の面白さがすぐに実感できるのではないでしょうか?ちなみに、BROADCASTモードの場合は、以下のブロックダイアグラムのようになるのです。

BROADCASTモードのブロックダイアグラム
ここからはCREATORモードに絞って見ていきますが、このモードの場合、たとえばボーカルをレコーディングする際、ヘッドホンやメイン出力から返すモニターにはリバーブがかかりますが、DAWには入っていく信号はSUB BUSなので、リバーブはかからない生の音がレコーディングされます。また、ボーカリストが気持ちいい感じでリバーブが返せるよう、本人がノブを回して調整できるというのも便利なところですよね。

ただしDAWに入るのが生の音である、という言い方は正確ではありません。何もいじらない生の音が入れられるほか、EQ、ダイナミクス、エフェクトを掛けた音で録音していくことも可能になっているのです。


MiNiSTUDIO Setting PanelのEASYモード 

その辺を司るコントロールソフトとして、MiNiSTUDIO Setting Panelというものがあるのですが、これのEASYモードを使うのがまず簡単です。1ch(MIC 1)、2ch(MIC 2)それぞれ独立して設定できるようになっているのですが、SOUNDのほうで、音質の設定を行います。

Hard Vocal、Soft Vocal、Hard Spoken、Soft Spokenから選択することでEQやダイナミクスが設定されて音の雰囲気が変わります。Offにすれば生の音ですね。

右側のEFFECTではMALE(女性の声を男性風に)、FEMALE(男性の声を女性風に)、ECHO(エコー)、CHOPPER(トレモロサウンド)、RADIO(ラジオボイス)にする設定が用意されており、これらから選んだ上で、EFFECTボタンをONにすることで、それが効く仕組みになっているのです。

MiNiSTUDIO Setting PanelのEXPERTモード
しかし、面白いのはここから。EXPERTを選ぶと、もっとより細かく音作りの設定ができるようになっているのです。やはり1ch、2chともに独立した形で4バンドのEQとコンプレッサが設定できるほか、各エフェクトの効き具合も設定できるのです。

そして、ここで作り込んだ音のまま、DAWのトラックへ掛け録りの形でレコーディングされていくわけです。

なお、ここにはDIRECT MONITORというスイッチがありますが、これも重要なファクターとなっています。これがOFFであれば、DAW側からの戻りがモニターされるのに対し、MONOだと片チャンネルに入ってきた音をステレオでモニターすることができ、STEREOにすれば、1chは左、2chは右の形でモニターされるようになります。

また、DIRECT MONITORではありますが、前述のEQ、コンプおよびエフェクトがかかった音でモニターされるというのも要チェックですよ!


iPhoneやiPadと接続する場合は、microUSBケーブルで電源供給する 

さらにもう一つピックアップすべき点は、このMiNiSTUDIOがUSBクラスコンプライアントなデバイスであるということです。つまり、これをiPhoneやiPadにUSB-Lightningカメラアダプタ経由で接続すると、オーディオインターフェイスとして機能するということです。


iPadのAuria ProやCubasisのオーディオインターフェイスとしてMiNiSTUDIO CREASTORを利用できた 

したがって、CubasisやAuriaProなどを使ってレコーディングすることができるのです。ただし、iPhoneやiPadからの電源供給でMiNiSTUDIOは駆動できないため、別途用意されているmicroUSB端子に電源供給することで使えるようになります。

また、ここで気になるのがMiNiSTUDIOのDSPがどのように機能するのか、という点です。実際に試してみたところ、これがまたうまくできているんです。PC側のMiNiSTUDIO Setting Panelで設定した内容を一度電源を切り、PCと切り離してもしっかり覚えているんですね。

したがって、リバーブを掛けながらモニターすることもできるし、EQやコンプ、エフェクトを掛けた音をCubasisやAuria Proなどにレコーディングしていくこともできるのです。こう考えると、かなり汎用性が高く、高機能なオーディオインターフェイスであることが分かると思います。

このようにMiNiSTUDIOは、インターネット放送で使える高性能なオーディオ機器であると同時に、DSP搭載の強力なオーディオインターフェイスとしても使えるユニークな機材なのです。
【製品情報】
TASCAM MiNiSTUDIO CREATOR製品情報
TASCAM MiNiSTUDIO PERSONAL製品情報

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