すでにご存じの方も多いと思いますが、6月1日、Cakewalkが驚く発表をしました。ひとつはSONARのMac版を開発中であり、すでにアルファ版が動いている、ということ。もう一つはSONARのバージョンアップに関してライフタイム・フリー・アップデート(生涯無料アップデート)という制度を導入するということです。
Mac版の話はなんとなく噂にはあったものの、どちらも寝耳に水という感じで、SONARを長年見てきた私としても本当に驚く内容でした。それと同時に、いきなりの方針変更に、「この先本当に大丈夫なの?」と不安に感じたのも正直なところ。ただ、国内のCakewalk製品の発売元であるTASCAMに確認したところ、「ライフタイム・フリー・アップデートは今だけの3か月限定の特別キャンペーンで、SONARの大々的なプロモーションです」とのこと。永続的なものではないんですね。だとしたら、今が1度限りの大チャンスということのようです。具体的に今回の2つの発表がどういうもので、どんな意味を持つのかを考えてみましょう。
※受付期間が2016年12月31日までに延長されました。
まずは改めてCakewalkという会社について振り返ってみましょう。同社は1987年に設立されたアメリカのソフトウェアメーカーで来年で設立30周年を迎える老舗中の老舗です。当初はTwelve Tone Systemsという社名であり、最初に出したのがMS-DOS用のMIDIシーケンサ、Cakewalkでした。
その後、日本のRolandとの関係を深めて聞き、2008年にRolandの100%子会社となりましたが、ご存じの通り2013年にGibson傘下へと移り、現在は兄弟会社ともいえるTEACのTASCAMブランド製品として国内外で発売されています。
その30年の歴史の中で一貫していたのはMS-DOS~Windowsのシーケンサ・DAWを作り続けてきたということ。CubaseやPro Tools、Studio One、さらにはDigital PerformerまでもがWindowsとMacのハイブリッドになるなか、CakewalkのDAW、SONARは頑なともいえるほどWindowsにこだわってきたソフトであったのです。
その背景には、WindowsのOSの根幹部分までしゃぶりつくす設計となっていたため、Windowsでは非常に高いパフォーマンスを発揮できるシステムになっていた一方で、Windowsに依存しきっているからこそ、ほかへの移植が難しいというDAWとなっていたことが大きな要因です。
以前、CakewalkがGibson傘下に入った直後にインタビューした記事「Mac版SONARは出さないのか?Opcodeのように潰れる心配はないのか?Cakewalk社長に聞いてみた」においても、Cakewalk社長は「Mac版はない!」と発言していたんですよね。
もっともCakewalkがMacと無縁なのかというと、そうではないんです。その昔、まだMac OS9の時代ですが、MetroというMac用のMIDIシーケンサを買収し、VSTプラグインも使えるDAWとして発売していた時期もあります。結局は、開発リソースをSONARに集中させるということでMetroは辞めてしまいましたが、その一方で、数多く出しているプラグイン・インストゥルメントはWindows/Macのハイブリッドとなっており、それなりにMacには力をいれていたけれど、肝心のSONARだけはWindowsから脱却できていなかったわけです。
それが、今回いきなりのMac対応の発表ですから驚きました。TASCAMに確認したところ「まだ動作するソフトを手元で確認しているわけではありません。ただ以前から開発中であることは聞いており、今年秋にはある程度動作するものが出来上がるとの情報です」とのこと。やはり、現時点ではあくまでもアルファ版であって、まだすぐに使えるというような状況ではないのでしょう。
ただ、AudioUnitsのプラグインも対応しているとのことですから、Wineを使うというようなWindowsを引きずったシステムではなさそうです。見た目は、Windows版のCakewalkのUIをそのまま踏襲しつつ、完全にMacアプリとして最適化されているようですから、今後が楽しみなところです。もちろん、これだけMac用のDAWがいろいろある中、SONARが登場したからといって、世の中が大きく変わるようなものではありませんが、SONARのDAWとしての位置づけは大きく変わりそうですよね。
さて、そのMac版の話よりも、より大きなニュースともいえるのがライフタイム・フリー・アップデートに関する話です。ライフタイム・フリー・アップデートというのは、今後のバージョンアップをすべて無償で提供する、というもの。DAWの世界でいうと、FL STUDIOがライフタイム・フリー・アップデートを実施していることが有名ですよね(FL STUDIOもWindowsベースのソフトとしての歴史を歩みつつ、Mac版のリリースをアナウンスするなど、ちょっとSONARと似た展開をしています)。
SONARのライフタイム・フリー・アップデートも同時に発表された
そのライフタイム・フリー・アップデートをSONARが行うことを6月1日に発表したのです。ユーザーにとっては、ものすごく嬉しい話であり、毎年お布施のようにして払う必要があったバージョンアップ料金を払うことなく、今後のSONAR新バージョンを入手できるようになったのです。
これまでにも「旧SONARユーザーは格安で買える!?サブスクリプションではない?国内正式発表された新SONAR購入制度を徹底的に聞いてみた」といった記事で紹介してきた通り、SONARはメンバーシップ制度というものを導入し、基本的に毎月システムのアップデートがなされてきました。
そのメンバーシップ制度自体は、従来通りなのですが、6月1日~8月31日までの期間限定でSONARを購入すると、特別にライフタイム・フリー・アップデートの権利をGETできるというキャンペーンになっているんですね。まあ、Cakewalkだって、メンバーシップ制での収入は大きなものでしょうから、これを完全に無償にしてしまったら、マズいでしょうから……。
確認してみたところ、この期間限定のサービスは世界同時に行われており、日本でも同様に入手することができます。ただし、いくつかの条件があるので、その点はしっかり確認しておきましょう。主なものを挙げると以下のような条件となっています。
・対象は最上位版のSONAR Platinumである
・新規購入、アップグレード、ライセンス更新を含め8月31日までに入手し、ユーザー登録すること
・電話・メールでのサポートは従来通り1年間である
・SONAR本体以外のプラグインはライフタイム・フリー・アップデートの対象外である
といったことなどです。
ここで購入するのはパッケージでも、ダウンロード版でもOKですが、マンスリー契約ではなく、1年間メンバーシップの一括購入した上で、購入後、必ず期間内のCakewalkサイトでのユーザー登録が必要となっています。
気になるのは、その価格ですが、新規ユーザーであれば、楽器店や通販なのでパッケージを購入するのが簡単で安く、税込み6万円弱となっています。一方、これまでSONARの最上位版を持っていた方であれば、Cakewalkサイトからダウンロード版が25,920円(税込み)で購入可能です。これはTASCAM時代に入ってからのSONARに限らず、Roland時代のSONAR X1やSONAR 8もっともっと遡ってSONAR初代バージョンでもOKです(ただし、あらかじめCakewalkサイトでユーザー登録しておく必要あがります)。
また、1つ下のグレードのSONAR X3 STUDIOや、もっと古いSONAR 5 Studio Editionといったもののユーザーであれば、ダウンロード版が38,880円(税込み)での入手が可能であり、これによって、今後ずっと無償でアップデートしていくことができますよ。
以前、海外版を購入していた、という人であっても、現在は国内外のCakewalkサイトが統一されているので、同じように日本語で購入できるようになっています(入口が英語だったりはしますが)。
いずれにせよ、このライフタイム・フリー・アップデートが提供されるのは8月31日までです。「まだ時間があるから大丈夫…」なんて油断をしていると、「うっかり期限を過ぎて生涯後悔」なんてことになってしまいますから、すぐにでも購入することをお勧めします!
※追記
記事を書き終えて2日。これはやっぱり自分でも買っておくべきだと、先ほど購入しました。上記のダウンロード版で税込み25,920円也。
その後、すぐにインストールしてみたところ、MEMBERSHIPの使用制限を確認すると、2037/12/25とありました。ん~生涯無料とはいえ、今のところ21年後まで。そのころには自分も死んじゃうかもしれませんからね…(いや、生きてるはず)。きっと、そのころには、延長されていることでしょう!
【関連サイト】
SONARライフタイム・フリー・アップデートキャンペーン
SONAR製品情報
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【価格チェック】
◎Amazon ⇒ SONAR Platinum(パッケージ版)
◎サウンドハウス ⇒ SONAR Platinum(パッケージ版)