新進気鋭の米メーカー、outputのmovementが面白すぎる!

outputというアメリカの会社をご存知ですか?いまミュージシャンの間でもよく話題になっているメーカーであり、これまでもリバースサウンドツールであるREV、パルスエンジンという独特なシステムを搭載したシンセサイザのSIGNAL、ボーカルエンジンのEXHALEなど、斬新なプラグイン音源を出してきたメーカーです。

そのoutputが先日新たにリリースしたのがmovementという同社初のエフェクト。まあ、エフェクトというよりもシンセサイザにも近いソフトであり、outputでは「リズム・プロセッサ」と呼んでいるようですが、これがかなり斬新なソフトウェアで、とっても使える面白いツールなのです。実際どんなことができるのか見てみましょう。

outputがリリースした同社初のエフェクトプラグイン、movement


最近会うミュージシャン、作曲家などと話していると、よく話題に登場するoutputというメーカー。「いまoutputを抑えておくといいですよね」、「SIGNALはマジでヤバイっす」なんてことを言われるのですが、まだ一般にはそれほど広まってはいないですよね!?

同社の著名なツールを簡単に紹介しておくと、最初にリリースされ、outputの凄さを決定づけたのがREVというリバースサウンド音源でした。リバースサウンド、つまり逆再生音を出すのですが、単に逆再生するだけでなく、分かりやすいUIとともに、プリセットとして用意されているリバースするサンプルの組み合わせのセンスが最高で、これを鳴らしていくだけで1曲できてしまう……というような衝撃的なインストゥルメントでした。


outputの名を世に知らしめた第一弾製品、REV 

このREVはリリースされてからすぐ海外でも大ヒットとなった一方、国内ではクリプトン・フューチャー・メディアSONICWIREで発売されて、ベストセラー製品となったようです。


とにかく使えるプリセットが揃った即戦力音源、SIGNAL 

2番目に登場したのが、SIGNALというシンセサイザ。これはパルス・エンジンという、独特なシステムで、2種類のサウンドとパルス(人間の脈のようなもの!?)を掛け合わせていくという発音システムとなっています。中にLFOやステップシーケンサによるモジュレーション機能が入っていて、これらを駆使していくのですが、やはりプリセットが非常に充実しているので、特に難しいことを考えなくてもすぐに使うことができるし、これを使って生まれてきた楽曲もどんどん増えているようですね。


ボーカル音源のEXHALE 

そして、3つ目のヒット製品がEXHALE(エクスヘイル)というボーカル音源。VOCALOIDのように歌声合成させるのではなく、予め用意されている膨大な素材をEXHALEで加工した上でDAWのテンポに合わせて鳴らすというもので、やはりLFOやステップシーケンサによる効果でグリッジ的なサウンドが強いんですよね。そのためEDMやクラブミュージックでかなり使われているようですが、アンビエント的な素材も膨大にあるので、さまざまなジャンルの音楽で使えそうです。

そんなユニークな音源を次々と生み出してきたoutputが先日リリースしたのがmovementという同社初のエフェクト。「outputが出したエフェクトって何だ!?」と話題になっていたので、さっそく使ってみました。これ、エフェクトという次元を完全に超えてますね!かなりトンでもないソフトです。


とりあえずCubaseのオーディオトラックに組み込んでみた 

Windows、Macのハイブリッドで、VST、AudioUnits、AAXと何でも使えるエフェクトですが、ここではCubaseのオーディオトラックにインサーションで入れ、エフェクトだからということで、まずはなんとなくエレキギターを繋いで弾いてみたんです。

まずは001番の「Pluckin Around」というプリセットで音が出るわけですが「何だこれは!」というのが、最初の感想。音としてはギターに何種類かのトレモロ&ビブラートがかかった音なんだけれど、複数の違った音色、効果が組み合わさった、なんとも不思議なサウンドなんです。


プリセットを切り替えると、まったく違うサウンドへと変化する 

プリセットを切り替えていくと、それぞれ大きく違ったビックリするようなサウンドが飛び出してきます。ギターを弾いているのでギターサウンドがベースになっているけれど、そこにリズム感が加わってきたり、シンセサイザのような音色になったりするんです。その多くのプリセットに共通するのは、やはりこれまでのoutput製品と同様に、シーケンサとLFOが大きな威力を発揮しているということ。

001のプリセットはシンプルにトレモロという感じの一定のパターンとなっていましたが、プリセットによっては、激しいリズムを刻んでいたり、動いたり止まったり、左右に思い切り音を飛ばしたり……と従来のエフェクトの概念にはなかったようなサウンドになるんですよね。


キーワードでプリセットを絞り込むことも可能 

プリセットとしては300種類用意されており、これを選んでいくだけで、かなり遊ぶことができるし、作りたい曲のイメージが膨らんできそうです。またclean、straight、plucks、slow……といったキーワードからプリセットを絞り込んでいくことも可能です。

いまはギターにmovementを掛けて鳴らしましたが、パッド系のサウンドに使ってもいいし、インストゥルメントトラックにmovementを使うのもいい感じですよ。さらにはリズムトラック掛けるとまったく違ったリズムに変化するのも面白いところです。実際、どんな音になるのか、outputがビデオを作っているので、これを見てみると、より雰囲気が使えると思います。

では、このmovementというエフェクト、どんな構造になっているのでしょうか?その中身を少し見ていきましょう。一番キーになるのが左右に2つずつ用意されているrhythmというもの。ここをクリックすると、画面中央にステップシーケンサが現れ、ここで自分でステップシーケンスを組んでいくことができるんですね。ステップ数は1~32。7とか11といったステップ数にすることもできますよ。

rhythm1をクリックしてみると、画面中央にステップシーケンサが表示された 

 

自分でプログラムするのは面倒だ、という人には数多くのプリセットのシーケンスも用意されているので、それを選ぶだけでもOK。さらにシーケンスをランダムで生成する機能も用意されています。もちろん、ステップシーケンサの動きはDAWのテンポに同期されているし、ここにスウィングをかけることも可能で、各ステップの波形を設定するなんてこともできるんですね。


シーケンサの代わりにLFOを設定できるほか、後で紹介するサイドチェーンを設定することもできる 

このステップシーケンサの機能の充実さだけでビックリですが、より単調なLFOを選ぶこともできます。まあ、単調といったって、いろんな波形が用意されているので、これだけでもかなりのことができますよ。

一言でLFOといっても、さまざまな波形が用意されているので、複雑な設定も可能
このようなrhythmが独立して4つ用意されているので、それぞれを別々に組んでいくことが可能です。もちろんそれぞれがDAWのテンポに同期するわけなので、バラバラでなく、うまく絡み合っていくんですよね。

ここで、その4つのrhythmの関係性についても簡単に解説しておきましょう。画面左側にrhythm1、rhythm2、右側にrhythm3、rhythm4が置かれているのが分かると思いますが、左側がengine A、右側がengine Bと分かれているのです。そして、engine A、Bそれぞれに異なるエフェクトを設定することができるようになっています。


各種エフェクトを選択すると、パラメータを細かく設定できる 

具体的にはディレイ、フィルター、リバーブ、EQ、ディストーション、コンプレッサの6種類で、このうち4つまでを好きな順番に設定することが可能です。つまり2種類のシーケンサもしくはLFOで作った音をエフェクトでグリグリいじることができるわけですね。


計6種類用意されているエフェクトを、左右のengine A、Bでそれぞれ4つずつチェインできる 

さらにengine Aとengine Bのバランスを決めるのがメイン画面の中央にある、グルグルしたX-Yパッド。ここでカーソルを動かすことで、engine Aとengine Bの音量バランスはもちろん、PAN設定、エフェクトの設定などを調整することができるようになっているのです。

各パラメータを中央のX-Yパッド用に自由に割り当てることができる
いずれにせよ、考えてどんな音になるのかがすぐに想像できるレベルではなさそうです。プリセットを選んだり、パラメータを動かして出会た音、気に入ったパラメータを利用するというのがmovementの正しい使い方なんでしょうね。

ところで、このmovementを先ほどはトラックにインサーションして使いましたが、マスタートラックに入れるとか、すでにミックスし終えた曲に掛けていくというのも一つの手です。こうすることで、DJパフォーマンス的に曲をリアルタイムに大きく変化させることができるのです。BPMさえしっかり合わせてあればかなりアグレッシブな再生ができるし、メイン画面中央のX-Yパッドを使うことで、パフォーマンスプレイも可能ですからね。ちなみに、X軸Y軸にどんなパラメータを割り当てるかは自由に設定できるようになっているのも面白いところ。

かなり活用範囲は広そうですから、どう使うかはユーザー次第。一つ持っていて損はない面白いプラグインだと思いますよ。


クリプトン・フューチャー・メディアのSONICWIREから海外と同額で購入できる 

なお、前述のとおり、output製品はクリプトン・フューチャー・メディアが代理店となっているので、movementも同社のWebサイト、SONICWIREから購入することになるのですが、そこでの価格は海外価格と同じになっています。ドル/円のレートによって日々価格も変化するので、日本円での定価は存在していないのですが、アメリカ現地定価としては149ドルなので、現在17,000円強となっています。


かなりしっかりした日本語のマニュアルもPDFで用意されている 

海外から直接ダウンロードすることもできますが、SONICWIRE経由で購入すれば、価格は同じで日本語で購入でき、日本語のサポートが受けられ、日本語マニュアルも用意されているのですから、よほどの理由がない限り、SONICWIREから買うのほうがよさそうですよ!

【関連情報】

movement製品情報
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