apollo twinがUSB 3.0とともにWindowsにやってきた

DTM革命と言われながらも、Windowsは置いてけぼりになっていた、Universal Audioapollo twin。従来apollo twinはThunderbolt接続でMacのみの対応でしたが、USB 3.0接続に対応した新ハードウェアであるapollo twin USBが発売されたことで、ついにWindowsでも使えるようになりました。

 

オーディオインターフェイスであり、外部頭脳であり、プラグインであり、マイクプリアンプであり、ミキシングコンソールでもあるapollo twin。とくにプロの間で大ヒットしている機材ですが、「apollo twinって何?」という方も少なくないと思います。そこで、この発売されたばかりのapollo twin USBについて、私も実際にWindowsで使ってみたので、もっとも基礎的なところから紹介してみたいと思います。


小さなボディーに、脅威的な機能・性能を詰め込んだapollo twin USB

apollo twinはデスクトップに置くことができるコンパクトな機材。さまざまな機能があるのですが、まず第一義にはオーディオインターフェイスとなっています。スペック的には24bit/192kHz対応で、アナログが2IN/4OUT、さらにadatによるオプティカル入力も備えているのでここからも8ch入力が可能だから、トータルで10IN/4OUTというものです(adatは44.1kHzおよび48kHzの場合8INですが、88.2/96kHzなら4IN、176.4/192kHzでは2INとなります)。

※ヘッドホン出力は別系統となるので、それをカウントすると10IN/6OUTとなります。


コンパクトなサイズであるapollo twin USB。接続端子ガUSB 3.0になったこと以外は従来のapollo twinと同じ

リアパネルを見ると、結構シンプルな構造であることが分かると思いますが、アナログの2INはコンボジャックとなっており、マイクまたはラインでの接続が可能。さらに、フロントにはHi-Z入力、つまりギターやベースと直結可能な端子があり、これがリアの1chとの入れ替えが可能という形になっています。


接続端子はUSB 3.0。USB 2.0では利用できない

接続はUSB 3.0となっているので、付属のUSB 3.0専用ケーブルが必要となり、従来のUSB 2.0用のケーブルは使えません。また、現時点においてドライバなどがWindows用のみでMac用が出ていないため、USB 3.0端子搭載のMacであっても接続することはできないようです。Macで使うなら、従来からあるThunderbolt版のapollo twinが必要となるのですが、ぜひ両方で使えるようになってもらいたいところではありますね

 


フロント左はギター入力用のHi-Z対応、右はヘッドホン出力

もともとapollo twinは非常にS/Nが良く、音質のほうは、とても評判がいいのですが、まあ、単にアナログ2IN/4OUTのオーディオインタフェースであったとしたら、それほど話題になることもなかったでしょう。実売価格は11万円(税別)というのも、ちょっと高く感じられたかもしれません。ところが、apollo twin USBが凄いのはここからなんです。


リアパネルにはマイク/ライン入力が2つと、ライン出力が4つ、それに左側電源スイッチ上にadat入力がある
そう、ここには超強力なDSP(デジタル信号処理装置)が2つ搭載された、ある種コンピュータともいえる機材なんです。DSPとは高速なデジタル演算を行うIC。コンピュータの心臓部であり汎用的な計算を行うCPUとは違い、信号処理のみに特化したICで、これを利用することで、エフェクト処理やアンプシミュレーションなどを効率よく行うことができるのです。

 

あぁ、最近DSP搭載でリバーブとかが使えるオーディオインターフェイスってよくあるよね!」と思った方、apollo twinにおいては半分正解で、半分不正解。というのもapollo twinのそれは、単にオーディオインターフェイスの中でエフェクトが使えるというのとはまったく違うもの。次元が異なるものなんですよ。


入力チャンネルの切り替えやファンタム電源のON/OFF、PADや位相反転などはフロントスイッチで操作できる

apollo twinに内蔵されているのはUAD-2というシステムになっており、DAWのプラグインが利用できるものなんです。詳細については以前「ビンテージエフェクトを忠実に再現する、プロ御用達のUAD-2ってどんなもの!?」、「超強力エフェクト満載のUAD-2を使ってみた」といった記事でも書いているので、そちらも参照いただきたいのですが、まさにプロ御用達のプラグインが使えるようになるのです。

UAのサイトからダウンロードするソフトウェアにはドライバのほかプラグイン類など一式が詰まっている

利用するにあたっては、ドライバとセットになった「UAD Powerd Plug-Ins Installer」なるソフトをUniversal Audioサイトからダウンロードの上、インストールしておく必要があるのですが、準備すべきなのはそれだけ。


たとえばCubaseなら標準のプラグインに追加される形で、UADのプラグインの一覧が表示されて、使えるようになっている 

 

これによりWindowsにおいてはVST、RTAS、AAX 64の各プラグインフォーマットに対応しているので、Cubase、SONAR、Pro Tools……とほとんどのDAW環境で利用することができるのです。今回はCubase Pro 8.5で試してみましたが、とくに何の設定もすることなく、プラグインが山ほど追加されていて、Cubase標準のプラグインと同じように使うことができるのです。
普段使っているVSTプラグインなどとまったく同じようにUADのプラグインを使うことができる

そして、ここで使えるプラグインを起動しても、PC側のCPU負荷が掛からないというのが大きなポイント。なぜなら、前述の通りapollo twin内蔵のDSPの力で動いているからですね。どれだけのプラグインを同時に使えるかは、利用するプラグインによって演算処理にかかるパワーが異なるため、一概にはいえませんが、2つのDSPを搭載したapollo twin USBでは、同梱しているRealtime Analog Classicsであれば、30~50個は、動かすことできると思います。
そうはいっても、プラグインなんてDAWにいっぱいバンドルされてるし、フリーウェアもいっぱいあるので、必要なの?」という方もいるでしょう。確かにそれで満足しているのであれば、それで十分だと思います。でも、UAD-2がプロ御用達であるのには理由があるのです。それは、このプラグインが独自のエフェクトというわけではなく、プロのレコーディングスタジオなどに数多く導入されている定番機材を復元したものだからです。


数々の著名ハードウェアメーカーがUniversal Audioと共同開発でビンテージ機材を復刻させている

Ampex、Lexicon、Studer、Neve、Manley、SSL、EMT、Empirical Labs、MXR、Roland……といったメーカーの機材です。ビンテージ機材が中心となりますが、それらを勝手にエミュレーションしているのではなく、綿密に音をチェックしながら、各メーカーと共同開発し、オリジナルに忠実に復元しているのが重要なポイント。だからこそ、プロユーザーが安心して使っているわけですね。

 

このさまざまなメーカーと共同開発したプラグインはかなり膨大な数になりますが、それらがすべてapollo twin USBに無料でついて来るというわけではありません。基本的にはすべてオプション扱いで、有料。起動すると2週間のお試しはできるようになっているけれど、ちゃんと使うのなら、購入が必要になります。


apollo twin USBに標準バンドルされている定番リミッタ/コンプレッサ、1176SE LIMITING AMPLIFIER 

 

ただし、apollo twin USBには「Realtime Analog Classics」というプラグイン群のライセンスがついてます。具体的には
・Raw Distrotion
・Teletronix LA-2A Classic Leveling Amplifier (Legacy)
・1176SE/LN Classic Limiting Amplifiers (Legacy)
・Pultec Pro EQ (Legacy)
・RealVerb-Pro、Precision Mix Rack コレクション
・UA 610-B チューブプリアンプ & EQプラグイン
・Softube Amp Room Essentials (Amp Room Half-StackとBass Amp Room 8×10)
が無償でバンドルされているのです。これらのプラグインが使えるだけでもapollo twin USBの価格分の元は十分とれると思いますよ。

 


apollo twin USB内部をコントロールできるapollo console 2.0

さらにapollo twin USBにはミキシングコンソールである「apollo console 2.0」というものも搭載されています。これ、DAWのミキサーとは別に存在するものであり、apollo twinの中身そのものをコントロールできるようになっているんです。この辺の詳細は以前「apollo twinでプロのレコーディング環境をそのままDTMに持ち込もう」という記事でも紹介しているので、そちらを参照いただきたいのですが、このコンソール上でも、前述のUADのプラグインを使うことが可能です。


Unisonで実現するマイクプリ、UA 610-B

さらに面白いのは、DAW上で使えるプラグインとはまったく別に「Unison プリアンプ・テクノロジー」なるものが搭載されていることです。これはVSTやRTAS、AAX 64で使えるものではなく、このapolloコンソール上で設定するプラグインのようなものなのですが、apollo twinの入力段部分を変えてしまおうというもの。つまり、ここにマイクプリを入れたり、ギターのストンプエフェクトを入れてしまおうというのですが、ソフトウェアだけでは不可能な面白いことをしています。


Unisonで実現するSoftube Amp Room Essentials 

そう、apollo twinの入力部のインピーダンス(抵抗ですね)も変更してしまうことで、実機と同等な電気的特性を実現し、ホンモノさながらな音を実現しているんです。


標準バンドルのRealtime Analog Classicsだけでも、かなり使える

また、このapolloコンソール 2.0には、数多くのプリセットの設定も用意されていて、即現場で使えるシステムへと変身させることができます。そして、そのプリセットの中には著名エンジニアによる即戦力プリセットチェーンが用意されているのも大きなポイント。しかもそのらは標準バンドルされる「Realtime Analog Classics」で構成されているから、追加のプラグインなどを購入しなくても使えてしまうのも嬉しいところですね。

 

これだけの機能、性能を持った機材って他に存在しないですからね。10万円を超える製品だから、簡単には手を出せないかもしれませんが、一歩上のシステムを組むという意味で、検討してみる価値はあると思いますよ。

なお、このWindowsにおけるapollo twin USBのセッティングに関するビデオも日本語字幕付きでUPされているので、実際に使われる方は、まずこれを見てみれば間違いないですね。

【価格チェック】
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【関連情報】
apollo twin USB製品情報

UNIVERSAL AUDIO UAD 5分間 Tips

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