ユーロラック対応のモジュラーシンセ、Roland SYSTEM-500 Complete SetとA-01Kで遊んでみよう
もっともユーロラックが流行るようになったのは、ここ数年であり、規格自体が登場したのも90年代後半。もともとはドイツのDoepferというメーカーが作ったシンセモジュールの仕様を公開し、それに合わせてみんなが作ったことから、広まっていったんですね。
モジュールは一般的に縦長な顔をしていますが、縦が3U(128.5mm)で、横幅は1/5インチ=5.08mmの倍数という決まりになっているので、ユーロラックケースにキレイに収まるようになっています。また、電源の接続もラック内部でフラットケーブルを使って接続するようになっているんですが、極性を間違えて接続すると「煙が出て、回路が壊れた……」なんて話も時々聞くのがちょっと怖いところ。
そんな中、「とりあえず、これですぐに安心して使えるよ」という形で出てきたのが、Roland SYSTEM-500 Complete Setというわけなんです。これは、昨年12月から発売されているSYSTEM-500シリーズのモジュール5機種をユーロラックケース「SYR-E84」にマウントした上で、パッチケーブル、電源などをセットにしたというものなので、これなら失敗せずに使えそうです。
もちろん、すでに他社製を含め、なんらかのユーロラック対応機器を持っている人が、SYSTEM-500シリーズを組み合わせて使うのもいいし、まずはRoland SYSTEM-500 Complete Setからスタートして、後から他社製のモジュールを追加していく…なんてのもありですね。
そのSYSTEM-500は、デザイン面は、1976年にRolandが発売したSYSTEM-700を、サウンド面では、1979年に発売したSYSTEM-100Mをモチーフにユーロラックに対応させたという完全なアナログモジュラーシンセなんです。
521の右にあるのはSYSTEM-100M 130=VCAを元に作られた530
SYSTEM-100MにはVCOの112、VCFの121、VCAの130、ENV&LFOの140、それにフェイズシフターやディレイなどの171…といったものがありましたが、今再現されたSYSTEM-500では下二ケタが同じ番号の512、521、530、540、572といった名称になっており、機能的には昔のものと同様になっているんです。
ご存じの方もいらっしゃると思いますが、Rolandでは昔の機器のマニュアルもPDFでダウンロードできるようになっているので、これらを入手すれば、そのまま利用可能というのも面白いところですね。
昔のSYSTEM-100MシリーズのマニュアルはRolandサイトよりPDFで入手できる
ちなみに、このSYSTEM-500はRolandとアメリカのポートランドにあるMalekko Heavy Industry社との共同で開発したもの。そんなメーカー同士のタッグというのも面白いところですよね。
各モジュールはネジを外せば、簡単に取り外して交換することが可能
さて、そのSYSTEM-500はCV信号とGATE信号を入力することにより、外部からコントロールすることができます。どこで何をコントロールするかは自由に決められるのが面白いところではありますが、たとえばVCOにCV信号を入れることで、ピッチを変化させ、VCAにGATE信号を入れることで、音の鳴る長さを変えることを可能にします。
この状態でA-01のキーボード(正確にいえばA-01に接続されたK-25mですね)を弾けばSYSTEM-500を演奏することができます。また、A-01にMIDI接続されたMIDIキーボードを弾くことでもSYSTEM-500を鳴らすことができるし、Bluetooth接続されたiPhoneやiPad上で動くMIDI鍵盤を弾いても鳴らすことができますよ。
そしてA-01が本領を発揮するのは、ここから。A-01に内蔵されている16ステップのシーケンサにデータを入力してプレイすれば、それに合わせてSYSTEM-500の演奏がスタートします。さらにA-01をPCと接続した上で、PC上のDAWを起動させてA-01へMIDI信号を送れば、この状態でもSYSTEM-500を演奏することが可能です。ただし、SYSTEM-500はモノフォニックのシンセサイザですから、送る信号は単音になるように気を付けてくださいね。もちろん、和音を送っても壊れるようなことはありませんが、基本的には後から届いた信号が有効になるので、思った通りの演奏にならないと思います。
先日の記事でも書いたとおり、A-01はCV/GATEやMIDI、さらにPCやiOSなどとのHUBとして機能する機材だけに、どの信号がどのように流れるのか混乱してしまいそうです。デフォルトの状態では、すべての入力がすべての出力に届くようになっていますが、設定によってこれをもっと細かく指定することが可能となります。
たとえば、DAWからA-01へ送る際、MIDIの1chはCV/GATE接続のSYSTEM-500へ、2chはA-01の内蔵音源、3chはBluetooth接続したiPad上の音源、4chはA-01のMIDI OUT……のように細かく決めることができるので、この辺も面白いところですよ。
もちろん、SYSTEM-500のオーディオ出力をオーディオインターフェイスに突っ込み、それをそのままDAWへレコーディングしていけば、ほかのトラックと同期する形でオーディオ化していくことができます。つまり、モノフォニックでしか鳴らすことができないSYSTEM-500ではありますが、A-01Kを介してDAWと組み合わせれば、1トラックずつSYSTE-500の音をオーディオ化して重ねていくことができるため、最終的にSYSTEM-500だけで作り上げた音楽、というものも比較的簡単な手順でできてしまうわけですね。
それにしても、このA-01Kは、こうしたアナログシンセからMIDI音源モジュール、DAW上のソフトシンセ、iOS上の音源まで、メーカーを問わず、新旧含めたさまざまなシンセをシームレスに接続できるというのは便利ですね。個人的には、A-880というRolandの昔のMIDIパッチベイをいまだに使っているんですが、A-01は、まさに現代版MIDIパッチベイという表現がいいかもしれませんね。
【製品情報】
Roland A-01製品情報
Roland SYSTEM-500 Complete Set製品情報
【価格チェック】
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【SYSTE-100Mマニュアルダウンロード】
SYSTEM-100M 112
SYSTEM-100M 121
SYSTEM-100M 130
SYSTEM-100M 140
SYSTEM-100M 172
SYSTEM-100M 191