トラックメイキングを革新的に進化させるAKAI MPC TOUCHの威力

年末、AKAI PROFESSIONALからMPCシリーズの新製品として画期的機能を持つMPC TOUCHが発売になりました。さっそく12月22日のニコニコ生放送、DTMステーションPlus! 第45回においても、トラックメイカー・MPCプレイヤーである熊井吾郎さん、AKAIの中村直也さんをゲストに、MPC TOUCH特集を組んで約90分の番組を進行し、多くの方に御覧いただきました。

 

とはいえ、番組を御覧いただいていない方も大勢いると思いますし、「90分も見てられないので概要だけ知りたい」という方も少なくないと思います。そこで、ここでは番組でのエッセンスを抜き出しつつ、AKAI MPC TOUCHとはどんな製品なのかを紹介してみたいと思います。


2015年末に発売されたタッチディスプレイ搭載のMPC TOUCH


MPC TOUCHとは何なのか。その雰囲気を掴むには、AKAIが作成した以下の1分ちょっとのビデオを御覧になるといいかもしれません。

 

 

詳細はともかくとして、その雰囲気は実感できたのではないでしょうか?そう、これは1988年に16パッド、サンプラー、MIDIシーケンサーが一体となったMusic Production Centerの一号機、MPC60として誕生し、その後、数々の新モデルとともにトラックメイキングマシンの世界標準として進化してきたAKAI MPCシリーズの最新マシンなのです。


2015年12月22日のDTMステーションPlus! 左から熊井さん、藤本、中村さん、多田さん

番組ゲストの熊井吾郎さんも1997年リリースのMPC2000から、ずっと使い続けているとのことですが、基本的な使い方は最新のMPC TOUCHでも当時のままだから、触ればすぐに手に馴染むとのこと。


番組のスタジオに持ち込まれたフロッピーディスクベースで動作するMPC2000(放送録画より) 

 

スタジオにはAKAIの倉庫から引っ張り出してきたという、そのMPC2000も持ち込んでもらったのですが、3.5インチのフロッピーディスクでサンプリングデータのやりとりをし、標準メモリが2MBというのですから、隔世の感がありますよね。


1988年のMPC60以降、歴代のAKA MPCシリーズの最新版としてMPC TOUCHが登場

 

さて、このMPCシリーズ、時代とともに機能、性能も大きく進化していったわけですが、2012年のMPC RENAISSANCEで大きな変化がありました。それはMPC単体ですべてを行う機材ではなくなったということ。頭脳はPC側で、操作はMPCハードウェアで分業するようになったんですね。つまり、このハードウェアはフィジカルコントローラとなったわけですが、その点では、今回のMPC TOUCHも同様。


頭脳部分はPC側にゆだねられ、バックでMPC Softwareというものが動いている

 

とはいえ、DAWとフィジカルコントローラの関係よりも、断然一体化されており、ユーザーはPC側を一切操作することなく、MPC単体で操作できるというのが大きな特徴。そしてMPC TOUCHではその操作性、そしてMPC TOUCHでできる機能が大幅に強化されているんです。


ベロシティ対応でRGBバックライト付きの4×4のパッド 

 

本体にはMPC伝統の4×4のパッドがあり、ここを叩く形で鳴らすわけですが、これがベロシティ対応のRGBバックライト付きとなっているので、叩く強さによって光り方を変えられるほか、パッドの色を自由にアサインできるので、自分の使いやすいように設定できるのもユニークなところです。


最大の特徴となるのは本体に搭載されている7インチのマルチタッチ型のカラーディスプレイで操作ができること

そのMPC TOUCHの最大のポイントとなるのは、7インチという大きなカラーディスプレイを搭載していること。これがマルチタッチ型のディスプレイとなっているので、このディスプレイと下に並ぶボタン、右にあるノブを使うことで、ほぼすべての操作が気持ちよくできてしまうのです。


波形を触るようにしてエディットできるのは快感! 

 

たとえばサンプリングした波形を画面に表示させ、これをピンチインで拡大表示させるとともに、音を鳴らしながらスタートポイント、エンドポイントを細かくエディットする……なんてことが簡単にできるのはMPC TOUCHならではのポイントだと思います。


メニューからさまざまな画面・機能を選択する 

 

またステップシーケンサ機能も装備しているのですが、その入力もこの7インチのディスプレイを指で操作しながら入力したりエディットすることができるようになっています。


X/Yの2次元FXコントロール機能

さらにX/Yの2次元FXコントロール機能では、タッチパネルでリアルタイムにビートリピート、フィルターやディレイなどエフェクトをかけることが可能となっており、それもMPC TOUCH本体の操作だけでできるから、トラックメイキング用としても、ライブパフォーマンス用としても快適に操作できるというわけです。


MPC TOUCH本体とバックで動くPC上のMPC Softwareは完全連動している

ちなみに、プレイヤーは、MPC TOUCHの画面を見ながら操作すればいいだけですが、この操作中にPCの画面を見てみると、MPC Softwareが起動されていて、MPC TOUCHの操作に合わせて、こちらも同じように動いているんですよね。


リアパネルにはオーディオの入出力端子、ヘッドホン出力、MIDIの入出力が装備されている

 

さて、このMPC TOUCHのハードウェアはタッチディスプレイを採用したフィジカルコントローラなわけですが、リアパネルを見るとTRSフォンジャックが4つ並んでおり、IN/OUTと記載されているほか、ステレオミニのPHONEというジャックもあります。そう、実はこれ、オーディオインターフェイスとしての機能も備えているんですね。もっとも、基本MPC用として使うものであるため2IN/2OUTで24bit/44.1kHzという仕様ではありますが、ほかにオーディオインターフェイスを用意する必要なく、これだけで利用できるわけです。


リアの入力端子から取り込んだオーディオをサンプリングして素材として使うことも可能

 

ご存じの通りMPCにはサンプラーとしての機能も備わっているので、このMPC TOUCHのオーディオ入力を利用することで外部の音源からサンプリングすることが可能です。Windowsに接続する場合はASIOドライバ、Macと接続する場合はCoreAudioドライバで動作するとともに、バッファサイズの調整もできるので、PCの性能に応じた最適なレイテンシーに設定することができますよ。

 

さらにミニジャックのMIDI IN/OUT端子も搭載されているので、MPC TOUCHを介して外部のMIDI機器との接続もできるというわけですね。

 

ちなみに、このMPC TOUCHのハードウェアは、使うシチュエーションに応じて、本体の角度を変えられるのも便利なところ。底面にアタッチメントが取り付けられるようになっているので、これで手前に傾けたり、奥に傾けたりできるし、アタッチメントなしであれば、水平に設置できるというわけです。


DTMステーションPlus!の番組内では、熊井さんによる華麗なプレイも披露された

ニコニコ生放送のDTMステーションPlus!においては、熊井さんに、MPC TOUCHの機能をいろいろと紹介していただいた後、琴による「さくら」をサンプリングした曲をモチーフにしたオリジナル曲をプレイしていただきましたが、その華麗なら手さばきは、リスナーのみなさんからも絶賛されていました。実際、1時間程度の操作においても、まったくPCを操作することなく、すべてMPC TOUCHの操作だけでデータのロードから、波形の編集、シーケンスの編集、エフェクトの設定などすべて行っていましたからね。


MPC Softwareを起動していないときはPCの拡張画面として使うこともできる

 

ところで、この7インチのマルチタッチのディスプレイですが、実はMPC Softwareを動かしていないときは、PCのサブディスプレイとして使うことが可能になっているんです。そのことはWindowsでもMacでも同様であり、要するにUSB接続のディスプレイをうまく応用してMPCの画面表示に使っていたわけなんですね。まあ、ホントにサブディスプレイとして使うニーズがあるのかどうかは知りませんが、最新のUSBディスプレイって、かなりスピード的にも違和感なく、使えるものなんだと感心した次第です。


ProToolsでおなじみのAIRのXpand!2がバンドルされている

 

最後にもう一つ触れておきたいのがバンドルソフトウェアについてです。MPC TOUCHの付属ソフトウェアは、すべてAKAI PROFESSIONALのサイトからダウンロードする形になっており、中枢となるMPC Softwareのほか、MPC TOUCHのドライバ類、そして10GB以上にもおよぶ膨大なサンプリング素材が用意されているのですが、DTM的視点から見て、なかなかすごいのがAIR Instrumentsなるものがバンドルされていること。


VacuumProほか、さまざまな音源がバンドルされており、Cubaseなどで利用することも可能

そう、ProToolsにバンドルされていることでお馴染みの音源として、DB-33、MiniGrand、Xpand!2や、Vacuumの上位版であるVacuumPro、さらには同じAIRの高性能音源としてHybird、Loom、theRiser、VelvetなどのVST版が同梱されているんです。もちろん、これをCubaseなど音楽制作ソフトにプラグインとして動かすことができるので、それだけでも大きな価値があると思いますよ。


MPC Software自体もプラグインとして使うことができる

 

ちなみにMPC Softwareもスタンドアロンとしてだけでなく、VST、AudioUnits、RTAS、AAXのプラグインとして動作させることも可能です。この場合、スタンドアロンでの動作といくつか違いがある面もありますが、DAWと連携させることができるという点では大きな意味を持ちそうですよね。


AKAIサイトでは「これは、ほんの、はじまり…。」という意味深なコメントも

 

すぐに、簡単に使える一方で、とにかく、たくさんの機能を持っているから、使えば使うほど面白くなっていくMPC TOUCH。AKAI PROFESSIONALのサイトにおいて「これは、ほんの、はじまり…。」という意味深なコメントがあるのが気になるところではありますが、すごい時代に入ってきたものだと実感します。

【関連情報】 
AKAI MPC TOUCH製品情報

【価格チェック】
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