2015年末に発売されたタッチディスプレイ搭載のMPC TOUCH
番組ゲストの熊井吾郎さんも1997年リリースのMPC2000から、ずっと使い続けているとのことですが、基本的な使い方は最新のMPC TOUCHでも当時のままだから、触ればすぐに手に馴染むとのこと。
スタジオにはAKAIの倉庫から引っ張り出してきたという、そのMPC2000も持ち込んでもらったのですが、3.5インチのフロッピーディスクでサンプリングデータのやりとりをし、標準メモリが2MBというのですから、隔世の感がありますよね。
さて、このMPCシリーズ、時代とともに機能、性能も大きく進化していったわけですが、2012年のMPC RENAISSANCEで大きな変化がありました。それはMPC単体ですべてを行う機材ではなくなったということ。頭脳はPC側で、操作はMPCハードウェアで分業するようになったんですね。つまり、このハードウェアはフィジカルコントローラとなったわけですが、その点では、今回のMPC TOUCHも同様。
とはいえ、DAWとフィジカルコントローラの関係よりも、断然一体化されており、ユーザーはPC側を一切操作することなく、MPC単体で操作できるというのが大きな特徴。そしてMPC TOUCHではその操作性、そしてMPC TOUCHでできる機能が大幅に強化されているんです。
本体にはMPC伝統の4×4のパッドがあり、ここを叩く形で鳴らすわけですが、これがベロシティ対応のRGBバックライト付きとなっているので、叩く強さによって光り方を変えられるほか、パッドの色を自由にアサインできるので、自分の使いやすいように設定できるのもユニークなところです。
そのMPC TOUCHの最大のポイントとなるのは、7インチという大きなカラーディスプレイを搭載していること。これがマルチタッチ型のディスプレイとなっているので、このディスプレイと下に並ぶボタン、右にあるノブを使うことで、ほぼすべての操作が気持ちよくできてしまうのです。
たとえばサンプリングした波形を画面に表示させ、これをピンチインで拡大表示させるとともに、音を鳴らしながらスタートポイント、エンドポイントを細かくエディットする……なんてことが簡単にできるのはMPC TOUCHならではのポイントだと思います。
MPC TOUCH本体とバックで動くPC上のMPC Softwareは完全連動している
ちなみに、プレイヤーは、MPC TOUCHの画面を見ながら操作すればいいだけですが、この操作中にPCの画面を見てみると、MPC Softwareが起動されていて、MPC TOUCHの操作に合わせて、こちらも同じように動いているんですよね。
さて、このMPC TOUCHのハードウェアはタッチディスプレイを採用したフィジカルコントローラなわけですが、リアパネルを見るとTRSフォンジャックが4つ並んでおり、IN/OUTと記載されているほか、ステレオミニのPHONEというジャックもあります。そう、実はこれ、オーディオインターフェイスとしての機能も備えているんですね。もっとも、基本MPC用として使うものであるため2IN/2OUTで24bit/44.1kHzという仕様ではありますが、ほかにオーディオインターフェイスを用意する必要なく、これだけで利用できるわけです。
ちなみに、このMPC TOUCHのハードウェアは、使うシチュエーションに応じて、本体の角度を変えられるのも便利なところ。底面にアタッチメントが取り付けられるようになっているので、これで手前に傾けたり、奥に傾けたりできるし、アタッチメントなしであれば、水平に設置できるというわけです。
ニコニコ生放送のDTMステーションPlus!においては、熊井さんに、MPC TOUCHの機能をいろいろと紹介していただいた後、琴による「さくら」をサンプリングした曲をモチーフにしたオリジナル曲をプレイしていただきましたが、その華麗なら手さばきは、リスナーのみなさんからも絶賛されていました。実際、1時間程度の操作においても、まったくPCを操作することなく、すべてMPC TOUCHの操作だけでデータのロードから、波形の編集、シーケンスの編集、エフェクトの設定などすべて行っていましたからね。
ところで、この7インチのマルチタッチのディスプレイですが、実はMPC Softwareを動かしていないときは、PCのサブディスプレイとして使うことが可能になっているんです。そのことはWindowsでもMacでも同様であり、要するにUSB接続のディスプレイをうまく応用してMPCの画面表示に使っていたわけなんですね。まあ、ホントにサブディスプレイとして使うニーズがあるのかどうかは知りませんが、最新のUSBディスプレイって、かなりスピード的にも違和感なく、使えるものなんだと感心した次第です。
VacuumProほか、さまざまな音源がバンドルされており、Cubaseなどで利用することも可能
そう、ProToolsにバンドルされていることでお馴染みの音源として、DB-33、MiniGrand、Xpand!2や、Vacuumの上位版であるVacuumPro、さらには同じAIRの高性能音源としてHybird、Loom、theRiser、VelvetなどのVST版が同梱されているんです。もちろん、これをCubaseなど音楽制作ソフトにプラグインとして動かすことができるので、それだけでも大きな価値があると思いますよ。
ちなみにMPC Softwareもスタンドアロンとしてだけでなく、VST、AudioUnits、RTAS、AAXのプラグインとして動作させることも可能です。この場合、スタンドアロンでの動作といくつか違いがある面もありますが、DAWと連携させることができるという点では大きな意味を持ちそうですよね。
すぐに、簡単に使える一方で、とにかく、たくさんの機能を持っているから、使えば使うほど面白くなっていくMPC TOUCH。AKAI PROFESSIONALのサイトにおいて「これは、ほんの、はじまり…。」という意味深なコメントがあるのが気になるところではありますが、すごい時代に入ってきたものだと実感します。
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