10ch入力を備える小さなミキサー、AG06が便利!

みなさんはミキサーって使ってますか?DAWの中のミキサーではなく、物理的なミキサーに関してです。DAWが強力なミキシングコンソール(ミキサーの巨大なもの)としての機能を果たすとともに、オーディオインターフェイスがその入出力としての役割を担うため、以前と比べるとミキサーの出番は減ったかもしれません。

でも楽器やオーディオ機器、マイクなどがいろいろあったとき、ミキサーがあるととっても便利なんですよね。いちいちPCの電源を入れなくても、DAWを起動しなくても即使えるのがいいし、ノブやフェーダーですぐにレベルをいじれるのも便利。その一方で、今ならPCと柔軟に接続できるのも重要なポイント。そう考えたとき、手ごろな価格で入手可能な機材って意外と限られてしまうんです。そうした中、2万円以下で購入でき、8ch以上の入力を装備し、WindowsやMacはもちろんのこと、iPhone、iPadとも連携可能な機材…としてピックアップできたのがヤマハのAG06でした。

デスクに置いても邪魔にならないコンパクトな10chミキサー、AG06


ミキサーって、今どんなものがあるだろうか……と調べてみると、実はそれほど数がありません。まずはアナログミキサーデジタルミキサーかという選択肢があり、S/PDIFAES/EBUなどのデジタル接続が必須であればデジタルミキサーとなりますが、基本的に10万円以上のものがほとんどで、なかなか手が出せないのが実情です。

一方のアナログミキサーは1万円程度のコンパクトなものから揃っていますが、2万円以下で入手できる製品を出しているメーカーとしてはBEHRINGERヤマハの2社。昔はTASCAMのミキサーやBOSSのコンパクトなミキサーなんかもありましたが、すでに撤退しちゃったみたいなんですよね。

まあアナログミキサーといっても、USB接続できる製品も増えてきており、これらを使えばデジタルミキサー的にPCからノイズレスでミキサーへ信号を送ることができるし、ミックスした音をノイズレスでPCに取り込むことができるなど、DTMユーザーにとって、なかなか嬉しい仕様となっています。


YAMAHAのミキサー、AG03-MIKUが話題ではあるけど、入力が足りないという人にはAG06という選択肢もある

そのUSB対応のアナログミキサーはヤマハのMGシリーズも含め、いくつかの選択肢があるなか、DTM界隈で話題になっているミキサーは、なんといっても初音ミクのデザインが施されたAG03-MIKUでしょう。実売15,000円(税抜)程度で、エフェクトも装備し、Cubase AIまで付いてくる、まさに機能テンコ盛りの機材ですからね。これについては、以前も記事で取り上げましたが、個人的にいうと、「もうちょっと入力ポートが欲しい!」という思いがあったのは事実です。

そのため、AG03の入力ポートを増やしたAG06に興味があり、「AG03-MIKUがあるけど、買おうか、どうしようか…」と思っていたのです。が、まあ、AG03-MIKUはヤマハから「暫くの間」ということで借りているモノだし、AG06の価格だって実売18,000円(税抜)程度。考えているよりは買っちゃえ!と、先日ようやく入手したのでした。


左がAG03-MIKU、右がAG06 。奥行は同じで、横幅はAG03-MIKUが12.9cmに対しAG06は15.5cm

AG03-MIKUとAG06、並べてみるとやや横に大きいものの、マウスパッドくらいの面積のコンパクトサイズ。こちらもPCのUSB端子からの電源供給だけで動作するし、microUSBでACアダプタに接続すれば(つまりスマホの充電ケーブルをそのまま流用すればいいわけです)、これ単独で動かすことができるようになっているのもAG03-MIKUと同様です。


microUSB端子にスマホ用などのACアダプタを接続すればスタンドアロンで使える

初音ミクモデルはさすがに抵抗がある……」という人も、AG06の白と黒のツートンカラーなら大丈夫ですよね。もっとも初音ミクデザインではないAG03というものもあるようですが、世の中的にはAG03-MIKUが売れているようです。またAG06の初音ミクモデルは存在していないので、あしからず。


入出力端子はすべてトップパネルに用意されている

さて、写真を見てもわかるとおり、USB以外の入出力端子はすべて上面にあります。ざっと見ていくと、一番左の1chは基本的にマイク用のコンボジャックで赤いボタンを押すと+48Vのファンタム電源がオンになり、コンデンサマイクでも利用可能になっています。

一番左の1chはマイク用、2chはマイクとギター兼用の端子となっている
その隣の2chはマイクとギター兼用の端子。こちらはファンタム電源は使えないので、マイクの場合はダイナミックを使うのが基本。GUITARボタンをオンにするとHi-Z対応となりギターを直結できるようになります。

縦に並ぶ2つのフォンジャックはライン入力として使う3ch、4ch。基本的にはシンセサイザなどの楽器とステレオで接続することを想定した端子となっています。GAINボタンの切替でHIGHとLOWが切替られるようになっており、左チャンネルである3chだけに接続した場合はモノラルで動作する形になっています。

さらに、その右のRCAのピンジャックの2つの端子もライン入力の5ch、6chとなっており、こちらもステレオでの接続が想定された端子ですね。楽器とつないでもOKですが、こちらはRCAであることからも、CDプレイヤーなどのオーディオ機器との接続に便利、ということのようです。ここにもGAINボタンがあるので、接続する機器によって切り替えてみるとよさそうですよ。


簡易的に、ということではあるが、手持ちのヘッドセットをマイク代わり、ヘッドホン替わりに使用することも可能

なお、3/4ch、5/6chの下のところにはHEADSETと書かれた2つのミニジャックがあります。これはヘッドセットにつなぐことで、これをマイクおよびヘッドホンとして利用できるよ、というもの。変換アダプタを利用することでiPhoneやAndroid用のマイク付ヘッドホンで利用することもできるので、ちょっとした利用には便利に使えますよ(変換アダプタによっては、うまく使えないものもあるので要注意)。

なお、このHEADSETにマイクをつないだ場合、メインの1chの入力は無効になり、HEADSETのヘッドホン端子にヘッドホンを接続するとメインのヘッドホン出力は無効になるので、その点も注意してくださいね。

HEADSETの端子にアダプタを介してiPhoneやAndroid用のマイク付ヘッドフォンと接続して使うこともできる

さて、AG06という名前になっているのは、この「メイン入力が6chあるよ」というところからついているようです。実際、ミキサーとしてのレベル調整は1ch、2chはそれぞれ独立しているほか、3chと4ch、5chと6chはステレオセットで調整するノブが用意されています。


Windowsのオーディオ出力先に設定すれば、iTunesなどの音もAG06へ出力できる 

でもAG06はさらに4chの入力を持っているのが大きなポイント。まず7ch/8chに相当するのがAUX入力です。これはスマートフォンとかiPod、Walkmanなどに接続することが想定された端子ですが、要はステレオミニジャックでのライン入力ですから何に接続してもOKですよ。ただし、入力レベル調整はできないので、iPodなど、出力側で調整するようにしてください。

AG06もAG03やAG03-MIKUと同様にCubase AI 8がバンドルされている
そして9ch/10chに相当するのがUSB経由でのPCからの入力。iTunesやWindows Media PlayerをAG06に送ることもできるし、WindowsならASIOドライバ、MacならCoreAudioドライバを介す形でDAWから送ることもできますよ。ちなみに、AG06もAG03やAG03-MIKUと同様にCubase AI 8のライセンスがバンドルされており、ネットからダウンロードすることで高機能なDAWが利用できるのも重要なポイントです。もし、Cubase AI 8の使い方がよく分からないというのであれば、リットーミュージックの書籍、「Cubase 8シリーズ徹底操作ガイド」をご覧ください(宣伝、宣伝!、iPadなどで見れる電子書籍版もありますよ)。

Cubase8シリーズ徹底操作ガイドは電子版と紙版が存在する

このように小さいながらも10chの入力を装備するAG06ですが、出力のほうはというと、右側に揃っています。STEREO OUTとなっているのがメイン出力であり、その右のMONITOR OUTがモニター出力。通常は、MONITOR OUTのほうにモニタースピーカーなどをつなぎます。もし、外部のミキサーやアンプに接続するのならSTEREO OUTでの接続ですね。


出力系は右側にSTEREO OUT、MONITOR OUT、PHONE OUTと揃っている

またヘッドホン出力は前述のとおりHEADSETのヘッドホン出力と排他的な関係になっているので、これを利用する場合は、HEADSETのヘッドホン出力に刺さっているケーブルを外すようにします。

なお、モニター出力はスピーカー用、ヘッドホン用を右下の2つのノブで調整できるほか、MONITOR MUTE CH 1-2というボタンが用意されています。これは押してみると分かるとおり、オンにすると1chと2chがミュートされるようになっています。「バックで流れている音楽はそのままにマイクからの声だけをミュートしたい」といった場合に使えるわけですね。

と、ここまでが基本的な接続ですが、AG06の大きな特徴は、ここにエフェクトが搭載されているということです。1ch用にはCOMP/EQおよびEFFECTというボタンが、2ch用にはAMP SIMとEFFECTというボタンが用意されています。これはオン/オフができる単純なものですが、COMP/EQをオンにすると、すごくボーカル用にいい感じでEQとコンプがかかり、EFFECTをオンにするとリバーブが聴いてきます。

4つあるボタンをオンにするだけで、各エフェクトを使うことができる
同様に2chのAMP SIMをオンにするとかなり歪んだギターアンプサウンドになるとともに、EFFECTをオンにするとこちらもリバーブがかかります。何の設定もなく、ただスイッチを押すだけでOKというのが実はすごく便利だったりするのですが、もちろん、細かく設定を行っていくことも可能です。

AG06のエフェクトをコントロールするAG DSP CONTROLERのEASY画面

そのためにはAG DSP CONTROLLERという無料配布のアプリをインストールする必要がありますが、ここで細かく操作していくことができるんですね。これについては、以前紹介したAG03-MIKUのものとまったく同じ。ただし、AG06はボタンが4つ装備されているので、より効率よく操作ができるというわけなんですね。


AG DSP CONTROLERのEXPART画面。より細かくパラメータを設定することができる 

最後に、PCへの出力についても触れておきましょう。AG06はこれでミックスした結果をノイズレスでUSBでPCに伝送することが可能なので、別途オーディオインターフェイスを用意することなく、AG06自体をミキサー機能付きのオーディオインターフェイスとして使うことができるわけです。

そして、この伝送においては3つのモードが用意されています。これについてもAG03、AG03-MIKUと同様なのですが、簡単に説明しておきましょう。まずLOOPBACKに設定しておくと、PCからAG06へ送った信号も含めて、全部のミックスをPCに返すことが可能になります。


TO PCのスイッチをLOOPBACKにするとPCからの出力もミックスされる

一方、INPUT MIXを選択するとPCからの出力を除くミックス結果がPCへと送られます。LOOPBACKの場合もINPUT MIXの場合も、エフェクトを通した結果の音が送られるわけです。

そしてもう一つあるのがDRY CH 1-2というモード。これを使った場合、AG06のミキサーとしての機能は無視して、PCには1chと2chの入力がそのままPCへ送られる形になります。この場合でも、AG06のメイン出力、モニター出力に変化はありませんが、PCへの出力だけはドライ音となるわけなのです。つまり、単純なオーディオインターフェイスとして機能するわけなのです。この辺もなかなか便利な設計ですよね。


AG06のブロックダイアグラム。
上記をクリックすると詳細なPDFが表示されます

以上、買ったばかりのAG06について見てきましたが、いかがだったでしょうか?チャンネル数が少なくていいならAG03、AG03-MIKUでいいですが、ちょっとでも余裕を持たせたい、つなぎたいものがいろいろある、という場合にはAG06、いいですよ!オーディオインターフェイスとは別にこれを1つ持っておくと、いろいろな場面で便利に使えそうだと思います。
【関連情報】
ウェブキャスティングミキサー情報ページ
AG03製品情報
AG06製品情報

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