ZOOMが出したUSB 3.0オーディオIF、UAC-2のレイテンシーが凄い

先日ZOOMからUSB 3.0対応のオーディオインターフェイス、UAC-2が発売されました。すでに同社が出していたThunderbolt対応のオーディオインターフェイス、TAC-2Rと見た目、仕様もソックリながら、PCとの接続がUSB 3.0となっているんですね。

最高で24bit/192kHz対応で、2IN/2OUTでMIDIの入出力も備えているというシンプルなものなので、普通ならUSB 2.0で十分だと思うのですが、ZOOMはあえてUSB 3.0に対応させたというちょっと変わった機材。実際どんなものなのか試してみたところ、レイテンシーにおいて凄い威力を発揮してくれました。どんな機材なのか紹介してみたいと思います。

ZOOMのUSB 3.0対応オーディオインターフェイス、UAC-2

みなさんのPCにはUSB 3.0のポートを搭載していますか?最近のPCであれば、そのほとんどがUSB 3.0ポートを持っていると思いますが、あまり意識したことがない、という人が多いように思います。一般的なUSB 2.0のポートと最新のUSB 3.0のポートの違いの判別はいたって簡単。端子の真ん中が青いか黒いかの違いです。


筆者のデスクトップPC。左の2つの青いポートがUSB 3.0

青いのがUSB 3.0で黒いのが2.0ですね。とはいえ、USB 3.0は基本的にUSB 2.0の上位互換ということになっているので、USB 3.0ポートにUSB 2.0対応の機器を普通に接続することができます。そして現在あるUSB機器のほとんどはUSB 2.0または、そのさらに下位互換のUSB 1.1対応となっているので、多くの方が、それがUSB 3.0ポートであることを、あまり意識することもなく各種周辺機器を接続しているのではないでしょうか?

つまりオーディオインターフェイスに限らず、MIDIキーボードはもちろん、プリンタ、カードリーダー、マウス……と何でもつながり、普通に使っていることと思います。もっとも中にはUSB 3.0ポートに接続すると、不具合が生じるケースもあるようなので、「USB 3.0ポートはなるべく避ける」なんて人もいるようですが、なんかもったいない話でもありますよね。

私自身はタッチパネル型のディスプレイがUSB 3.0対応なので、これを接続するためにUSB 3.0ポートを利用していますが、使っているのはそれくらい。あとは、普通のUSB 2.0端子と同じように使っているだけです。

でも、そもそもUSB 3.0とUSB 2.0って何が違うんでしょうか?一番の違いは伝送速度です。USB 2.0が480Mbpsであるのに対し、USB 3.0は5Gbpsと約10倍のスピードとなっています。またこの端子から供給できる電力にも違いがあります。USB2.0が2.5W(5V, 500mA)であるのに対し、USB3.0規格は4.5W(5V, 900mA)となっているのが特徴です。


USB 3.0用のケーブル。右側の周辺機器に接続する形状がUSB 2.0のものとは明らかに違う 

一方で、ケーブルの規格にも違いがあるんですよ。PC側の接続端子の形状は同じですが、デバイス側がダンゴ状(!?)になっているんです。このケーブルがあって、初めてUSB 3.0接続ができる仕掛けになっているのです。

なんか、ちょっと難しい話になってしまいましたが、そのUSB 3.0に対応したオーディオインターフェイスをZOOMが出してきたわけです。現状、まだUSB 3.0対応のオーディオインターフェイスは非常に少なく、昨年、RMEMADIface XTを実売30万円弱で出してきたくらいではないでしょうか?先日、TASCAMPreSonusもUSB 3.0対応の製品を発表しましたが、まだ発売はされていないので、実質的にはZOOMが2番手になったと思います。

上が今回登場したUAC-2。下はThunderbolt対応のTAC-2R

価格帯的にはMADIfaceとは大きく異なり、定価が27,000円(税抜)と手ごろなもの。Cubase LEもバンドルされているので、とりあえず、これですぐにDTMがスタートできるというセットなわけですが、そもそもUSB 3.0にして何の意味があるのでしょうか?


Cubase LE 7もバンドルされている 

Mac版のドライバ登場が6月予定とのことで、5月末現在、まだWindowsでしか使うことができませんが、ZOOMサイトからドライバとMixEfxというミキサーソフトをダウンロードしてインストールしてみました。

2IN/2OUTのオーディオインターフェイスだから、普通にオーディオの再生ができ、ヘッドホンおよびメイン出力で鳴らしてみたところ、非常にHi-Fiでキレイなサウンドで聴くことができました。またフロントにある2つの入力ポートはコンボジャックとなっていて、ファンタム電源およびHi-Zに対応しています。そのため、普通のライン入力はもちろん、ダイナミックマイク、コンデンサマイクでもギターでも何でも接続できますね。


フロントにコンボジャックが2つあり、いずれもHi-Zスイッチが独立してあり、48Vのファンタム電源も対応

ギター入力用のHi-Zスイッチは1ch、2chとも独立してついているので、2本ともギターを入力することも可能。ファンタム電源のほうは2つ共通になっています。これらは本体のノブやスイッチで調整することができるほか、UAC-2 MixEfxというソフトを使って調整することも可能となっています。


UAC-2のすべてをコントロールできるMixEfx。右上にエフェクトの設定もある

このMixEfxの画面を見るとわかる通り、本体だけではできない機能もいろいろと搭載されています。その一つが画面右上にあるエフェクト。ROOM、HALL、PLATE、ECHOそれぞれ2つずつの設定が用意されており、本体内のDSPで動作してくれます。使い方としてはUAC-2のリアにあるDIRECT MONITORのスイッチをSTEREOもしくはMONOでオンにすると効果を発揮することができます。


リアのDIRECT MONITORスイッチをSTEREOもしくはMONOに設定する

たとえばリバーブをONにすると、マイクで歌った声にリバーブがかかった状態でモニターすることができますが、これをレコーディングしても記録されるのは生の声だけでリバーブはかからないのがポイント。つまり気持ちよく歌うための簡易的なリバーブであり、本格的な音づくりは、DAWのプラグインなどを使って作り込んでいけばいいわけです。

また、使っていて非常に気持ちいいのはどのボリュームでも、それを絞り切ると完全にミュートされるという点。変なノイズが入り込んでくるような心配がないという意味では、非常に使いやすい機材ですね。

なお、ここにはループバック機能も用意されているのでPC側で再生した音をマイクなどの入力とミックスした上でレコーディングすることもできますよ。

と、ここまでの内容において、とくにUSB 3.0の意味はないようにも思いますが、前述のとおり電力供給量が大きいため、オーディオ回路がより安定して動作し、結果として音がいいというメリットもあるのかもしれません。

しかし、驚いたのはそのレイテンシーの短さでした。ご存じのとおり、レイテンシーとは音の遅れのことであり、DAWを介してモニターする際、どのくらい音が遅延するかを表すものです。前述したダイレクトモニタリングの場合は、そもそもDAWを通さずにモニターするので、ゼロレイテンシーとなりますが、DAW上のプラグインエフェクトをかけてモニターする場合などは、このレイテンシーが大きく効いてきます。


96kHzでバッファサイズを32sampleに設定 

また、ソフトシンセを演奏するような場合にも、鍵盤を弾いてから音が出るまで時間差が生じるので、どれだけレイテンシーを縮められるかが重要なポイントとなるのですが、ここでUAC-2が凄い威力を発揮してくれたのです。

INとOUTを結線した上でレイテンシーを測定した結果、2.22msecを記録
詳細な実験レポートは、今度AV Watchの連載、Digital Audio Laboratoryで紹介しようと思っていますが、とりあえず24bit/96kHzでバッファサイズを最小の32sampleに設定してみたところ、入力と出力をループさせて2.22msecという実測値を出してくれました。

これまで私が数多くのUSBオーディオインターフェイスで実験してきた中では、RMEの機材が3msec程度と一番短かったのですが、それを超える結果となったんです。もちろん、32sampleでも音が途切れるようなことはなく、安定して動いてくれるため、結構これは衝撃的です。


ZOOM UAC-2のリアパネル。 クラスコンプライアント切り替えのスイッチもある

入出力は2IN/2OUTですから、最小限のレコーディングに限られますが、このレイテンシーが実現できることだけを目的に買っても損はないのでは……と思いますね。クラスコンプライアントモードも用意されているので、USB 2.0での接続やiPad/iPhoneなどと接続できるのも便利なところです。

なお、ZOOMでは、18IN/20OUT装備のUSB 3.0対応オーディオインターフェイス、UAC-8も発表しているので、マルチポートが必要な人はこれを待ってみるのもいいかもしれません。こちらも、入手でき次第、レポートしてみる予定です。
【価格チェック】
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