「DTMをこれから始めたい」、「久しぶりにDTMを再開してみたい」、「もうひとつDTMシステム一式が欲しい」というときに、何から揃えますか?DAWは絶対に必要だし、オーディオインターフェイスも必須。またレコーディング用にマイクもいるし、モニターヘッドホンも欲しい、エフェクトのプラグインなども揃えていきたいところですよね。そんなDTMに必要なすべてが詰まったパックが、イギリスの老舗プロ機器メーカー、Focusrite(フォーカスライト)から発売されています。
実売20,800円前後(税抜)のScarlett Solo Studio Pack(スカーレット・ソロスタジオパック)と、実売25,000円前後のScarlett Studio(スカーレット・スタジオ)のそれぞれで、特筆すべきはいずれもCubase LEがバンドルされていることと、コンデンサマイクが入っていること。そうカラオケで使うようなダイナミックマイクではなく、本格的なレコーディングに使える高感度なコンデンサマイクが入っているんです。実際どんなDTMパックなのかを紹介してみましょう。
オーディオインターフェイス、コンデンサマイク、ヘッドホン、DAW、プラグインが全部揃ったDTMパッケージ、Scarlett Studio
Scarlett Solo Studio PackとScarlett Studio、どちらもDTM全部入りパックで、違いはオーディオインターフェイスのみです。前者がScarlett Soloというものを同梱しているのに対し、後者はScarlett 2|2というオーディオインターフェイスを同梱。いずれも24bit/96kHz対応の製品で2IN/2OUTという仕様なのですが、Scarlett 2|2が2chのマイク入力やステレオでのライン入力が可能であるのに対し、Scarlett Soloはマイク1系統+ライン/ギター1系統という構成。約4,000円の違いなので、どちらを選ぶべきかは悩ましいところですが、個人的にはScarlett 2|2をお勧めしたいところ。やっぱりキーボードを録るとか、ステレオ出力のエフェクトを録るなど、ステレオでのレコーディングというケースは結構ありますからね。
というわけで、今回はFocusrite製品の国内販売元であるハイ・リゾリューションにお願いして、Scarlett 2|2が入っているScarlett Studioのほうをお借りしてみました。ちょっと大きな箱に入っているのは
・Scarlett 2|2
・CM25コンデンサーマイク
・HP60ヘッドホン
・マイクケーブル(3m)
・Cubase LE 7
・Focusrite Red2 & Red3(エフェクト)
・Focusrite Scarlett plug-ins(エフェクト)
・Bass Station(ソフト音源)
・Loopmastersサンプルコレクション
のそれぞれ(赤字がハード、青字がソフト)。ソフトのほうは、オンラインでシリアルを登録するとダウンロードできる仕組みになっているので、物理的に入っているわけではないけど、これって、超テンコ盛のDTMセットですよね。
2IN/2OUTのUSBオーディオインターフェイスであるScarlett 2|2
ざっと紹介していくと、まずScarlett 2|2は2IN/2OUTのUSBオーディオインターフェイスで、フロントにコンボジャックが2つとヘッドホン出力、リアにTRSのライン出力を持った製品。フロントの2chともにファンタム電源に対応しているのでコンデンサマイクの接続もできるし、ライン入力も可能。さらに、LINE/INSTというスイッチをINSTに切り替えるとハイインピーダンス(Hi-Z)対応になるのでギターやベースと直接接続が可能になります。
リアにはTRSフォンジャックでのライン出力が2ch用意されている
同時に入力できるのはステレオ×1系統かモノラル×2系統ということになりますが、一人で音楽制作をするのであれば、これでたいていは賄えるのではないでしょうか?ギターを弾きながら歌うという場合でも1chにマイク、2chにギターを接続してレコーディングできるわけですよね。
ここでポイントとなるのがCM25というコンデンサマイクが付属していることです。コンデンサマイクって、「すごく高級で扱いが難しいもの」というイメージを持っている人は少なくないと思います。一言でコンデンサマイクといっても、いくつか種類、いろいろなメーカーがあるわけですが、非常に高感度にアコースティック楽器をレコーディングしたり、ボーカルを録ったりするのが「ラージダイアフラム」と呼ばれるタイプのもの。検索してみると、普通安いもので2万円程度、高価なものになると何十万円もするのでなかなか手が出せません。
またコンデンサマイクの構造上、湿気に弱いといわれており、その保存にも細心の注意が必要と言われています。そのため、レコーディングスタジオにはガラスケースの冷蔵庫のようなマイク保存用ボックスが置かれていたりするのですが、そんなものを自宅に置くのは、あまり現実的ではないですね。
2,000円弱で入手した卓上マイクスタンドに取り付けて使ってみた
ところが、このScarlett Studioはコンデンサマイクが付属しているんですから、価格的にみてビックリです。コンデンサマイク1個分の値段に、DTMのハードもソフトも全部揃っているんですから。もちろんコンデンサマイクがすぐに使えるようにマイクスタンドに取り付けるホルダーやケーブルもセットになっています。残念ながらマイクスタンドは入っていませんが、Amazonやサウンドハウスなどのネットショップを見てみると、写真のような卓上マイクスタンドなら2,000円弱で入手できますよ!
実際、これをScarlett 2|2の入力に接続してみると、非常に高感度で音を拾うことができます。だから、ファンの音が大きいPCの前でのレコーディングはお勧めできないし、置時計の秒針の音などもクッキリ入っちゃうので、部屋は静かにしておく必要がありますが、低域から高域まで、非常にクリアにレコーディングすることができます。もちろんダイナミックマイクにはダイナミックマイクの良さがありますが、微細な音までキレイに録るという目的ならコンデンサマイクですよね。
気になるようなら、乾燥剤とともにビニール袋に入れて保管すれば大丈夫!
でも、保存はどうしたらいいのでしょうか……。まあ、そうはいっても何十万円もする高級品ではないので、そこまで気を使わなくてもいいのでは……というのが私の意見。このマイクではないけど、以前かなり安く購入したコンデンサマイクは、とくに何もせずに部屋に放置していますが、4、5年経った今でも、普通に使えますからね。もし気になるのであれば、乾燥剤を入れた上でビニールなどで密閉しておけば十分ではないですかね?
一方、ヘッドホンは結構大きめなサイズのものですが、軽いので装着していても気にならない感じです。音質的には、まあ可もなく、不可もなく……といったところ。あまり過度な期待は禁物ですが、やはりモニターヘッドホンとしての解像度の高さはありますよ。ただ、その分、高域がキツめであることも事実。普通に音楽リスニング用として使ったりすると、ちょっと疲れるかもしれませんね。
強力なDAWであるCubase LE 7がバンドルされている。もちろんWindows、Macで使えるハイブリッド
続いてソフトのほうも見てみましょう。冒頭でも述べたとおり、Scarlett StudioにはCubaseがバンドルされており、WindowsでもMacでも利用できるようになっています。具体的にはダウンロード版のCubase LE 7です。マルチリンガルのCubaseですから、もちろん日本語メニューで使うことができますよ。
Scarlett 2|2のドライバをインストール後、Cubase側でセッティング
ご存知の方も多いと思いますが、FocusriteのScarlettシリーズには、通常、AbletonのLive Liteがバンドルされているのですが、このDTMセットであるScarlett StudioとScarlett Solo Studio Packだけは、LiveではなくCubaseなんですよね。確かに多目的に、またレコーディングメインで使うのであれば、Cubaseのほうが向いていると思うので、Focusriteもそれを狙ったということなんでしょうね。
このCubase LE 7にもサンプラーのHALion Sonic SEが付属しているほか、ディレイやリバーブ、コンプなどのエフェクトも入っているのですが、それだけだとやや物足りないのも事実。でも、これらとは別に強力な音源、エフェクトが入っており、これらがCubaseで使えるようになっているんですね。もちろん、Windows/Macのハイブリッドとなっており、VST2、VST3、AudioUnits、AAX、RTASなどのプラグインフォーマットで利用可能となっています。
Focusriteの定番EQ、Red 2をソフトウェア化したプラグイン
中でも非常に強力なのがRed 2というEQとRed 3というコンプレッサで、いずれも世界中のレコーディングスタジオで使われている定番機材であるのコンプレッサRed 2とEQであるRed 3をそのままソフトウェア化したもの。実機を触る機会というのは、なかなかないものの、これならDAW上でFocusriteの伝統的なサウンドをそのまま再現できるのですから、画期的ですよね。
アナログ風メーターも搭載されたコンプレッサのRed 3。プロ仕様としても十分使えるし、コンプレッサの特性を身につけるのにも最適
ちなみにEQは触れば明らかに音が変わるので、初心者にとっても分かりやすいものですが、音圧を調整するコンプレッサは音色そのものは何も変化しないエフェクトだけに、なかなか難しいのも事実。ただ、Red 2は比較的特性がつかみやすいし、コンデンサマイクとセットで利用し、音圧を調整する勉強用にはもってこいのプラグインです。ぜひ、これで、音圧、音質の調整の仕方を身につけてください。
さらにFocusrite Scarlett plug-insにも別のコンプレッサ、EQが入っているほか、ゲートおよびリバーブが用意されています。リバーブはCubase標準のもの比較しても、気持ちよくかかってくれるので、お勧めですよ。
かなり図太いサウンドが出せるアナログモデリングのシンセサイザプラグイン、Bass Station
そしてNovationの人気アナログシンセサイザであるBass Stationのソフトウェア音源もバンドルされています。Novationは現在Focusriteの一部門となっているシンセサイザメーカーであり、その音質に定評がある会社。ソフトウェア版ではありますが、このBass Stationを使うと、かなり図太いサウンドが飛び出して楽しいですね。これとHALion Sonic SEのドラム音を組み合わせるだけで1日中遊んでいられそうですよ。
1.4GBにもなる膨大なループ素材集、Loopmastersも無料ダウンロードできる
ほかにも1.4GBにもおよぶ膨大なループ素材集もバンドルされているなど、この価格からは信じられないほどの内容となっています。価格的に見れば、コンデンサマイクだけを目的にしても元が取れそうだし、プラグインだけを目的に購入しても元が取れそうという、うれしいコストパフォーマンス。
これからDTMを始めたいという人にはもちろんのことながら、すでに持っている人が予備セットとして購入してもいいし、自前の機材と組み合わせて使ってもよさそうです。この機会に1つ入手してみてはいかがですか?
【価格チェック】
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【製品情報】
Scarlett Studio製品情報
Scarlett Solo Studio Pack製品情報