本日、12月3日、Steinbergから待望のCubaseの新バージョンが発表されました。今回発表されたのはCubase Pro 8(店頭税抜価格55,000円前後)とCubase Artist 8(店頭税抜価格30,000円前後)の2種類で、それぞれCubase 7.5およびCubase Artist 7.5の後継となるバージョンです。
いずれもバージョンアップ版やアップグレード版が日本時間の12月3日21時過ぎより、Steinberg Online Shopでのダウンロード販売がスタートします。新規購入ユーザーのためのパッケージ版は12月下旬より発売される予定になっています。また、前バージョンを10月15日以降にアクティベートした人は無償バージョンアップ対象となっているので、最近購入した人であればCubase 8シリーズを入手することが可能ですね。もし、これから新たにCubaseを導入したいと思っている人で、年末のパッケージ発売まで待てないという人は、すぐにCubase 7.5シリーズを購入してオンラインでのバージョンアップをするという方法もありますよ。
Cubaseの新バージョンCubase 8シリーズが登場。最上位版はCubase Pro8
ここで気になるのは、バージョンアップやアップグレードがいくらになるのかという点だと思います。どのバージョンからのバージョンアップ、アップグレードなのかで価格が異なるため、やや複雑になっているので、詳細は各自調べてみるのがいいと思いますが、Steinberg Online Shopでの主なバージョンアップ価格は以下のようになっています。
Cubase 7.5 | → | Cubase Pro 8 | ¥10,000 |
Cubase 7 | → | Cubase Pro 8 | ¥15,000 |
Cubase 6/6.5 | → | Cubase Pro 8 | ¥20,000 |
Cubase 4/5 | → | Cubase Pro 8 | ¥30,000 |
Cubase Artist 7.5 | → | Cubase Artist 8 | ¥5,000 |
Cubase Artist 7 | → | Cubase Artist 8 | ¥10,000 |
Cubase Artist 6/6.7 | → | Cubase Artist 8 | ¥15,000 |
※価格はSteinberg Online Shopのもので、税抜表示です
ちなみに新規ユーザーがダウンロードで購入ができないのは、起動にSteinbergキー(USBドングル)が必要だからです。またスタインバーグ・バージョンアップ・センターを通じてのバージョンアップやアップグレードをして、モノを配送してもらう方法もあるようですが、やはり価格が若干異なり、送料もかかるようなので、詳細はそれぞれ確認してみてください。
さて、すでにお気づきの通り、最上位版の名称がCubase Pro 8と「Pro」がつく形になったわけですが、それだけにかなり気合の入った機能・性能アップとなっています。実はそのCubase Pro 8を事前に入手して試してみたので、何がどう変わったのか、ファーストインプレッションということで紹介していきましょう。
私はWindows 8.1の環境にインストールして使ったのですが、起動させて「おや?」と感じたのがWindows上での操作性というか動作状況の変更です。パッと見それほど大きなユーザーインターフェイスの変更はないようにも思えたのですが、何か違う…と思ったら、各ウィンドウがそれぞれWindowsの別タスクとして動いているんです。つまりプロジェクトウィンドウ、コンソール、MIDIのキーエディタ、チャンネル設定……とそれぞれが別アプリケーションのように見えるため、画面のようにWindowsのタスク切り替えや[Alt]-[Tab]の操作での切り替えができるようになっています。もちろん、マルチディスプレイ環境で使っていれば、各ディスプレイに表示させる項目を自由自在に設定できるわけですね。また、その画面構成を一発で切り替えることを可能にするワークスペースというメニューも追加されています。
Cubaseの各ウィンドウが1つずつのWindowsのタスクとして見える
では、新機能のほうへ入っていきましょう。Cubase 7ではコードトラックという機能が追加されましたが、Cubase 8ではコード関連がさらに発展しています。まずはコードパッドの追加です。コードパッドというのは、下の画面のようにクリックしたり、画面をタップすることですぐにコードが鳴らせるというもの。またこれは外部入力のMIDIキーボードにも割り振られる形になっており、1オクターブ分もしくは2オクターブ分を普通のノートではなく、コードを発生する形になります。
新たに搭載されたコードパッド機能。鍵盤にコードを割り当てる
どのキーにどのコードを割り振るかは自分で設定でき、テンションの設定なども自由自在。コード専用にする鍵盤の位置なども設定できるのですが、コードパッド機能をオンにしてレコーディングすると1キーを弾くだけで和音で記録されていくと同時にコードトラックにコードを記録していくことも可能になっています。
キーの割り付けはユーザーが細かく自由に設定できるようになっている
このコードをキーに割り付ける機能と関連し、別の鍵盤に別の機能を割り付けることも可能になっています。これによりコードのボイシングやテンションの変更などが鍵盤操作で、できるようになるのですが、それだけでなくコントロールチェンジを割り当てることも可能になっているんです。つまりこれを利用するとキーボードをCubaseのリモコンとして使うことが可能になるんですね。
大きく進化したコードアシスタント機能
またCubase 7にあったコードアシスタントモードもさらに進化しています。まず直前のコードを元にして、次のコードとして何を設定するのがいいのかをアドバイスすることが可能になったのですが、なぜそれがいいのかをグラフィカルに関連性を示してくれる近接コード、五度圏コードパレットというものが追加され、これを見ながら理論的に破たんしないコードを視覚的に選択して設定することができるんですね。多様なコード進行を身に着ける上でも画期的な機能だと思います。
近いコード、関連するコードを理論的に表示させてお勧めを見つけ出す近接コード機能
次に紹介したいのは、個人的にも非常に嬉しいインプレイスレンダリングという機能です。これはソフトウェア音源が設定されているインストゥルメントトラックをオーディオ化するためのもの。「なんだ、それってフリーズ機能じゃないの?」、「そんなの今までもオーディオミックスダウンでできたよ!」という人もいると思います。確かにそうなんですが、でも画期的に便利になってるんですよ。
インプレイスレンダリング機能でインストゥルメントトラックをオーディオ化
基本的には、1つでも複数でもイベントを選択してレンダリングを実行するだけ。これで各インストゥルメントトラックの下にオーディオトラックができるとともに、ここにレンダリング結果がオーディオイベントとして追加される形になるのです。この際、範囲指定などもする必要がないので、操作が楽だというのもあるのですが、フリーズやオーディオミックスダウンとは違う、さまざまなメリットがあるのです。
これの最大の用途はProToolsでのミックスするなど、ほかのDAWへデータを渡す際の活用です。インストゥルメントトラックのままだと、どうしても受け渡しができないので、これまでならオーディオミックスダウンで作業していたものが、簡単になると同時に、指定のフォルダにすべてWAVファイルをまとめて作成できるので、とっても作業が簡単です。
レンダリングする際、エフェクトを加えるかなどの設定が自由にできる
しかもレンダリングする際、エフェクトをかけないドライのデータにするのか、インサーションエフェクトやEQ、コンプなどチャンネル設定を有効にした状態でレンダリングするのか、さらにはセンドエフェクトを通した音にするのか、マスターFXも通した音にするのかの設定が可能になっているのです。またご丁寧に、リバーブの余韻を考えて、イベントが終わったところから何秒分までレンダリングするかの設定までできるのですから、完璧ですよね。
またシステム回りにおいてはASIO-Gurard2という機能が搭載されています。これはオーディオ処理にドロップアウトが発生しないように効率よく先読みく処理を行ってCPUへの負荷を軽減する機能です。Cubase 7.5では未対応だったディスクストリーミングを使用するインストゥルメントやリアルタイム入力のオーディオにも対応し、CPU負荷の高いプロジェクトでもリアルタイムで録音およびモニタリングが可能になっているのは特筆ポイントだと思います。
関連付けたいチャンネルを選んでリンクさせ、各種設定を行う
ミキシング系においてはいくつかの機能が追加され、ProToolsなどとも近い感じに使えるようになってきました。わかりやすいところではリンク機能。リンクさせたいチャンネルを複数選んで、リンクボタンを押せば、リンクが行え、ここに名前を付けることができます。単純な機能ではありますが、これが従来のCubaseでできなかったんですよね。
オートメーション設定をそのままに、グルーピングしたチャンネルをコントロールできるVCAフェーダー
さらにVCAフェーダーなる機能が搭載されています。「VCAってアナログシンセか???」と思ったら、語源は確かにVoltage Controlled Amplifierの略であり、業務用の大型コンソールでは古くから搭載されているものなんだとか。一言で言えば、複数のトラックを一括で管理できるフェーダーのことを意味しています。
これもグループチャンネルなど、BUSを使ってまとめるのと同じようにも思えるのですが、VCAフェーダーを使うとミックス後の修正などで大きな威力を発揮してくれます。具体的にいうと、たとえば、フェーダーのオートメーションを設定していたとしましょう。ここで「ボーカルやコーラスなどの音量を少し下げたい」という場合、BUSを使って行うと、センドエフェクトなどの設定も変わってしまい、音の雰囲気が変わってしまうという問題が生じます。でも、VCAフェーダーを使うと、オートメーションのカーブを損なうことなく、相対的に音量を変化させることができ、音の雰囲気を壊すことなく目的を果たすことができるんですね。
1つのチャンネルを複数へルーティング設定できるダイレクトルーティング機能
同じくルーティングネタでいうと、ダイレクトルーティングという機能も追加されています。これはNuendoから降りてきた機能なのですがトラックの信号を任意のバスに切り替えることができるというもの。まあ、出力先の切り替えは当然従来から普通にできたのですが、ダイレクトルーティングでは、切り替え先を予め複数設定しておくことで、簡単に切り替えができるというだけでなく、これをオートメーションで切り替えまでできるのが面白いところ。アイディア次第で、いろいろな使い方ができそうですよ。
メーター部分にオーディオトラックの波形を表示させる波形メーター
また波形メーターというのが搭載されたのもユニークな点。画面を見ればわかるように、コンソールのメーターブリッジにオーディオトラックの波形をスクロール表示させるというものです。これならプロジェクトウィンドウを表示させなくても、オーディオの位置を確認しながらミックス作業ができますよね。
もちろん新たなプラグインも追加されています。インストゥルメントのほうは今回は増えていないものの、エフェクト回りがかなり強化されています。たとえばベース用のアンプシミュレータであるVST Bass Ampが追加されたのもうれしいし、Quadrafuzz 2、Multiband Comp、Multiband Expander、Multiband Envelope Shaperといったエフェクトも追加されています。
まだ細かくチェックはできていませんが、マルチバンドで細かく音作りができるものが中心で、それぞれ強力な武器になりそうです。
また、ここまでの画面を見て気づいた方も多いと思いますが、プロジェクトウインドウ右側にVSTインストゥルメント・ラックおよびMediaBayを表示できるようになっています。これによってSONARやLive、StudioOneのような1ウィンドウですべてを操作するUIも実現できるようになっているわけです。とくにノートPCなど小さ目な画面での操作の場合には威力を発揮しそうですよね。
プロジェクトウインドウ右側にVSTインストゥルメント・ラックおよびMediaBayを表示できる
ほかにも、山ほど機能追加されているようですが、すべては追い切れていないというのが正直なところ。実は、Cubase 7.5で十分過ぎる機能が装備されているので、ここから先の機能追加というのは、それほど期待していなかったのですが、想像していた以上に便利になっています。Cubase 7やCubase 7.5へのアップデートを行っていなかった人も、Cubase 8にするのは正解だと思いますよ!
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【関連情報】
Cubase 8シリーズ製品情報
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