MIDI over Bluetooth LEというものをご存知ですか?これはBluetooth Low Energy(低消費電力のBluetooth)を使ってMIDIを飛ばすというもので、MIDIケーブルなしに楽器同士、PCやタブレット機器などを接続してしまうという技術です。
先日も記事で紹介したQUICCO SOUNDのmi.1やIK MultimediaのiRig BLUEBOARDなども、そうだし、iOS8が対応し、Macの最新OSであるMac OSX 10.10 Yosemiteでも対応するようになりました。ただ、まだ新しい規格であり、発展途上であるのも事実。私自身もまだしっかり理解できていないのですが、とりあえずちょっと使ってみたので現状での使い方について紹介してみたいと思います。
YosemiteとiOS8間をMIDI over Bluetooth LEで接続してみた
結論からいうと、各社での規格統一が図られていないようで、接続するプロトコルは各社まちまちという状況。その中で、一番、互換性高く活用できるのがApple製品です。そうAppleならMacもあるしiPad、iPhoneなどのiOSデバイスもあるので、これらの間での通信ができるからです。
先日リリースされたMacの新OS、Mac OSX 10.10 Yosemite
そのMIDI over Bluetooth LEにAppleが対応したのはMac OSXで最新のMac OSX 10.10 Yosemiteから、またiOSでも最新のiOS8からです。これらの間ではBluetoothを使ってMIDI接続ができるんですね。
MIDIスタジオには青いBluetoothというアイコンが追加されている
というわけでさっそく試してみました。まずMac OSXのAudio MIDI設定のMIDIスタジオを開いてみると、従来にはなかったBluetoothというものが存在しています。これをダブルクリックして開くと、Bluetooth構成という画面が開くんですね。これを使って接続を行うのです。
これを開くと、Bluetooth構成という画面が開く。この画面の上と下で意味合いが違ってくる
ここで重要になるのは画面上半分と下半分では意味が異なるということ。そうMIDI over Bluetooth LEに限らずBluetoothではペアリングというものが必要となりますが、この際、親となるマスターと、子となるスレーブが存在し、親と子が接続するわけですね。このBluetooth構成の画面においては、その双方の役割を果たすことが可能になっているのです。
まず親となる場合は、「アドバタイズ」(宣伝するの意味)というボタンをクリックすると「こちらが親だよ!」という信号を発信するようになります。このとき、iPadやiPhoneでMIDI over Bluetoothのスレーブとして使えるアプリを起動すると、親を見つけることができ、ここに接続するとMIDI接続が確立されるのです。
反対にiOS側で親となるアプリを起動すると、YosemiteのBluetooth構成の画面で下半分の「MIDI Bluetoothデバイスをスキャン中」というところに、現れるので、これに接続するとMIDIでの通信が可能になるわけです。
最新版のGarageBandの設定画面にはBluetooth MIDIデバイスが 追加されている
では、そのiOSアプリとしてどんなものがあるのでしょうか?まずはGarageBandが挙げられます。このGarageBandは設定メニューにある「Bluetooth MIDIデバイス」を選ぶと接続先を見つけることができるようになっています。同様にbithmarkさんのサンプラーシンセサイザ、bs-16iでも子としての接続が可能になっています。
bs-16iでもBluetooth MIDI Deviceというメニューが追加され、Macと接続できるようになった
一方、親となるアプリも存在していました。SwoopsterというPad用のエフェクト・アプリがそれ。BLUETOOTH MIDI SETUPという画面において「Advertise MIDI Service」というのをオンにすると、Yosemite側から見つけることが可能で、接続できるんですね。
SwoopsterにはBluetoothの親として使える機能が搭載されている
もちろん、このSwoopsterを使って、iOSを親にした場合、もう一段iOS8の機材があれば、それを接続することも可能。実際、iPad Air2とiPhone 6 plusを接続することができました。また手元にYosemiteをインストールしたMacが2台はなかったので試すことはできませんでしたが、Yosemite同士の接続も可能なはずです。
iPadとの接続が確立されると、MIDIスタジオにはiPadと書かれたBluetoothのアイコンが追加される
ここで重要になるのはMac OSX、iOSというOSレベルでの接続である、という点です。確かに接続するためのツールとしてGarageBandやbs-16i、Swoopsterを使いましたが、これでの接続が確立してしまえば、Cubasisだろうと、iMiniだろうとやりとりできちゃうんですよね。とはいえ接続したアプリはバックグラウンドで動いている必要はあるので、アプリ自体を落としてしまうと接続は切れてしまいます。
試してみたところ微妙ではあるけれどレイテンシーはありそうですね。20~30msec程度という感じでしょうか……。おそらくBluetoothそのものというよりも、iOSのCoreMIDIによるものが大きいのではないかと思っています。
ところで、もう一つ試してみたのがQUICCO SOUND(キッコサウンド)のmi.1です。mi.1の詳細は以前の記事「元ヤマハ技術者達が開発する世界初の電源不要ワイヤレスMIDI、mi.1」をご覧いただきたのですが、私の手元にも以前にクラウドファンディングで購入したものが1ヶ月ほど前に届いていました。ただ、肝心のアプリが登場していなかったので、なかなか使うことができなかったのですが、先日、ようやく対応するiOSアプリも登場したのでさっそく使ってみました。
MIDIキーボードなどのMIDI INとMIDI OUTにmi.1を接続することでMIDI信号をBluetoothで飛ばすことが可能になる
このアプリを使えば接続自体は至って簡単。やはり接続が確立してしまえば、MIDI機器側とiOS上のアプリ間を自由自在にMIDI信号を飛ばすことが可能になります。リアル楽器とワイヤレスで接続できるというのは、やっぱり快適ですね。
ただし、Appleとは異なるプロトコルを使っているため、同じBluetooth LEを使っているのに、直接GarageBandなどと接続することはできないんですね……。何か方法はないのだろうか?と思い、QUICCO SOUNDの社長、廣井真さんに聞いてみたところ、「現在、mi.1でもApple製品に接続できるようファームウェアの開発をしているところです」との話。別にAppleのプロトコルが世界標準になっているというわけではないのですが、MacもiPad、iPhoneもApple規格なので、長いものには巻かれろ…ということなのでしょうね。
ちなみに、そのmi.1は11月14日よりAmazonでの一般販売も4,536円でスタートしましたので、誰でもすぐに入手することが可能になっています。今後、mi.1の新しいファームウェアやアプリが登場したら、ぜひレポートしてみたいと思っていますが、これからはMIDIケーブルを使わないMIDI接続というのが広まっていきそうですね。
【関連情報】
QUICCO SOUNDホームページ