NIからKOMPLETE 10と専用のUSB-MIDIキーボード、KOMPLETE KONTROL Sシリーズが登場

すでにネットにリーク記事などが出ていたのでご存じの方も少なくないと思いますが、9月2日、Native InstrumentsからKOMPLETEの新バージョン、KOMPLETE 10(標準価格59,800円、アップデート価格22,800円)、上位版のKOMPLETE 10 ULTIMATE(標準価格119,800円、アップデート価格45,800円)が登場するとともに、完全な新製品としてKOMPLETE KONTROL S-SERIESなるNI初のUSB-MIDIキーボードが発表されました。

いずれも国内での発売は10月1日が予定されているのですが、とくに気になるのが、KOMPLETE KONTROL S-SERIESというのが何モノなのか、という点です。61鍵のKOMPLETE KONTROL S61(標準価格79,800円)、49鍵のKOMPLETE KONTROL S49(標準価格69,800円)、25鍵のKOMPLETE KONTROL S25(標準価格59,800円)の3種類が登場し、いずれもハードウェア単体の製品であって、KOMPLETE自体とのバンドルパックは存在しません。そのKOMPLETE KONTROL S-SERIESを発表前にこっそりと、実物を見てきたので、紹介してみましょう。


KOMPLETE KONTROL S61とS25



KOMPLETEのハード版が出るらしい……」そんな噂を春ごろから聞いてはいたので、それがどんなものなのか気になっていました。「コンピュータを内蔵した機材なんだろうか?」、「KONTAKTが入ったキーボードとか、BATTERYが入ったドラムマシンとかが出るのでは?」なんて、いろいろ想像していたのですが、結果はUSB-MIDIキーボードでした。

49鍵盤のKOMPLETE KONTROL S49
先に写真を見たので、正直なところ「な~んだ」と思ったのですが、やっぱりタダのキーボードではありませんでした。かなりトリッキーな仕掛けのされたキーボードで、まさにKOMPLETE専用のキーボード。KOMPLETEを入れたMac、Windowsと接続すると、まさに有機的に接続され、統合された専用機器になる仕掛けになっているのです。

どんな仕掛けなのか、これからいくつかのポイントを紹介しますが、その前に気になるのがこの価格ではないでしょうか?先日「DTM初心者のためのMIDIキーボード選び 2014」という記事を書きましたが、そこにピックアップしたDTM用の主要MIDIキーボードは高いものでも4万円程度。安いものならKORGのnanoKEY2のように3,000円程度で購入できてしまうものがあるのに、25鍵で59,800円で、61鍵になると79,800円というのは、ずいぶん高いなぁ……というのが正直な印象。

この点についてNative Instrumentsの担当者に聞いたところ、「鍵盤は高品位なことで世界的にも定評のあるイタリアのFatar社製のキーボードを採用しているために、この価格になっています」とのこと。確かに弾いてみると、すごくタッチがしっかりした鍵盤であり、キーボーディストにとっては満足感の高そうなものではありました。Fartar社のキーボードを搭載したものとしては、Studiologicの製品やNord、access、Novationなど、主にヨーロッパメーカーのシンセサイザがあり、実績のある鍵盤であることは確かなようです。


LEDで光る鍵盤が光る 

実際に電源を入れてもらって、最初に驚いたのは、鍵盤の付け根部分(という言い方でいいんでしょうか…)が青く光ること。「これってカシオのキーボードみたいに、どこを抑えればいいか教えてくれる機能かな?」と思ったら、全然違いました。Light Guideというのだそうですが、もっと、KOMPLETEと連携できるようになっているんですね。

その一つの例が以下のビデオです。

音階によって色分けされていますが、赤いところを押すと、ドラムのフレーズが鳴り、オレンジはパーカッションの各音が1つずつなる……といった具合に、役割に応じて色が変わるようになっているんです。つまり、どこでスプリットされているのかが色で表示されるというわけですね。

またスケールを選択すると、白鍵を適当に弾くだけで、それっぽいフレーズになるようにするといったことができます。

これを見て気づいた方もいると思いますが、8つあるノブの下にそれぞれ文字を表示できるディスプレイがあります。このビデオではスケール関連の表示がされていましたが、アクティブになっているKOMPLETE側の設定にマッチした形でノブの表示が変わるので、各ノブが何に割り当てられているのか一目で確認できるのも大きなポイントです。


ノブの下のディスプレイにその時に使っている機能が表示される 

またボタン一つの操作でアルペジオの演奏ができたり、単鍵盤操作によるコード演奏、さらには全キーボードレンジに各スケールをマッピングすることができるなど、キーボードの演奏がまったくできない人でも、それっぽい演奏ができてしまうのも大きなポイントです。


本体のトランスポートボタンで各種操作もできる 

もう一つ面白かったのが左側のモジュレーションホイールのところ。実際にはホイールではなく、タッチコントロールというもので、タッチセンサーでピッチ操作、モジュレーション操作ができるのですが、モジュレーション側にLEDがついているんです。何をするのかと思ったら、タッチセンサーに勢いをつけて触ると、それに合わせてLEDが動くだけでなく、そのままボールのようにバウンドするのです。あとは手を放してもずっと動いているんですよね。ある意味、音源側とは独立したLFOのように使うこともできるわけです。

ちなみに、こうしたコントロール情報のPCとのやりとりはUSB経由で行われているのですが、すべてがMIDIというわけではないそうです。ディスプレイへの表示やLight GuideのコントロールなどMIDIに割り当てられていない情報も多いため、独自のNHLプロトコルなるものでやりとりしているそうです。そのため、非常に高速な処理ができているんですね。NHLプロトコル自体は、今回初めて登場したというわけではなく、MACHINEなどでも使われていたそうですが、KOMPLETEとうまく融合しているのは、この通信手段を持っているからなんですね。

もっともKOMPLETE専用とはいえ、普通にDAWとの連携もできるようで、まだ最終調整中ですが、CubaseやLiveなどのモードもプリセットとして用意されるようですね。


KOMPLETE 10のパッケージ

ちなみに、このキーボードであるKOMPLETE KONTROL S-SERIESが連携できるのは今回発売されたKOMPLETE 10だけでなく、KOMPLETE 9でもOKなのだとか。KOMPLETE 9用にもアップデータが登場し、それをインストールすると、KOMPLETE KONTROL S-SERIESと連携するためのKOMPLETE KONTROLという機能が入ってきます。


PC側とはUSBで接続する。電源はバスパワー供給ではなく、別途ACアダプタを使う 

このKOMPLETE KONTROLはKOMPLETEを統合するソフトのようなもので、この上でKONTAKTもREAKTORもMASSIVEもBATTRYもすべての音源が動くため、KOMPLETEの母艦のようなもの。スタンドアロンで動かせば、シンセを使うためのホストアプリのようにしても使えるし、これ自体がプラグインのインストゥルメントとして機能するので、DAW側からはKOMPLETE KONTROLさえ立ち上げれば、すべての音源がつけるという便利なものです。

この上で古いREAKTORのソフトを動かしても、しっかりKOMPLETE KONTROL S-SERIESと連携してくれるので、かなり使い勝手はよさそうですね。


超マニアックなシンセ、KONTOUR 

ちなみに、KOMPLETE 10のほうには、ROUNDS、KONTOUR、POLYPLEXをはじめ、かなりユニークな新音源が10種類追加されており、KOMPLETE 10 ULTIMATEのほうにも15種類が追加されています。今回はこれら新音源についての解説は見送りますが、また機会があれば、紹介してみたいと思います。

【製品情報】
KOMPLETE KONTROL S-SERIES製品情報
KOMPLETE 10製品情報
KOMPLETE 10 ULTIMATE製品情報

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