楽器の音がする超ミニミニスピーカー、Vesta Audio VMA-10A

最近ではDJ機器メーカーとしての知名度が高いVESTAX(ベスタクス)。個人的には80年代に同社が出していたMTRの印象が強いのですが、楽器用プリアンプ、コンプリミッター、カラオケ用ボイスチェンジャー、デジタルスペースコマンダー、オーディオインターフェイス……と、VESTAXはさまざまな楽器関連製品を世に送り出してきた日本のメーカーです。

そのVESTAX、今年で創業37年になるとのことですが、このタイミングで、またちょっとユニークな製品を出してきました。あえてVESTAXブランドではなく、Vesta Audioという新ブランドを打ち立てて、小さな小さなスピーカー&アンプを発売したのです。「VMA-10A」というのがそれ。遊び心たっぷりの製品でありつつ、かなりガツンとくる楽器的なサウンドが飛び出してきます。実際に試すとともに、開発者でもあるベスタクスの社長にも話を伺ってみました。


とっても小さいスピーカーとアンプのセット、Vesta Audio VMA-10A



ミュージシャン・アーティストに一番近いオーディオ」。そんなコンセプトで立ち上げたという「Vesta Audio」ブランド。このブランドの製品はいわゆるオーディオ機器ではなく、「ツール=楽器」だとのことですが、一般的なオーディオ機器との違いは「簡単に壊れない」、「優しく気持ちいい音だけでなく、強い音やきつい音そして嫌な音までもが、プレーヤーの意図した通りでキチンと出る」という点なのだとか。

でも、この小さなスピーカー、VMA-10Aを鳴らしてみて、まず驚いたのが、ボーディーの小ささからは想像できないパワフルな音が飛び出すことです。とりあえず、以下のビデオをご覧ください。

音の大きさをビデオで伝えるのって、なかなか難しいとは思ったのですが、雰囲気は伝わるのではないでしょうか?結構キレイな音で録れてしまったので、まるでBGMとしてWAVファイルを入れる編集をしたようにも見えますが、VMA-10Aから出ている音をそのまま録音したものです。ちなみに録画・録音機材としては、先日記事で紹介したZOOMのQ4を用い、Cubase 7.5からQUAD-CAPTURE経由でVMA-10Aで再生したものを録っています。曲はニコニコ生放送番組「DTMステーションPlus!」のエンディングテーマ「心をこめて♪」feat.結月ゆかり(by AKI Oxford)の生データをCubaseから再生させているものです。

音はAAC-192kbpsでレコーディングしていますが、コンプをかけるといった処理は一切しておらず、音の編集作業としては最後にフェードアウトさせただけ。AACだからか、Q4のマイクが小さいからか、YouTubeの音を聴くと実機の音よりも高域がキツ目に聴こえますが、実際にはもっとパンチの効いたガツンとした音になっています。


てのひらサイズのスピーカーユニットには直径40mmのフルレンジスピーカーが搭載されている

ビデオ内でも、少し説明していますが、VMA-10Aは出力7Wで有効径40mmのフルレンジスピーカー2つという構成で、真ん中にあるのがアンプです。このアンプ部分、単なるアンプに留まらず、Bluetoothによるオーディオ接続機能があるため、iPhoneやiPad、Android各機種、そしてPCともワイヤレスで接続できるんですね。もちろん、ワイヤードな接続も可能で、この場合はステレオミニでの接続となっています。


リアにあるボタンでBluetoothデバイスとのペアリングができる 

先ほどのビデオの中で、スピーカーを持ち上げるテストをしたのは、机の共振の有無を見るためです。以前、海外メーカーの小型スピーカーで大きい音がするけれど、持ち上げた途端にショボイ音になってしまうものがあったので、それと比較した実験。もちろん、机の共振に頼るのも一つの手ではありますが、これだと机によって音は大きく変わるし、机の上に置かれているものによっては、ビビってしまうこともよくありますから……。でも、VMA-10Aの場合、音を聴いているだけでは、持ち上げたかどうかの判別もつかないですよね。

でも、どうしてこんな小さなボディーから、これだけパワフルな音が出るのでしょうか?ベスタクスの社長、中間俊秀さんに聞いてみました。

ベスタクス株式会社、代表取締役の中間秀さん

スピーカーの原理原則に基づいて、真面目に作ろうぜ!って設計、開発しただけですよ。空気が漏れないようにしようと、とにかくバッフル板をきっちり作り、気密性を上げ、エンクロージャー、ダクトもしっかり計算して作っちゃおう、と。そうすれば、こういうスピーカーができることは分かってました

とのこと。構想は以前からあったけれど、実現できなかったのには訳があるんだとか。

このスピーカーを実現させるための木材をずっと探していたんです。それがないと、空気感、臨場感を出せる楽器的なスピーカーができない。キツイ音、強い音がガッと出るものをやりたいと思っていたのでね。それがようやく見つかったんですよ。岐阜県の恵那の工場で保管しているのを見つけてね。数十年、この工場で眠っていてしっかりと乾燥したウォールナットの木材。現物を見に行って、その場で全部くださいって言っちゃいましたよ(笑)」と中間さん。

そうしてできたのが、このVMA-10A。確かに小さいけどガッチリしたボディーでカッコイイですよね。バッフル板も2mm厚の鉄板でスピーカーを固定しているのも音作りに効いているそうです。


奥飛騨の無垢のウォールナット木材を使ったVMA-10A。アンプは縦置きも可能

ただ、恵那の木材の在庫で作れるのはせいぜい2000台。これだけ目の詰まったウォルナットはそうそうないですからね。なくなったら、次はどうしようか……と」(中間さん)


妙に大きく感じられる接続端子。本体にガッチリと固定されている

リアを見てみて、ちょっと可笑しいのが、アンプとスピーカーの接続端子。バランス的に妙にデカいんですよね。そう、普通の大きいスピーカー、アンプに使う端子をVMA-10A本体にガッチリと固定しているので、妙に見えるけど、その本気度は十分に感じられます。

シールを用いてALTEC LANSING 620A Monitor風に仕上げているのが楽しいところ

その一方で、もっと変なのがフロント。ここまで作り込んでいるのに、スピーカーの回りのネジやダクト部分の回りのデザインがシールなんですよ!まさに遊び心たっぷり。これによって、見た目が70年代のスピーカーであるALTEC LANSINGのモニター風になっているんですよね。


クラシカルな デザインでアンプ、スピーカーも内蔵したレコードプレイヤー、ACT-T100

ここは遊び心ですね。半分ジョークでもあるから、VESTAXブランドではなくVesta Audioにしてるんですよ。このVesta Audioとしては、このスピーカーのほかにもレコードプレイヤーも2種類用意しています。ここにはオリジナル手巻コイルの日本製ACサーボモーターを搭載するなど、当社の資産・ノウハウを集結させた新シリーズとしています

とのことですから、いろいろ楽しみですよね。気になるVMA-10Aの価格は29,800円(税込)。それ相当のサウンドは十分に味わえる楽しい楽器サウンドのスピーカーだと思います。
【価格チェック】
◎Amazon ⇒ VMA-10A

【製品情報】

VMA-10A製品情報

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