高級オーディオIFと普及版で音に違いはあるか、UH-7000でチェック

楽器でもオーディオでもそうですが、音モノを選ぶ際に難しいのは、スペックがすべてではないというところ。スペックには表れにくい音の違いがあるからです。その最たるものが、オーディオインターフェイスではないでしょうか?たとえば「24bit/192kHz対応、4IN/4OUT、マイクプリ×2、リバーブ搭載」といったスペックが書かれていても製品によって価格はまちまちで、何倍もの価格差があることもあります。

価格が高ければ音がいいというほど単純ではありませんが、機能は少なくても、高級機器として売り出しているものもあります。最近でいえばTASCAMのUH-7000がいい例です。6IN/4OUT(または4IN/6OUT)でエフェクト搭載というハイスペックながら実売価格18,000円程度と低価格のベストセラー製品、US-366がある中、4IN/4OUTで66,000円程度という製品を自ら出してきたのですから、気になるところ。実際に音質に違いがあるのでしょうか?

TASCAMのUH-7000(下)とUS-366(上)で音質比較に挑戦

私が最初にUH-7000を使ったのは4月上旬。AV Watchの記事「TASCAMの独立マイクプリ搭載USBオーディオ上位機、UH-7000をチェック」のために、TASCAMにお願いして、発売されたばかりの製品を1つ借りて、いろいろと試してみたのです。詳細については、そちらの記事を見てもらうのがいいのですが、UH-7000について、機械的なテストを行いながらレビューをしました。


ガッチリしたボディーのUH-7000は贅沢な設計のアナログ回路を採用している 

簡単に紹介すると、UH-7000はアルミボディーで2.2kgとズッシリとした機材で、昨年リリースされたUS-366と並べてみてもずいぶんと大きいことがわかります。電源もACからの供給であり、取り扱いが簡単なUSB電源供給ではありません。


UH-7000のリアパネル。基本はXLRのキャノン接続という仕様で、デジタルもAES/EBUのみ。

スペック的には4IN/4OUT。そのうち2IN/2OUTはデジタルのAES/EBUであるためという割り切った仕様であるため、多くの一般DTMユーザーにとっては、実質的にアナログ2IN/2OUTのオーディオインターフェイスといってもいいのかもしれません。

デジタル的な測定結果はまずまずといったところでしたが、TASCAMがUH-7000で訴えているのは、マイクプリアンプの音の良さとアナログオーディオ入力回路における高音質性であり、なかなか測定結果で見れるものではありません。


六本木のスタジオでDTMステーションPlus!の番組企画としてUH-7000とUS-366の録り比べを行った 

やはり、これは実際にレコーディングを行って聴き比べたら結構面白いのではと思い、先日、東京・六本木にある業務用のレコーディングスタジオを使って、公開テストを行ってみたのです。そう、ご存じの方も多いと思いますが、私と作曲家の多田彰文さんの二人で、現在「DTMステーションPlus!」というニコニコ生放送の番組を隔週火曜日の21時から配信しています。そのDTMステーションPlus!の6月3日の放送でピアノ、ボーカル、ドラムの録り比べを行ったのです。

ここで比較したのは、UH-7000と同じTASCAMのUS-366。いずれもマイクプリアンプを搭載しているし、+48Vのファンタム電源も搭載しており、条件は揃っています。そこで、演奏する楽器、マイク、DAWは同じまま、オーディオインターフェイスだけを差し替えてレコーディングした際、音に違いが出るかをテストしてみたのです。


Neumann U87、2本をYAMAHAコンサートグランドにセッティング 

もう少し具体的にいうと、マイクは購入当時1本50万円程度したというNeumann(ノイマン)のU87を2本用意。これをYAMAHAのコンサートグランド C5にセッティングして、UH-7000、US-366と順に差し替えた上で、多田さんに同じように弾いてもらいます。サンプリングレートは44.1kHz、分解能は24bitです。


UH-7000でのレコーディングが終わったらUS-366へとマイク端子の抜き差しを行った

またあらかじめUH-7000とUS-366はUSBでWindowsマシンに接続しておき、SONAR X3 PRODUCERでオーディオインターフェイスを切り替えながら1トラック目にUH-7000、2トラック目にUS-366とレコーディングしていきました。その結果が以下のビデオです。

この違い、お分かりになったでしょうか?スタジオでモニターしていたとき、かなり大きな差があることを確認できました。そうUH-7000で録った音は高域までしっかり捉えていて、抜けのいいきらびやかなサウンドであったのに対し、US-366のほうは高域がやや弱く、柔らかい感じの音になっていたのです。


多田さんにはほぼ同じニュアンスで2回弾いてもらった 

どっちが好みかというのは人それぞれだと思いますが、明らかにUH-7000のほうが原音に近い感じだったんですよね。放送前に一度リハーサルをしてみたところ、音の違いは確かめられたのですが、微妙なニュアンスの違いであり、それがニコニコ生放送の視聴者のみなさんにちゃんと伝わるかは分からないな……と不安に思っていました。


SONARの設定画面でUH-7000とUS-366を切り替えることで入力先を選ぶようにした 

ところが、いざ放送を行ってみると、即座に「US-366の音はやわらかい」、「UH-7000のほうが上までしっかり出てる感じがする」……といった的確な感想コメントがどんどんと寄せられてきたのです。この反応には正直なところ驚きました。


ニコ生では、音の違いについて、即材に多くの人からの反応が来た

DTMステーションPlus!の配信の設定ではオーディオのストリーミングをMP3の128kbpsに設定しているのですが、それでも十分に伝わる差が出るんですね。

ここから先は、完全に「ぶっつけ本番」でテストを続行。たまたまスタジオに遊びに来てくれていたボーカリストの小川千春さんに、急きょ番組に出てもらい、歌ってもらったのです。


ボーカリストの小川千春に急に出演をお願いし、歌ってもらった 

これもマイクはピアノにセッティングしていたU87の1本をボーカル用にセッティングし直し、できるだけ同じようにUH-7000用とUS-366用で2回歌ってもらったのが以下のビデオです。

結構、声でも違いが分かりますよね。さらに、多田さんが自宅から持ってきたスネアドラムでも録音してみました。ダイナミックマイクに接続しなおして録ろうかとも思ったのですが、設定を変えて失敗するリスクを減らすため、オフマイク(ドラム本体から少し離れたところでの設定)でレコーディングした結果がこちらです。

やはり高域の音の響きに違いが出ますよね。ちなみに、ここで掲載したビデオはSONAR X3 PRODUCERでレコーディングした結果をWAVで書き出して、つなぎ合わせたものです。それに対し、ニコニコ生放送で行ったのは、それぞれの結果をUH-7000で出力し、それをミキサーを経由してエンコードしたものです。


上記のYouTubeサウンドはSONARでのレコーディング結果をWAV書き出しをして作成した 

なお、UH-7000もUS-366も、内蔵するDSPにより、ほぼ同等のエフェクトをかけることが可能です。具体的にはリバーブ、コンプレッサ、ノイズサプレッサ、ディエッサ、エキサイター、EQ、リミッタ・ローカットのそれぞれ。結構使えるエフェクトが揃っていますが、ここではあえて、エフェクトはすべてオフの設定で行っています。


UH-7000にはさまざまなエフェクトが搭載されているが、ここではあえてオフでレコーディングしている

以上、UH-7000とUS-366のレコーディングの音の違いについてみてきましたが、いかがだったでしょうか?US-366、個人的にはとてもいいオーディオインターフェイスだと思っていましたが、UH-7000はさらにその上を行くものという感じですね。やはり値段の差、アナログ回路の差というのは結構あるものなんだと改めて実感したところです。

UH-7000に興味は持ったけれど、やっぱり音を自分の耳で確認してみたいという人は、ちょうど「UH-7000モニターキャンペーン」という貸出サービスが6月18日から始まったようなので、これを利用してみるのもよさそうですよ。

機会があれば、またこうしたDTMステーションPlus!と連携させた実演、実験などを行っていこうと思っています。

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【関連情報】
UH-7000製品情報
US-366製品情報
UH-7000モニターキャンペーンについて

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