DAWの新製品ニュースといえば、新バージョンの登場による機能追加というものばかりですが、久しぶりにまったくの新製品が登場します。ドイツ・ベルリンにあるBitwig社が開発したソフト、Bitwig Studioです。これまでもニュースサイトのICONなどで何度も取り上げられてきているので、「なんとなく見たことある」、「期待していた」、「実はβテスターに参加していた」……なんて人もいるかもしれません。
ずいぶん前から発表されていたものの、なかなか登場しなかったので、痺れを切らせていた人も少なくないと思いますが、ついにカウントダウンに入り、1月23日からアメリカで開催されるNAMM Show 2014後に発売されることが確定した模様です。WindowsにもMacにも対応したDAWで、国内ではディリゲントが発売元となり、「5万円以下らしい」という情報はキャッチしましたが、正式な価格はNAMMで発表されるようです。では、そのBitwig StudioとはどんなDAWなのか、その概要について紹介してみたいと思います。
※【1月23日追記】
価格はオープンで実売想定価格が41,000円前後、3月26日発売と発表されました。
※【2月14日追記】
クロスグレード版の予約販売がスタートしました。初回限定300本に関しては28,700円(税抜き)だそうです。
ついに発売が決まった新しいDAW、Bitwig Studio
このBitwig Studioの特徴を一言で表すとしたら「リアルタイムのパフォーマンスプレイを得意としたDAW」といったところでしょう。その意味ではAbleton Liveとも近いコンセプトです。というのも、Bitwigの開発メンバーのほぼ全員が元Abletonの社員であり、まさにAbletonからのスピンアウト組が開発した新しいDAWであるため、やはりLiveの影響は非常に大きく受けているのでしょう。
デザインの雰囲気は違いますが、Liveをご存じの方なら、なんとなくイメージが近いと感じられるのではないでしょうか……。
もちろん、これはDAWですから、音楽制作に関わる機能は一通り何でも備えています。無制限に使えるトラックは、MIDIでもオーディオでも同じようにレコーディングすることができます。レコーディング後は、MIDIトラック、オーディオトラックとして編集していくわけですが、MIDIとオーディオの両方を同時に扱えるハイブリッド・トラックというものがあり、非常にフレキシブルな編集作業ができるのもBitwig Studioの特徴です。
DAWとしてオーディオやMIDIのレコーディング、編集が可能
ミキサーとともに整列しているクリップ・ランチャーはLiveでいうところのセッションビューに近いもので、ライブパフォーマンスに最適な画面です。ここでDJプレイなども行っていくことができるし、ここでのパフォーマンス内容を記録していくことで、偶発的な音楽制作も可能になってきます。
リアルタイムなライブパフォーマンスもBitwig Studioが得意とするところ
オーディオクリップは、複数のオーディオイベントを含むことができ、タイムストレッチやBPM検出が可能となっています。このビデオを見ても分かる通り、自動的にクリップを分割したりや再アレンジができ、ヒストグラムによるクリップ編集が可能となっています。
Bitwig Studioのオーディオクリップ機能
このオーディオクリップに対し、インストゥルメントクリップというものも、ここではソフトシンセ=インストゥルメントを利用しながら、非常に自由度の高い制作が可能になります。割り当て可能なノートエクスプレッションを使ったサウンドクリエイトやヒストグラムを使ったノートエディット、さらにはノートをドラッグするだけで新たなクリップを作成できるなど……、工夫次第でさまざまな使い方ができそうです。
自由度の高いインストゥルメントクリップ機能
またビデオを見ていて、非常に興味深かったのが、前述のとおり、MIDIとオーディオを同一のトラックに置けるハイブリッド・トラックが存在することで、トラックないでMIDIをオーディオにバウンスすることができ、それをスライスして活用できるなど、かなり不思議な使い方ができる点。これを見ていても、まさに何でもありなDAWという気がします。
もちろんVSTプラグインを利用することも可能です(MacにおけるAudioUnitsに関しては、最初のバージョンであるBitwig Studio 1.0では非対応)。32bit版も64bit版も同時に利用できるのですが、なかなか賢いのがプラグイン・クラッシュ・プロテクションというシステム。DAWを使っていて、プラグインのシンセがクラッシュして、曲がストップしてしまったり、場合によってはDAW自体が落ちてしまうなんてことがありますが、Bitwig Studioに搭載されているプラグイン・クラッシュ・プロテクションというシステムにより、もし動作しているプラグインがクラッシュしても、そのまま曲の演奏を続けることができ、途中でプラグインを復帰させる……といったことも可能になっているのです。
このようにDAWとしての機能は、一通り備えつつ、Bitwig Studioならではという機能もいろいろあるので、すでにLiveやCubase、Logic、SONAR……といったDAWを使っているユーザーが、新たな発想のためにBitwig Studioを使ってみるというのも手ですし、以前にDAWを使ったけれど、イマイチしっくりと来なくて辞めてしまったという人が、再度チャレンジしてみるのにもいいように思います。
一方、個人的に非常に気になっているのは、このBitwig StudioがWindows、Macに対応しているのと同時にLinuxにも対応しているという点。具体的なディストリビューションとしてはUbuntu 12.04への対応がアナウンスされているので、Ubuntuで試してみるというのも面白そうです。
WindowsやMacと同感覚で使える無料のLinux OS、Ubuntu。このUbuntu上でもBitwig Studioが駆動する
Ubuntu StudioにはArdourというDAWがバンドルされているものの、市販の本格的なDAWが登場するのはBitwig Studioが初だと思います。
※ベータ版ではありますが、すでにTracktion4がUbuntuに対応していました。
実際にWindowsやMac上で使うのと違いがあるのかなど、気になる点もありますが、使えなくなったWindows XPマシンにUbuntuをインストールして、Bitwig Studio専用機にしてしまう、なんて手もありそうですね。
さすがにUbuntuに対してディリゲントでは非サポートとなるそうですが、Bitwig本社側はメールなどで対応してくれるそうですよ!
DTMユーザーとしては、他のDAWから安く乗り換えができるクロスグレードがあると、嬉しいのですが、その点についてディリゲントに問い合わせたところ、『詳細はBitwigと協議中で、NAMMには発表できるのではと思います』とのことでした。
Bitwig Studioに関する新しい情報は、ディリゲントのサイト、およびBitwigの日本語サイトに、どんどんUPされてきているので、気になる人はチェックしてみてはいかがでしょうか?
【関連サイト】
ディリゲントのBitwig製品情報
Bitwigの日本語サイト
クロスグレード版販売ページ