iPhone 5sやiPhone 5c、iOS 7の登場、またついにドコモがiPhoneの扱いを表明するなど、iPhone周辺が騒がしくなっていますが、そんな中、本日11日、ヤマハからiPhone用の音ゲーがリリースされました。ボカロダマという無料アプリで、ヤマハ初となるゲームとのことですが、名前からも想像できるとおり、ここにはVOCALOIDエンジンが搭載されています。
しかも、このエンジンは新開発のもので、低レイテンシーなリアルタイム発音ができるようになっているのが大きなポイント。また、これまでVOCALOID自体は、基本的に音楽制作をする人のためのソフトでしたが、ボカロダマはゲームという体裁をとったことで、制作や演奏が苦手、興味がないという人でもVOCALOIDを楽しめるユニークなアプリなのです。
ご存じのとおり、iOS上で動作するVOCALOIDは今回が初というわけではありません。iPadとiPhone両対応で女性ボイスのVOCALOID EditorであるiVOCALOID VY1、男性ボイスのiVOCALOID VY2、よりカワイイ声で歌ってくれるiVOCALOID 蒼姫ラピスの3つがヤマハからリリースされていました。
さらに歌わせるというよりも1ワードを好きなイントネーションで喋らせるiPhoneアプリ、VocaloWitter、VocaloWitter 蒼姫ラピスのそれぞれも存在していました。
とくにiVOCALOIDはタッチパネルで入力できることから、「PC版より使いやすい!」といった声もある人気アプリでしたが、最近になってこれらiOS版のVOCALOIDが新たな展開を始めています。そうゲームの世界で使われるようになってきたのです。
口火を切ったのはセガ。8月27日に無料でリリースされた「うた詠み575」は五七五の言葉を入力すると、ピアノロール画面が現れて、その言葉を歌ってくれるというユニークなゲーム。使っていくと、いろいろ有料オプションが出てくるタイプのアプリではありますが、とりあえずは無料でVOCALOIDに音符・歌詞を入力して歌わせることができるという意味で、希少な存在といえそうです。
この、うた詠み575は、ヤマハがセガに対して、VOCALOIDエンジンのライセンス供与をしたことで実現したアプリとのことですが、そのエンジン自体は、iVOCALOIDと同じものが使われていました。つまり、音符情報と文字情報を元に歌をレンダリングし、それを再生するという仕組みです。使ってみると、あまり「レンダリングをさせている」、「時間待ちがある」という感じはしませんが、リアルタイムで歌わせるものではありませんでした。
ところが、本日リリースのボカロダマは、そのエンジンをさらに進化させて、リアルタイムでの発音を実現したものなのです。まあ、もともとPC用のソフトウェアであるVOCALOIDは、それなりにCPUパワーを食うため、これまでのiVOCALOIDのエンジンでも、負荷をできる限り減らすような工夫をして実装していたわけです。しかし、リアルタイム処理による発音となると、さらにCPUパワーが必要になってくるのは事実。そこで、従来のiVOCALOIDのエンジンをチューニングしてさらに負荷を下げ、低レイテンシーなリアルタイム処理を実現しているそうです。
そのため、「聴いた感じでの音の違いはできる限りないように調整していますが、厳密にいえばiVOCALOIDよりも音質は落ちています」(ヤマハ担当者)とのことですが、やはりゲームにとってはリアルタイム処理が生命線ですからね。また、CPU負荷が大きいだけに動作対象機器には制限があり、iPhoneであればiPhone 4s以上、iPod Touchなら現行の第5世代、またiPadはiPad2以降となっているようです。
さて、では、そのボカロダマとはどんなゲームなんでしょうか?
ルールはとっても単純で、和田純平さんのFingerPianoなどに近い感覚のゲームです。FingerPianoでは、上から下へ音符が降ってくるので、それに合わせてピアノを弾くというものですが、ボカロダマでは、下から上へ歌詞(文字)付の音符=ボカロダマが上へと上がっていきます。この際、ボカロダマと同じ色のパイプの上に揃えるように、ボカロダマを左右にスライドさせていくというゲームになっているのです。
機械仕掛けのように見える画面ですが、ボカロダマがパイプを抜ける前に正しい位置に揃えられると正しい音符で歌声を奏でるけれど、間違った位置のままだと狂った音程で歌ってしまうというわけです。この位置によって、明らかに音程が変わることからも分かるとおり、VOCALOIDがリアルタイムに歌っているわけですね。
歌声はVY1で、女性ボイスです。VOCALOID Editorとは違い、自由に音符を入力していくわけではありませんが、文字通りゲーム感覚で歌わせることができるというのも面白いものです。
パイプの色と、ボカロダマの色がどのくらいの頻度でズレているか、などによってゲームの難易度選択もできるようになっています。
ゲームはデフォルトパックとして3曲の楽曲が入っているので、ここから楽曲を選択してゲームをスタートさせます。またデフォルトパックのほかにもヒット曲パック、子供曲パック、ボカロ曲パックなど3曲ずつの楽曲が用意されており、これらは有料での購入となります(各300円)。残念ながら、このアプリでは自分で楽曲を作ったり、VSQXファイルを読み込むといったことはできないようですね。
また、ゲームを連続して何度も行うためには、無制限プレイボトル(900円)というものを購入しなくてはならないなど、ハマるとお金もかかりそうですが、一度試してみてはいかがでしょうか?
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