アナログ全部入りソフトシンセ、Analog Lab & MINILABを使ってみた

ソフトウェア音源を増やしたいんだけど、何かお勧めはありますか?」といった質問をよく受けます。もちろん用途によって、お勧めもいろいろ変わってくるのですが、先日質問をくれた大学生は「Logicを使っているんだけど、EXS24 mkIIなどの音源だとバリエーションの面で物足りない。いかにもシンセという音がとにかくいっぱい入った安いヤツはないですか?」というオーダー。詳しく聞いてみると「VOCALOIDを使っているので、Windowマシンも頻繁に使っている」とのこと。また「アナログシンセの知識はまったくないけど、多少音作りはしてみたい」となんとも贅沢なことを言ってくれます。

フリーのプラグインもいくつか試してみたけれど、プリセットが少なくて使いづらいんですよ。シンセの勉強はしようと思っているけれど、自分でカッコいい音色を作るのって、まだあんまり現実的じゃなくて……」とのことで、「自分でもっと勉強しろよ」とも思ったわけですが、ここで1つ思い当たったのがArturia(アートリア)の゛全部入り音源”のAnalog Labです。だいぶ以前に前身のAnalog Factoryは使ったことがあったのですが、いまどんなソフトになっているのか自分でも気になったので、ちょっと調べてみました。

Prophet5やMinimoog、ARP2600などの音源がすべて詰まったAnalog Lab 


確か16,000円程度で販売されていたはず……、と大学生と話をしながらAnalog LabをWebで調べていたら、「単体では販売しておりません」との記述が……。自分が思っていたのはAnalog Laboratoryという製品だったのですが、こちらも販売が終了しています。おかしいなと思ってよく見てみたら、Analog Labに25鍵のUSB-MIDIキーボード(しかも16個のツマミや8つのパッドなどを搭載したもの)が付属したものがMINILABという製品名て13,000円程度で販売されているんですよ! Minimoog Vのときといい、このキーボードバンドルといいArturiaは時々メチャメチャなことをやってきますよね(笑)。

Analog Labにコントローラ機能搭載USB-MIDIキーボード が付属して実売16,800円

大学生に聞いてみると「キーボードはまともに弾けないけど、KORGのnanokeyしか持っていないので、ちょうど欲しいと思っていた」とのこと。さらに調べてみると、KEYLABというフル鍵盤のキーボードとAnalog Labがセットになった製品も、ちょうど発売になるようでしたが、予算面とコンパクトさという点からMINILABに決定となったのです。

本人はその後、すぐに買っちゃったようですが、勧めた手前、自分でも入手して、試してみました。

やや前置きが長くなってしまいましたが、Analog LabはArturiaの出しているビンテージソフトシンセの、いいとこ取り・全部入りの低価格版です。ご存じの方も多いとは思いますがフランスのArturiaは、名機といわれる数々のビンテージシンセを忠実に再現させたソフトウェア音源を製品化しています。

具体的にはMinimoogを再現したMINI V、RolandのJupiter 8を再現したJupiter 8V、Sequential CircuitsのProphet-5を再現したProphet V、ARP 2600を再現したARP 2600V、YAMAHAのCS-80を再現したCS-80V、さらにはエレピとして著名なWurlitzer 200A electric pianoを再現したWURLITZER V……。

そうした数々の製品を1つのソフトとしてまとめてしまったのがAnalog Labなのです。といっても、それぞれのプラグインが1つ1つ入っているわけではありません(全部のプラグインをまとめたV-COLLECTION3という別製品もありますが…)。Analog Labという1つのソフトで、それぞれの音を再現できるようになっているのです。

ちょっと混乱してしまう方もいるかもしれませんが、画面を見てみると雰囲気はわかると思います。そう、Analog Labの見た目はシンプルなもので、5,000以上あるという音色名を選択すれば、すぐに音を出るプリセット利用を基本とした音源です。

とにかく数多くのプリセットが用意されているが、ここにはシンセの名前が記載されていて……

ここで注目すべきポイントは音色名のINSTRUMENTのところに記載されている音源名。ここにはPROPHET VやCS-80 Vといった名称が書かれていますが、Analog Labを演奏すると、まさにそのものズバリの音が出るのです。

というのも見た目こそ、シンプルな画面ですが、中のエンジン自体は、Artruiaが1本13,000円程度で販売している各ソフトシンセそのものが複数入っており、それらのエンジンで鳴らしているからなのです。なぜ、そんなことができるのかというと、これらはTAE(True Analog Emulation)といういう手法によってアナログ回路をシミュレーションしている音源だからであり、CPUパワーはそれなりに喰うけれど、ファイルサイズ的にはコンパクトにまとめられているんです。
実売価格13,000円程度でソフト単体販売されているMinimoogをシミュレーションするMINI V
だったら、各ソフトシンセを1本1本買う必要ないじゃないか、と思う方もいるでしょう。確かにプリセットを使うだけであれば、実際それで十分です。いかにもProphet 5という音やMinimoogといった音が飛び出してくるのですから、かなり楽しいですよ。

ただし、アナログシンセの面白さは、各パラメータを細かくいじって音作りをしていくこと。そのためには、やはり各ソフトシンセが必要になるというわけですが、シンセ初心者にとっては、たくさんのパラメータが出てきてしまうと、余計分からなくなってしまう……というのも事実。

MULTIモードといって複数のソフトシンセを同時に鳴らせるモードも用意されている

そこでAnalog Labではうまいことをやっているんですよ。たとえばProphet Vの場合はVCFのCutoff、Resonance、Osc AのWidthとOsc BのWidth……のように、よく使うパラメータだけを8つピックアップしていじれるようにしてあるのです。

このパラメータは音源ごとに違ってくるのですが、別の見方をすれば、おいしいポイントだけをパラメータとして抽出してあるから、初心者が適当に触ってもいい感じで音色エディットができるし、そこに登場するパラメータを覚えていけば、今後実際のアナログシンセを触っても、勘所が分かるという、いい勉強ツールにもなるわけです。
ちなみに、Analog LabといっしょにたとえばMini Vなどの、Arturiaの単体ソフトシンセがインストールされている
場合、Analog Labから呼び出して、より詳細なエディットができるし、そのエディット結果をAnalog Labのプリセットとして保存することも可能になっています。

もっともシンセをそれなりに理解している人にとっても実は、Analog Labで結構事足りたりするのも事実。それよりもさまざまな音源を一括で利用できてしまうメリットのほうが大きいようにも感じました。

25鍵のミニキーボード+ツマミ、PADが搭載のMINILAB 。USBからの電源供給で動作する

さらにMINILABというキーボード付き製品を使って、ものすごく便利だったのは、これらパラメータをツマミでコントロールできるという点です。画面を操作せずに、ツマミでコントロールできるというのはやはりいいですよ。

ツマミなどは、ほとんど設定不要でAnalog Labと連動して動作する 

私はWindows8の環境で使ってみましたが、スタンドアロンで動かしてもVSTもバッチリ動作しました。また実は、最近ちょっと仕事の関係でProTools 11を使っているのですが、例の64bit AAX環境でもバッチリ使うことができましたよ。

Analog LabはPro Tools 11上で64bit AAXプラグインとしても動作してくれた

この価格を考えれば、DAWユーザーなら1つ持っていて損はないソフトだと思いました。

【製品情報】
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