ボカロの声に厚みと広がりをつけられるZOLA_Unisonを使ってみた

先日、YAMAHAが出すVOCALOID3歌声ライブラリの新作、ZOLA Projectの発表会に行ってきました。ZOLA Projectなんて名前になっているので、これが何の製品なのか分からない人も多いのではないか…とも思いましたが、要は3人の男性ボーカルを1つのパッケージにしたVOCALOID3のことですね。

すでにニコニコ超会議で発表されていたし、歌声もちょっと聴いていたので、実はそれほど興味がなかったのですが、浅倉大介さんがボカロPとしてデビューして、ステージにも登場するらしいという話を聞いていたので、興味半分で行ってきたのでした。しかも、森雪之丞さんが作詞ということで、なんかスゴそうな発表会だったので……。


男性3人組のボカロ、ZOLA Projectに同梱のJob Plugin、ZOLA_Unisonを使ってみた


その浅倉さんの曲、「BORDERLESS」はニコニコ動画などでも話題になっているので、ご覧になった方も多いと思います。


浅倉大介さんがボカロPとしてデビュー!右は作詞担当の森雪之丞さん

浅倉さんとしては、初VOCALOIDだったそうですが、ぜひこれからも作品を作ってもらいたいところですよね。

まあ、その発表会自体、すでに6月20日の話であり、その翌日には製品も発表されています。またIT mediaの松尾公也さんも、その後すぐに浅倉さん、森さんのインタビュー記事を書かれているので、そちらを参考にされると面白いと思います。

その発表会の中で、個人的に一番グッと来たのが、ZOLA Projectのパッケージに同梱されているというJob PluginZOLA_Unisonというものについてです。そうユニゾンサウンドを簡単に作れるJob Pluginがオマケに入っているんですよ。


ZOLA_UnisonというJobPluginが同梱されているので、これをVOCALOID3 Editorに組み込んだところ

Job Pluginとは、VOCALOID3 Editor上で動作するプログラムのことで、たとえば、打ち込んだ全ノートを四分音符に変える、スタッカートに変更できる……といったことが簡単に実行できる便利な機能です。

VOCALOID3 Editorにも予めいくつかのJob Pluginが同梱されているほか、VOCALOID STOREに行くと有料のもの、無料のものを含めいろいろなJob Pluginが揃っています。もし「まだ使ったことがない」なんて方がいたら、それはあまりにももったいないことですから、ぜひすぐにでも試してみてください。

で、そのZOLA_Unisonとはどんなものなのかを試してみたので、まずは以下のビデオを見てみてください。

だいたい雰囲気は伝わったでしょうか?前述のとおり、ZOLAは3人の男性ボカロなので、3人をうまく使い分けながら歌わせることで、曲作りの幅も広がっていくはずです。ところが、同じフレーズをただコピーして3人の歌手としてユニゾンで歌わせても、どうもしっくりこないのです。広がりがないというか、音に厚みがないというか……、とにかく3人で歌っているという感じがしないんですよね。

というのは、声は違うけれど、歌うタイミング、音量の変化が、どの歌手もドンピシャで同じであるため、不自然というか、妙なことになってしまうわけです。実際の人が歌っていたら、そんなことは絶対にありえませんからね。

まあ、このことはZOLA Projectに限らず、ほかのVOCALOIDライブラリをユニゾンで歌わせても同様のことを感じた人は多いと思います。それを解消するために、ダブラーなどのエフェクトを使っていた人もいるのではないでしょうか?

今回登場したZOLA_Unisonはそうした問題を解消し、より自然なUnisonを実現しようというものです。といっても処理内容はそう難しいものではありません。そう歌うタイミングを微妙に前後に揺らしたり、ピッチを微妙に揺らすことによって、ドンピシャに揃ってしまう現象を避けようというものなのです。


Job Pluginとして用意されているZOLA_Unisonを実行

使い方は簡単。タイミングやピッチを揺らしたいノートデータを選択した上で、「ジョブ」メニューの「Jobプラグインを実行」を選択。そして、ZOLA_Unisonを選択して、「実行」すればいいのです。


ZOLA_Unisonのパラメータ設定画面

すると、ZOLA_Unisonのシンプルな設定画面が登場します。デフォルトではTimingとPitch Bendにチェックが入っていますが、ほかにもVelocity、Bend Depth & Length、Decay、Delete Vibratoといったパラメータがあるので、必要に応じてチェックを切り替えて比較してみると面白いかもしれまん。


3種類のTypeが用意されている

またTypeとしてSolo、Unison、Chorusの3つが用意されています。マニュアルやヘルプがないので、ハッキリはわかりませんが、単にソロで歌わせるけれど、多少ピッチやタイミングを揺らしたいのであればSoloを、ユニゾンで歌わせる場合は、その片方にUnisonを、また同じ音程ではなく、和音になるコーラスの場合はコーラスパートにChorusをそれぞれ掛けることで効果がある、ということなんだろうな、と。

先ほどのデモでは、3つ目のフレーズででトラック2とトラック3にUnisonの設定で実行、5つ目のフレーズでChorusで実行しています。とくに、ユニゾンで歌わせた際に音に広がりと厚みがでることは実感できますよね。

ノートのタイミングがドンピシャのところから微妙に前後しているほか、PITも揺れている
時間軸を拡大してみると、ノートのタイミングが微妙に変化します。また、PITパラメータを見ると、明らかにいじられていることが確認できます。

試してみたところ、同じイベントに対して、まったく同じ設定でZOLA_Unisonを実行しても、毎回結果が異なるようなので、ランダムを用いてい設定をしているようですね。

このデモには入れませんでしたが、トラックごとに違う歌手にしなくても、ZOLA_Unisonを利用するだけで、ユニゾン効果を発揮することができます。

また、ZOLA_Unisonという名前にはなっているものの、ZOLA Project専用というわけではなく、Megpoid結月ゆかりなど、ほかのVOCALOID3歌声ライブラリに対しても使うことができますよ。

ちなみに、ZOLA ProjectにはZOLA_UnisonのほかにもPITパラメータ間引きプラグインのDietPIT、選択したノートの歌詞に音名(ハニホヘト…)を入れるLyricOnmei、指定した高さ(ノートナンバー)のノートを任意の高さへ変更するTranspNote、などなど計23種類が入っています。もっともその大半はVOCALOID STOREで無料公開されているので、ZOLA_Unisonも近いうちに無料ダウンロード可能になるかもしれません。
※この記事を受けて、YAMAHAから、無料公開の予定はないとの発表がありました。


VOCALOID STORE上にはまだZOLA_Unisonは並んでいないようだ

ただ現状においてZORA_Unisonを入手するにはZOLA Projectを購入するほかはないので、これを大きな目的としてZOLA Projectを買ってみるとういのもアリかもしれませんね(笑)。

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