以前「KAITO V3がいよいよ登場、新エディタ、Piapro Studioを使ってみた!」という記事で、クリプトン・フューチャー・メディアが開発したVSTインストゥルメント(VSTi)型のVOCALOID3のエディタ、Piapro Studioについて紹介しました。そう、これまでVOCALOIDを歌わせるためには、YAMAHAが開発したVOCALOID Editorが必須でしたが、それとは違う新たなエディタが登場したのです。
そのPiapro Studioがその後も少しずつ進化してきており、先日クリプトン・フューチャー・メディアからバージョン1.0.0へのロードマップなるものが発表されました。Web上の発表内容だけだと、ハッキリと分からない点もあったので、昨日、Piapro Studioの開発チームに電話で話を聞いてみました。
まず、改めてPiapro Studioがどんなものなのかを簡単に振り返っておきましょう。これは現在のところ、KAITO V3にバンドルされる形で配布されているVOCALOID3用のエディタであり、クリプトン・フューチャー・メディアが開発したオリジナルソフトです。とはいえ、VOCALOID3の歌声合成エンジン自体はYAMAHAが開発したものを使っていますから、歌声、歌い方が変わってしまうというわけではありませんし、パラメータなどVOCALOID3自体が持っている機能は同じです。
違うのはユーザーインターフェイスであったり、使い方です。ご存じのとおり、VOCALOID3 Editorは単独で起動するソフトであり、曲として仕上げるには、ここからWAVで出力したものをDAW側でインポートして使うというのが基本になります(VOCALOID Editor for Cubaseを使う方法、Singer Song Writer 10やSinger Song Writer Lite 8のReWire機能を利用する方法、またフリーウェアのVOCALOID3 ReWireを使うことで連携させるという裏ワザはありますが…)。
しかし、Piapro StudioはVSTインストゥルメント型のエディタであるため、各DAW内で起動し、DAWとともに使うことができるのです。具体的にいえば、SONAR、StudioOne、Live、FL STUDIO、そしてCubase……とほとんどのDAWに組み込んで使うことができるのですから、やっぱりVOCALOIDの世界においては画期的ですよね。
たとえば、テンポを変えてもいちいちVOCALOID Editorに戻って修正し、WAVでエクスポートして……といった作業は不要で、DAWのテンポを変えるだけでOK。また、ちょっと歌を修正したいといったときも、そこだけを直せばいいわけです。また、同時に複数を起動させた上でメインボーカル用、コーラス用とDAW上で別々にエフェクト処理をし、バランスをとって……といったことができるのですから、効率よく楽曲を制作していくことが可能になります。
ただ、このPiapro Studioが出た当初、つまりKAITO V3が発売されたばかりの時点では、物足りない機能があったのも確かでした。たとえば、
●VOCALOID Editorで作成したVSQ/VSQXファイルが読み込めない
●MIDIファイルの読み込みに対応していない
といったものでしたが、これらについては、すでに公開されているアップデータでサポートされるようになっています。
そうした中、さらなる進展についての発表がされたのです。そこには6月初旬~中旬に発表されるバージョン0.9.9で
■ 曲途中でのテンポチェンジ/拍子チェンジへの対応
■ 48kHz/96kHzサンプリングレートへの対応
■ ピアノロールのレイヤー表示機能(コーラス編集)
さらに時期については別途お知らせするということで、現状明らかになっていないバージョン1.0.0においては
■ 初回再生時の音途切れ解消
■ ピアノロール鍵盤またはノート押下時の単音プレビュー発音機能
■ オートメーショントラック編集機能の向上
■ KAITO V3以外の歌声ライブラリへの対応
となっているのです。中でもやはり多くの人が気がかりなのが、「KAITO V3以外の歌声ライブラリへの対応」についてですよね。これがどういう意味を持つのか、開発チームに聞いてみたところ、「対応時期と方法は検討中です」とのこと。
システムのアップデート自体は通常は自動的に行われる
ユーザーとして一番期待したいのは、初音ミクや鏡音リン・レンといったVOCALOID2のライブラリが使えるようになることや、他社のライブラリにも対応してくれる、ということですが、現状ではまだハッキリ決まっていないようでした。「他ライブラリの対応含めた新機能の開発とMac版の開発を同時並行でバランス良く進めています。詳細はpiaprostudio.comでアナウンスする予定ですので、スミマセンがいましばらくお待ちください」ということでした。とはいえ、個人的には有償でもいいので、他社ライブラリも使えるオープンなものにしてもらいたいな……と思っているところです。
一方、そのMac版についてもアナウンスがされており、「Windows版と同等の機能を実装の上、バージョン 1.0.0 と同じ時期のリリースを目標としております」とWebサイト上に書かれています。この点から推測すると、1.0.0のリリースは秋以降ということになりそうです。
というのも「この秋、ついにMac版VOCALOIDが登場だ!!」でも書いた通り、VOCALOID Editor for CubaseのMac版のリリースが秋とされています。そしてYAMAHAによれば、Macで使うためにはMac版のライブラリが必要とのことですから、それにPiapro Studioも歩調を合わせてくるはず。少なくともYAMAHAより先にクリプトン・フューチャー・メディアが製品化することはなさそうですから、まだしばらく先ということなのでしょう。
もう一つ気になるポイントが64bit化です。現状のPiapro Studioは32bit用であり、64bitのDAW環境ではうまく動作しないようです。この点については「なお、上記バージョンアップの間に、別途 64bit版の Piapro Studio VSTi を試験提供する予定です」と書かれていした。
これについても確認をしてみたところ、「64bit版についてはベータ版としての提供」とのことで、現在のPiapro Studioのユーザーであれば、無償でダウンロードできるようにするそうです。個人的にはDAWは64bit版を使うのが基本となっているので、ぜひ早く64bit版を試してみたいところです。
【関連サイト】
バージョン 1.0.0 へのロードマップにつきまして(Piapro Studio)
【KAITO V3 価格チェック】
◎Amazon ⇒ カイト V3(KAITO V3)
◎サウンドハウス ⇒ KAITO V3