iPhone/iPadでエフェクトを追加可能な機材、MS-100BTの不思議に迫る

デジタルエフェクトといえば、1つの機材でさまざまなエフェクトが使えるマルチが当たり前ですが、85円とか170円といった少額の追加料金を払うとエフェクトの数を増やせるというユニークな機材があるのをご存じですか?ZOOMのMultiStomp MS-100BTというのがそれ。

iPhoneやiPadを使ってネット経由でエフェクトを購入し、Bluetoothを用いて飛ばすというユニークな方式を採用しているもので、購入できるエフェクトも有名なビンテージ機材がズラリと並んでいます。でも、なんでそんなことができるのか、どんな仕組みになっているのか不思議がいっぱいですよね?その不思議に迫ってみましょう。

一見、普通のギター用エフェクターに見えるMultiStomp MS-100BTがスゴイ 



ZOOMMS-100BTが発売されたのは2012年11月なので、半年ほど前。私自身はTwitterでその存在を知り、「エフェクトが追加可能なハードウェアってどういうこと??」と不思議に思い、興味を持ったのですが、その数日後、FM番組の打ち合わせで会ったROLLYさんが既に持っていたので、ちょっとだけ触らせてもらい、そのまま番組でも取り上げたという経緯があります。が、改めてそのMS-100BTを入手したので、チェックしてみましょう。
数多くのプリセットが用意されており、これを選択するとさまざまなエフェクトの組み合わせを呼び出せる

ご存じない方のために、簡単に説明すると、MS-100BTというのは見た通り、ストンプ型のギター用エフェクト。床に置いて足で踏んでスイッチのオン/オフを行う、ごく普通の形の機材。ただし、ディストーションとかフランジャーといった単一機能のエフェクトではありません。リバーブ、ディレイ、コンプ、EQ……、さらにはアンプシミュレータまで100種類ものエフェクトを切り替えて使うことができ、しかも6つまでを同時に使うことが可能となっています。

ギターアンプをモデリングしたものや、さまざまなエフェクトが計100種類用意されており、利用できる

小さなストンプ型でというのを除けば、こうしたマルチエフェクトは今や珍しいものではないのですが、MS-100BTがユニークなのは、この100種類あるエフェクトをさらに追加することができるという点です。iPhoneやiPadにStompShareというアプリをインストールすると、ZOOMのネットショップにアクセスすることができ、ここの陳列棚には、さまざまなエフェクトやアンプが並んでいるのです。

iPhoneで起動したStompShare上の棚には、さまざまなエフェクト、アンプが陳列されている

しかも並んでいるのは、たとえばMaestroのテープエコーであるEcoplexIbanezのオーバードライブTube Screamer(復刻版はTS808)、94年にKLONというメーカーから発売されたオーバードライブCENTAURElectro-HamonixのBBDディレイSmall Clone、……などなど、名機をモデリングしたものばかり。さらに、Marshallの1959、VOXのCOMBなどのアンプもいろいろとあるのです。

名機を再現するエフェクトやアンプが85円、170円といった低価格で販売されている

エフェクトが85円、アンプが170円(いずれもセールで半額になっているそうですが…)と手ごろな価格で、これを購入した上で、MS-100BTへBluetoothで飛ばしてやると、MS-100BTですぐに使えるようになるのです。飛ばしてしまえば、iPhone/iPadは一切不要なのも大きなポイントです。

MS-100BT本体にもBluetoothの送受信部が装備されているのを確認できる

Line6のMobilePODやIK MultimediaのAmpliTubeなど、iOSデバイス上で動作するエフェクトというのはいろいろありますが、MS-100BTはそれらとはまったく異なる仕組みなんですね。確かにiPadやiPhoneをエフェクト、アンプとして使うこれらのアプリも非常に便利だし、安く楽しめるというのは大きなメリットですが、ライブなどで使用したいという実用面では操作性という面で難しい点があります。そう、ギターとケーブルの引き回しをどうするか、スイッチの切り替えを画面で行うのは厳しい…といった点があるからです。

その点、普通のストンプ型エフェクトであるMS-100BTなら問題ないわけですね。

本体には3つのツマミのほか、設定用ボタンがいろいろあるので、パラメータの調整などもできる

でも、なぜそんなことができてしまうのでしょうか?ここにDSPというものが関係してきます。「DSPってよく聞くけど、イマイチよく分からない」という人も多いと思うので、ちょっと解説しておきます。

これはDigital Signal Processorの略であり、コンピュータの心臓ともいえるCPUの兄弟ともいえるもの。プログラムを組んで動かすことができるデジタルICです。ただし汎用的に利用できるCPUと違い、信号処理に特化した作りになっているのでオーディオ処理が効率よく行えるICになっているのです。

そのためプログラムを実行することで、エフェクトを実現したりアンプモデリングを実現することができるわけですね。通常はこうしたプログラムがROMと呼ばれるメモリに埋め込まれた状態で出荷されているので、入れ替えや追加は基本的に不可能なのですが、MS-100BTはここにフラッシュメモリが採用されているので、追加することができるわけです。
試奏ボタンを押すとプログラムがBluetoothでMS-100BTへ転送される
そのプログラムをiPhoneやiPadからBluetoothを使って飛ばしているわけなのです。まあ、85円とか170円という価格ですから、ケチることもないのですが、面白いのは、これを試奏できるという点です。エフェクトを選択して、「試奏」ボタンをタップすると、これによってBluetoothでプログラムがMS-100BTへと転送され、15分だけ使うことができるのです。この間、iPhone上にはタイマー表示がされてカウントダウンされていくようになっています。でも、とくにプロテクトもないので、何回でも試奏できるようになってますよ。
転送されると15分のタイマーが動き出し、この時間内は無料で使うことができる

このように、StompShareで販売されているエフェクト/アンプの数は5月17日現在31種類。ZOOMに確認をしたところ、昨年11月にはリリースした時点では20種類だったのが、毎月新たなものを開発して2つ程度ずつ増やしてきているのだとか…。


MS-100BT側でも転送されたプログラムが表示され、即使うことができる

こうやって増えていくと気になるのは、いっぱい購入するとメモリーがいっぱいになってしまわないのか、という点です。これについても聞いてみたところ、メモリー容量は大きく、プログラムのファイルサイズは小さいから、100個程度なら増やしても大丈夫とのことで、とくに消す必要もないそうです。

まさに、新しい考え方の機材ですよね。今後StompShare上にどんなものが追加されるのかも楽しみなところです。

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MS-100BT製品情報

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