昨年6月、フランスのArturia(アートリア)が1日限定の無料放出をしたことで、ちょっとしたお祭り騒ぎになったソフトシンセ、MinimoogV。そう、伝説的アナログシンセの代表機種ともいえるMinimoog(ミニモーグ)を物理モデリングによってソフトシンセ化したもの。ちょっと音を出しただけでも、「おぅ!」と声が出てしまうほどカッコイイ、ズ太いサウンドが出せる音源です。
現在はArturiaとMoog社のライセンス契約が切れたことにより、名前をMiniVに変更し、内容はそのままに販売されています。そのMiniVが、今度はiPad用のアプリ、iMiniとして登場し、国内では850円で発売されました。しかもアルペジエータが搭載されたり、エフェクタが搭載されたり……と、PC版のiMiniよりも高機能です。iPadユーザーならこれを使わない手はないでしょう。というわけで、これでどんなことができるのか試してみました。
起動してみると、画面のデザインは昨年タダでGETしたMinimoogV Originalとソックリですね。ただ、よく見比べてみると、ロゴの違いのほかに、ちょっぴりノブの配置などが変わっているようです。そう縦横比の問題などから、デザイン変更をしたのでしょう。もっとも、ノブやスイッチの数は変わっておらず、すべてがiPadの画面内に収まっています。
画面上の鍵盤を弾いてみると……、まさにMinimoogというサウンド。iPadのスピーカーではちょっと安っぽいサウンドになってしまいますが、ヘッドホンをしてみると、「おぅ!」というサウンドが飛び出してきます。「これが850円でいいんだろうか…!?」、と。
CUTOFF FREQUENCYやFILTER EMPHASISを動かすと、ドラスティックにサウンドが変化していきます。また、OSCILATOR-1~3の3つのオシレーターを組み合わせていくことで、太い音になるんですね。
ここでプリセットを見てみると、これまたいっぱい入ってますね。これを選んで音を鳴らしているだけで1日遊べてしまいますよ! ん?よく見ると音色のバンク名に「K_UJIIE_FACTORY」とか、「N_UBUKATA_FACTORY」なんてのがありますよ。そう、氏家克典(@Katsunori_UJIIE)さんや生方ノリタカ(@ubieman)さんが制作したプリセットも収録されているんですね。
そう、こうしたプリセット、別にiMini用に新たに作られたというわけではなく、もともとMinimoogV、つまぎ現在のMiniV用に作られたプリセットが流用されているようで、ほかのプリセットを見ても、同じものになっているようです。
そうなると、気になるのはPC版との音の違い。両方を起動してそれぞれに同じ音色を設定して鳴らしてみると……、なるほどソックリです。基本的には同じといっていいんのではないでしょうか。でも、見分け(いや聴き分けか)がつかないほど同じというのではなく、とてもよく似た音といったほうがいいんでしょうね。どっちが好きかは人それぞれですが、iMiniの音、十分使える音だと思いますよ。
さらにこの音をヘッドホン端子から出すだけではなく、オーディオインターフェイスからも出してみました。そう、CoreAudioに対応しているから、以前紹介したRolandのDUO-CAPTURE EXでも、PreSonusのAudioBox 44VSLでも何でも動くようですよ。これらのオーディオインターフェイスから出る音を聴くと、さらに低域がしっかりと出ていて迫力も満点。そういう意味でも、また微妙に違う音なわけで、好みの組み合わせを探すのも楽しみのひとつかもしれませんね。
一方、CoreMIDIにも対応していますよ。これによってMIDIキーボードを接続してiMiniを演奏することもできるようになります。ここではLine6のMobileKeys25、IK MultimediaのiRig keyを接続してみたところ、これもバッチリ動きます。やっぱりiPadのタッチスクリーンで弾くよりも、これらの鍵盤で弾いたほうが、断然使いやすいですね。
さらに、すごいのは、これらMIDIデバイスでiMiniのパラメータのコントロールが可能なのこと。iMiniのMIDIラーニング機能によって、自由にツマミをiMiniのパラメータに割り当てることが可能なのです。まあ、MobileKeysやiRig Keyにはそんなに多くのツマミがあるわけではありませんが、たとえばVOLUMEをCUTOFFに割り当てたりすると、結構使えますね!
さて、ここからはiMiniで初めて搭載された機能について。画面上部にMAIN、PERFORM、FXというMODE切り替えのボタンがありますが、PERFORMを押してみるとKaossilatorみたいな画面が出てきますよ。そう、2つのXYパッドを使って音色をコントロールできるようになっているのです。それぞれの縦軸、横軸にどのパラメータを割り当てるのかはユーザーが自由に決めることができるようになっています。
さらに、その左側にはアルペジエータが用意されています。これを設定すると、鍵盤で和音を押すとアルペジオ演奏ができるようになっているんですね。
次にFXを押してみると、今度はエフェクトの画面に切り替わります。ここに用意されているのはコーラスとアナログディレイ。上部のPOWERスイッチをそれぞれオンにすることで、エフェクトが効くようになり、サウンドの幅が大きく広がりますね。
こうやって遊んでみて、改めて気になってきたのがPC版との互換性についてです。前述のとおり、PC版のプリセットがiMiniにも入っているわけですが、すでにPC版用に自分の音色ライブラリを構築しているという人も少なくないでしょう。そうしたデータをiMiniで生かすことはできないのでしょうか?
で試してみました。結論から言ってしまえば、できましたよ! MinimoogVやMiniVではバンクデータを書き出す機能が用意されていて、拡張子「.minibank」というファイルを生成することができます。これをiTunes経由でiMiniに転送してみると、うまく使えてしまうんですね。反対も可なので、iMiniで作った音色をPCで使うこともできるのです。
PCとiPadではCPUパワーが違うので、おそらくPCのほうが、よりアナログに近い演算をしているんだとは思いますが、そのパラメータ自体はそのまま同じように使えるということですね。
そのほか、まだ試してはいませんが、Bluetoothを使って他のアプリと同期演奏するためのWIST、またスタジオ環境を構築する RetronymsのTABLETOPにも対応しているとのこと。TABLETOPは私もまだ使っていないので、今度じっくり遊んでみようと思っています。
なお、Audiobusにはまだ対応していなかったり、CoreMIDIまわりが若干不安定という面がありますが、この辺は今後のバージョンアップに期待したいところです。