Megpoidの英語版が間もなく登場。これはどう使えばいいの?

VOCALOIDの歌声ライブラリに英語版が存在することはご存知の方も多いと思いますが、実際に使ったことのある方は少ないのではないでしょうか?実は私自身もまったく使ったことが無かったのですが、最近になっていくつかのライブラリが登場してきています。中でも気になるのが、私もよく使っているMegpoidの英語版ライブラリ、「Megpoid English」が発表されたことです。

以前から開発元であるインターネット村上昇社長から、「作っている」という話は聞いていたのですが、ついに2月28日に発売されることになりました。一足先に、ちらっと使わせてもらったのとともに、これがどんなものなのか、村上社長に電話で話を聞いてみました。

2月28日に発売されるMegpoid English


VOCALOID3ってインストールする際に、「設定言語の選択」という画面が出てきますよね。普通は「日本語」を選ぶわけですが、この設定言語の話と、今回の英語版の話はまったく別。設定言語というのは、Tiny VOCALOID3 Editorのユーザーインターフェイスの言語を何にするのか、ということであって、英語にしても英語を歌ってくれるわけではないし、中国語にしたら中国語を歌ってくれるというわけではありません。


VOCALOID3のインストール時に現れる言語選択の英語と、英語版は別モノ

英語を歌わせるためには、英語版の歌声ライブラリが必要であり、今回出る「Megpoid English」が、それに相当するものなのです。ユーザーにとって通常の日本語版のVOCALOID3の歌声ライブラリの使い方と最大の違いは、入力する歌詞が、「ひらがな」ではなく「英語」である、ということです。

歌詞の流し込み機能で、英語を普通に入力すると……
当然といえば当然なのですが、これが、いろいろと不思議な感じなんですよね。たとえば「Sunday morning」と歌詞を流し込んでみると、「Sun-」、「day」、「Mor-」、「ning」というように4音符に割り振られるんです。1音符=1文字である日本語とは明らかに違いますよね。英語では1音符=1音節となっているからなのだそうですが、ある程度の慣れは必要そうです。でも、これによって上手に英語を歌ってくれるようになるんですね。

音節ごとに区切られて入力される
ここで村上社長に電話でMegpoid Englishについて少しインタビューしてみたので、紹介しましょう(以下、敬称略)。

【Megpoid English DEMO】 Fragments Of Star
--Megpoid Englishで初めて英語版のVOCALOIDを触ってみたのですが、これ面白いですね。このMegpoid English、いつごろから作っていたのですか?
村上:1年ほど前から作っていました。ユーザーのみなさんは、なんとかカタカナを駆使して英語の歌詞を歌わせていたりしますが、なかなか大変だし、どれだけ頑張っても発音できない音があります。この不便を解消し、本当の英語を歌わせられるようにしたい、というのが、ひとつの目的でした。

--「ひとつの目的」ということは、別の目的もあったのですか?
村上:はい、海外市場にも活路を見出したいということです。海外にVOCALOIDが進出すれば、もっともっと広く多くの人にVOCALOIDを楽しんでもらえるのではないだろうか、と。そんなこともあって、1月にはCESとNAMM SHOWにも行ってきたんですよ。

--実際に行ってみてどうでしたか?

村上:予想していた以上に、まったくVOCALOIDについてみなさん知らなかったですね。確かにごく一部の日本アニメファン層には認知されていたようですが、ほとんどの人が「これ、何?」と不思議そうに興味を示してくれるという感じでした。とくにNAMMはディーラーやアーティストなど電子楽器やシンセサイザといったことについて詳しい方ばかりが来るので、高い関心を持ってくれたようです。そうすぐに大きなビジネスにはならないでしょうが、期待したいところですね。


NAMM SHOW 2013に設置されたVOCALOIDブース

--以前、VOCALOID3のライブラリ制作の話を伺いましたが、今回のMegpoid Englishもこれまでの制作ノウハウがそのまま生かせて効率よくできたわけですよね?
村上:想像以上に大変でした。正直にいって、これまで作ってきた日本語のライブラリ作りとは、まったくの別モノといってもいいほどで、ノウハウも再度ゼロからという感じです。収録の時間も膨大で日本語ライブラリのレコーディングの5倍以上かかりましたよ。編集にも長い時間がかかり、大変でした。やはり日本語と、英語では全然言葉の体系が違い、音の組み合わせも遥かに多いんですよ。

--日本語は50文字に対して、英語は26文字。英語のほうがシンプルにライブラリ構築できるのでは……と思っていたのですが。

村上:それは文字でしょ。発音の組み合わせは英語のほうがずっと多いんです。実際、日本語にない発音が多くあるでしょ。たとえば二重母音って日本語にはないでしょ。巻き舌の発音とか。また、英語の場合、子音+子音という組み合わせもたくさんあります。日本語の場合は必ず子音+母音となっていて、子音+子音ってないんですよね。

--例のDiphone(2つの音のつながり)とかTriphone(3つの音のつながり)の話ですね。
村上:そうです。組み合わせが非常に多くなってくることから、データベースのサイズも5倍近くになっていますよ。また苦労したのが、その子音+子音のつなぎ方。日本語のように子音+母音であれば、ハッキリした波形になるのですが、子音+子音だとどちらも不安定な音なので、どこを取ってつなぐか、その音量レベルをどうするといいのかもかなり試行錯誤したところですね。

--当然、レコーディングも英語で行うわけですよね?中の人である、中島愛さんは、英語が上手な方なんですか?
村上:いいえ、そうではないんです。だから、先生に習いながら発音してもらっていたので、余計に時間がかかったんですよ。その先生の歌声も録音していたから、結果的にもう1つ分のデータベースができてしまいますよ(笑)。声質自体は、Megpoid Nativeと同じようにしているので、日本語の歌の中にちょっと英語の歌詞が登場してくるようなときにもスムーズに作成することができますよ。

--Megpoid English、ちょっと使ってみましたが、日本語の勝手とはだいぶ違いますね。
村上:確かにコツがいりますね。日本語なら1つの音符に1文字でしたが、英語だと1音節なんです。多くの日本人は英語の1音節という概念があまりないですよね。英語圏の人たちは自然と身についているようで、誰でもすぐに分かるそうですが…。

Megpoid Englishに同梱されている辞書
--私も全然気にしたこともありませんでしたが、英語の辞書を見るとハイフンで切れている、あれですね!
村上:そのとおりです。これが分からないと思い通りに文字を流し込んでいくことができませんからね。とりあえず、英語を入力すると、自動的に音節で区切って入力されていくのは、VOCALOID3が単語の辞書を備えているからです。ところが、チェックしていくとYAMAHAが作った標準の辞書に間違えがあったりするんですよ。たとえば「Realize」が間違っていることを発見し、そのほかにもいくつか……。それを修正するために、Megpoid Englishにはユーザー辞書を搭載しています。ユーザー辞書ですから、もちろんユーザーのみなさんが各自入力していくこともできますよ。

--なるほど、英語版のVOCALOIDはユーザー辞書なんてものがあるんですね。これをうまく利用しながら上手に英語の曲を打ち込んでいきたいですね。
村上:新規ユーザーはもちろんですが、ぜひ多くのMegpoidユーザーに使っていただきたいと思っています。先ほどもお話したとおり、声質はMegpoid Nativeと同じにしてあるので、使いやすいと思います。またこれまでのMegpoidユーザー様にはいつもの優待販売以上に安く提供しますので、ぜひ日本語とうまく組み合わせながら使っていただければと思っています。

--ありがとうございました。
【製品情報】
Megpoid English

【YouTube動画】
VOCALOID Megpoid / GUMI English

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