オーディオインターフェイスなどに仕様で、最近ときどき聞くようになった「USBクラス・コンプライアント」という言葉。これを正確に理解している人は案外少ないかもしれません。DTMの世界だけでなく、PCオーディオの世界でもときどきこの言葉が使われているようですが、いろいろと誤解、誤認などもありそうな気がしています。
そこで、今回の記事はちょっとしたお勉強編ということで、このUSBクラス・コンプライアントとは何かということについて分かりやすく紹介してみたいと思います。
先に結論から言ってしまえば、USBクラス・コンプライアントとは「標準ドライバで動作しますよ」という意味。WindowsでもMacでも、iOS、さらにはLinuxにおいても専用のドライバをインストールすることなく使えます、ということを示す言葉なんです。
OS標準のドライバで動いてしまうデバイスであることを意味する
本来はどんなデバイスにおいても使える言葉だと思うのですが、Webで検索してみても分かるとおり、USBクラス・コンプライアントが登場してくるのは、オーディオインターフェイスやMIDIインターフェイスの世界のみのようです。
このうちMIDIインターフェイスにおけるUSBクラス・コンプライアントについては以前に「CoreMIDIとGenericMIDIって何だ?」という記事で詳しく紹介しているので、そちらを参照してください。ここではもう一方の、オーディオ系デバイスについて見ていくことにしましょう。
このオーディオ系デバイス、ご存知だとは思いますが、用途によってオーディオインターフェイスと呼ばれるものと、USB-DAC(DACとはデジタル・アナログ・コンバータのこと)またはUSB-DDC(DDCとはデジタル・デジタル・コンバータのことで、USBをS/PDIFなどに変換する機器のこと)などと呼ばれるものに大別できます。大雑把にいってしまえばオーディオインターフェイスは入力も出力も可能なデバイスで、USB-DACやUSB-DDCはオーディオ出力だけを行うものを指しており、出力だけを捉えれば本質的には同じものです。
このようなオーディオインターフェイスやUSB-DAC/DDCのうち、PCに接続した際、ドライバを別途インストールするのが不要で、標準ドライバで動くもののことをUSBクラス・コンプライアントと呼んでいるわけです。
USB-DAC/DDCなどは、そのほとんどがUSBクラス・コンプライアント対応だったわけですが、最近は、オーディオインターフェイスでもRolandがDUO-CAPTURE EXといったものを出してくるなど、USBクラス・コンプライアント対応というのが、ちょっとしたブーム?のようにもなっているようです。
でも、なぜUSBクラス・コンプライアントに注目が集まっているのでしょうか?その理由は単純にiPadにあるのです。そうiPadはCamera Connection Kitを利用することでUSBデバイスと接続可能ですが、独自のドライバをインストールすることができず、USBクラス・コンプライアント対応のデバイスしか接続することができないからです。
一方、なぜUSB-DACやUSB-DDCはもともとUSBクラス・コンプライアントだったのか。ここにはもっと別の事情があるのです。現在USB-DAC/DDCは本当に数多くのメーカーから発売されています。そして、そのほとんどは小さなメーカーであり、オーディオインターフェイスを作っているメーカーとは規模が異なります。またUSB-DAC/DDCの中身の違いは主にアナログ回路部分やクロック周り、シールド部分など。逆にデジタル回路部分はチップメーカーが供給するものを使えば、結構簡単にできあがってしまうのです。
一方、そうしたデバイスの性能を最大限に引き出すためにはドライバが必要ですが、これを開発するのは相当な技術力と開発パワーが必要であり、こうした小さいメーカーでは事実上不可能なのです。そのため、ドライバが不要で済む、USBクラス・コンプライアントという仕様を各社が選択しているわけなんですね。
最近は、雑誌の付録にUSB-DACが付いてくるくらいですからね。ちなみにインプレスが出した「ハンダ付けなしで誰でもできる! USB DACキットではじめる高音質PCオーディオ」は私も試してみましたが、下手な高級USB-DACよりずっといい音でしたよ!
「USBクラス・コンプライアントだから音がいいんだ!」なんて自慢している人もいるようですが、これはちょっと勘違いかもしれませんね。またUSBクラス・コンプライアントとして接続する場合、ハードウェア本来の性能をフルに発揮することができないため、レイテンシーを小さくするという目的には合致しにくくなっています。とくにWindowsの場合はASIOドライバが使えないので、積極的にはお勧めできません(ASIO4ALLやINASIOを使うという手もありますが…)。
ところでUSBクラス・コンプライアント対応の同義語として
・USB Audio Class対応
・CoreAudio対応
といったものがありますが、ここにはちょっと注意が必要なことがあるので、解説しておきましょう。
まずUSB Audio Class対応は、まさに同義語なのですが、実は
・USB Audio Class 1.0
・USB Audio Class 2.0
という2つの規格が存在しているのです。そしてその大半は1.0となっていて、USB 1.1接続の規格になっているのです(USB 1.1ということは転送速度が遅いということを意味しています)。その結果多くの製品は44.1kHzまたは48kHzまでの対応となっていて、一部24bit/96kHzまで出力できるようになっています(オーディオインターフェイスで24bit/96kHz対応の場合、出力のみまたは入力のみの一方通行となる)。
それに対し、USB Audio Class 2.0対応というものも徐々に登場してきており、オーディオインターフェイスでもPreSonusのAudioBox VSLシリーズやRMEのFireface UCXといったものがあります。ただし、現在のところ、USB Class Audio 2.0にはMac、iOSは対応しているものの、Windowsが対応していないのです。そのため、これをWindowsで使うためにはドライバをインストールしないと使えないんですよね。もっともRMEはドライバを使うための高性能なモードがあるし、PreSonusは独自ドライバを出しているから問題にはならないのですが、USB-DAC/DDCのほうはWindowsでは使うことができないケースも多いようです。
一方、CoreAudioというキーワードは、基本的にApple用語ですが、やや意味が曖昧になっているように思えます。通常はUSB Audio Class 対応ということで使われていますが、もともとはMacのオーディオドライバの名前なので、Macで使う際には、ちょっとニュアンスが変わってきそうです。
以上、USBクラス・コンプライアントに関して簡単に紹介してみましたが、ご理解いただけたでしょうか?さらに掘り下げていくと、アシンクロナス転送方式とか、USB転送方式に伴うジッターの発生など難しいネタになってしまうので、この辺は必要あれば、また今度解説してみたいと思います。