9月3日、ヤマハは記者発表会を行い「VOCALOID Editor for Cubase」なるパッケージを発売すると発表しました。これはWindows版のCubase 6.5(ArtistやElementsなどは非対応)専用のアドオンソフトという位置づけで、Cubaseそのものの機能を拡張するというもの。
※追記
2013年1月11日発表の最新情報によると、VOCALOID Editor for Cubaseの動作環境はCubase7および、Cubase Artist 7で、Cubase 6.5は推奨されない環境となりました。
発売時期はまだハッキリしませんが今冬とのこと。またオープンプライスで実売価格がVOCALOID3 Editor(以下V3 Editor)と同じ9,800円前後。またすでにV3 Editorを持っている人には6,980円での優待販売を行うとのことです。発表会でのデモを見る限り、かなりの完成度となっていましたが、具体的にどんなことができるのかを紹介していきましょう。
このソフトをCubase 6.5が入っているWindowsマシンにインストールすると、まずVSTiとして「VOCALOID VST」というプラグインが追加されます。これこそがV3のエンジンであり、歌声を合成する心臓部です。
ただ、これだけでは当然歌わせることができません。やはり、V3 Editorに相当するものが必要になるわけですが、CubaseのMIDIメニューを見ると、キーエディターやスコアエディターと並んで「VOCALOIDエディターを起動」という項目が追加されているのです。
これを開くと、まさにV3 Editorソックリのウィンドウが開き、ここで新たにデータを入力していくことができます。またすでにMIDIトラックに存在しているMIDIのパートを選択して、「VOCALOIDエディターを起動」とすると「選択したMIDIパートをVOCALOIDパートに変換します。一度変換すると元に戻せません」といったメッセージが登場します。ここで「はい」を選べば、MIDIデータがそのままVOCALOIDエディタに読み込まれる形となるのです。
ここから先の操作はほぼV3 Editorと同じ。メニューの位置などが異なるということはありますが、ほとんど戸惑うことはないと思います。V3 Editorと比較した際、増えた機能も減った機能もないとのことです。
では、従来のCubaseとV3 Editorの2つで曲を作っていたときと比較すると、どう違うのでしょうか?単純に考えても想像ができるとおり、作業効率が格段に飛躍します。従来であれば、オーディオを書き出して、もう一方のソフトで読み込み、作業が終わったら、再度読み込む……ということを繰り返していました。もし、曲のテンポを変える、構成を変える……といったことになれば、またイチからやり直し、というわけでなかなか面倒でした。
先日、ユーザー開発によるV3SyncというV3 EditorをReWire対応させるツールが登場したので、こうしたものを利用すれば効率も上がるわけですが、今回のVOCALOID Editor for CubaseはReWire接続のレベルに留まりません。
今日の発表会で解説を行ったボーカロイドの父、剣持秀紀さんによれば、「これはCubaseとVOCALOIDの連携ではなく統合」とのこと。VOCALOIDのトラックにエフェクトをかけたり、ミキサーコンソールでレベルやパン、EQなどがいじれるといったところに留まりません。
VOCALOIDエディターとキーエディターやスコアエディターなどは完全にシームレスに繋がっているため、キーエディターでベロシティを入力したり、ダイナミクスをエディットしたり……といったことが自由に行えるのです。
また同じパートをVOCALOIDエディターとキーエディターの両方で開き、並べてみると、たとえばVOCALOIDエディタでダイナミクスのカーブをエディットしていくと、隣のキーエディタでもリアルタイムにエディットされていく…といった具合。またキーエディターのピアノロールの中に歌詞も表示されるようになっているのです。
気になる互換性なども、なんら問題はないようです。つまり従来のV3 Editorで使えていた歌声ライブラリはVOCALOID3のものもVOCALOID2のものも含め、読み込むことが可能です(VOCALOID2歌声ライブラリはインポートツールでの変換が必要なのもV3 Editorと同様)。またVSQXファイルのインポートやエクスポートも可能となっています(VSQファイルの扱いについては、現在検討中とのこと)。
このVOCALOID Editor for Cubase、まずは国内のみの販売になるそうです。画面上のメニューは日本語および英語の対応になりますが、歌声ライブラリに関しては中国語や韓国語、スペイン語などにも対応しているので、その点も問題ないそうです。
なお、剣持さんによると今回のデモではJobプラグインは実装されていないようでしたが、メニューにはグレーアウトされた形で入っており、近いうちに搭載する予定とのこと。またMac版についても聞いてみたところ、「Macへの取り組みの重要性は認識しており、鋭意進めています。まだWindows依存の部分があることは確かですが、このソフトの登場でVOCALOIDとMacの距離は近づいています」とコメントしてくれました。この辺は期待しつつ、まだしばらく待つ必要があるようです。
また新たな追加情報などがあれば、随時掲載していく予定です。