今年、2012年4月から中学校の学習指導要領の改訂が行われた結果、「ダンス」が必修になったというのをご存知ですか?(文部科学省~中学校武道・ダンスの必修化)創作ダンス、フォークダンス、現代的なリズムのダンスの3つから構成されていて、特にポイントとなるのは「現代的なリズムのダンス」=ヒップホップダンスなんだとか…。
さすがにヒップホップが得意な先生なんて、そうそういないので、教育現場は結構混乱しているらしいのですが、そんな中でちょっと面白い現象が起きています。そう、ダンス教育のために、中学校にACIDが導入されるケースが増えているというのです。
そんな話を聞いたのは、つい先日。たまたま、OTAI RECORD(アナログレコード、DJ機材のネット通販)の店長で、オタイオーディオ株式会社の取締役、井上揚介さんとのお話のなかでのことです。「最近、学校の先生からの問い合わせが多いんですよ。目的はやはりダンスの授業なのですが、買っているのは主に体育の先生ですね」と井上さん。もちろん、こうした現象はOTAI RECORDに限らず、ネット通販を含めさまざまなショップで起きているようです
先日、「ダンスのための音楽を初心者が1時間で作曲。ビデオも完成!」という記事で、ダンスミュージックがACIDで簡単できてしまうことを記事にもしているので、ACIDがダンスに向いていそうだ、というのは理解しているつもりですし、実際ダンスシーンでACIDが定番ソフトとして利用されているという話はよく耳にしています。でも私自身、ダンスに関しては完全な門外漢。
なんで、ACIDが中学の体育の先生に売れているのかなど、ハッキリは分からないので、井上さんにもっと根本的なことから尋ねてみたのです。そう、ヒップホップのダンス用の曲が、どんなものなのかというところから。
「ストリートダンスでもコンテストでも、平均的な踊りの時間は3~5分程度です。昔は1曲をまるごとかけていたけど、最近はちょっとアレンジをしてブレイクを入れたり、一部にスネアの連打を重ねて、ガッガッガッガッ…といった動きをしたりする。それぞれのチームが自分たちで手を加えた曲を使っているため、『あの子のトラック、カッコイイよね』といった話にもなるんです」(井上さん)
“アレンジをした”、“手を加えた”って、どういうこと?と思いたずねてみると「オリジナルを作るのではなく、既存の曲のイントロ部分をカットしてしまうとか、途中を切ってブレイクを入れたり、場合によってはテンポを少しいじってピッタリ時間内に収めるなど、さまざまな編集をしています。従来だとDTMなどが分かる知人に処理を頼むケースも多かったのですが、人に頼むと思い通りのものがなかなかできない……といった不満から最近では自分たちで編集作業をするケースが増えているようですね」と井上さん。実際、井上さん自身、お客さんからそうした相談、問い合わせが増えているといいます。
「ウチでは使いやすさという面からACIDをお勧めしています。実際、ダンスシーンではACIDが定番ソフトですしね。とくにACIDに搭載されているBeatmapperはとにかく簡単で便利ですから。曲の構成を変えたり、ブレイクを入れたりといった作業がすぐにできます。ほかのDAWを使ってもここまで簡単にはできませんからね。ただMacユーザーの場合、ACIDが使えないのでAbleton Liveをお勧めしている状況です」と井上さんは背景を話してくれました。また、ACIDを使うことで、ノンストップCDを手軽に制作できるという点もウケているようですね。
確かに私もBeatmapperのためにACIDを使うことはよくあるので、納得です。実際に使ってみると分かりますが、ACIDにCDからリッピングした曲などを読み込ませると自動的にBeatmapperが起動します。ここで、ほとんど言われるとおりに指示に従って操作していくと、自動的にテンポ判定するとともに、キッチリと小節で区切ってくれます。そのため、「サビを2回繰り返したい」、「Bメロをカットしてサビにつなぐ」、「間奏の終わり部分に1小節ブレイクを入れる」……ということが簡単にできます。
また、Beatmapperを通して読み込んだ結果のデータはテンポを変化させると、それに追随してきてくれるので、微妙な時間の調整なども簡単にできてしまいます。
さらに聞いてみたところ、井上さんが勧めているのはACID Pro 7ではなく、安いACID Music Studio 8なんだとか。「機能的にはACID Music Studio 8で十分だし、価格的にも手ごろですから」と結構良心的!もっとも、こうした形でACIDを購入するお客さんは、あまりDTMとして捉えていないし、DTMという言葉自体知らない人も多いかも……とのこと。その辺はちょっぴり寂しい気もしますが、どんな形であれPCを使って音楽制作、音楽編集する人たちが増えてくれることは嬉しいばかり。
気が付くと音楽の先生より、体育の先生のほうがDTMに詳しくなっているのかもしれませんね。
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