WindowsでもMacでも、Linuxでも無料で利用できる多機能な波形編集ソフト、Audacity。いまや波形編集ソフトのデファクトスタンダードといってもいいと思います。今週頭に書き上げたばかりの晋遊舎の月刊誌Windows100%のフリーウェアDTMムック「実践DTM入門」(3月26日発売)でも、Audacityを大きく取り上げていたのですが、そのときのバージョンは1.3.14 Betaというバージョンでした。
ところが書き上げた直後の3月13日、約6年ぶりのメジャーバージョンアップということで、Audacity 2.0.0がリリースされていました。実際どう進化したのかちょっと使ってみました。
Audacityについてあまり、ご存知ない方もいると思うので、バージョンアップ内容の前に、その概要を簡単の紹介しておきます。このソフトは有志の人たちが集まって開発している波形編集=オーディオ編集ソフトであり、前述のとおりWindowsでもMacでもLinuxでもまったく同じように使えるソフトです。
具体的には録音ができ、録音した結果や、すでに手元にあるWAVやAIFF、MP3、FLACなどのデータを読み込んで波形表示させることができます。そして、それを自在に加工することができるというものなのです。DAWのように、MIDIが扱えたり、ソフトシンセが使えたりするものではありません。また音楽的な要素というものはほとんどなく、小節や拍といった概念もなく、本当に「音」をいじるというソフトとなっています。
「いじる」というのは、カット&ペーストといった編集はもちろんのこと、音量を変えたり、フェード処理、サンプリングレートの変更やエフェクト処理……とさまざまなことが可能です。中には「Vocal Remover」なんてエフェクトまで装備されているので、CDから取り込んだ曲をカラオケにしてしまうこともできます。
さらにAudacityは単なる波形編集ソフトにとどまらず、マルチトラック機能を持っているので、テープレコーダー感覚で録音し、音を重ねていくといったことは可能になっているのも大きな特徴です。
もし、Audacityに限らず、波形編集ソフトを使ったことがないということであれば、無料ですし、ぜひダウンロードして使ってみることをお勧めします。
さて、つい先日まで、正式版の1.2.6というバージョンとベータ版という扱いの1.3.14 Betaという2種類がありましたが、今回それが2.0.0と大きくバージョンアップされたのです。このメジャーバージョンアップということで、個人的にはかなりいろいろなことを期待してしまったのですが、結論からすると、たいしたニュースではなかったな、というのが正直なところです。
そう、機能、スペック的には1.3.14 Betaとほとんど変わっておらず、バグフィックスがされたというものだったのです。まあ、私個人的には普段、波形編集ソフトはSony Creative SoftwareのSound Forgeを使っているので、Audacityをあまり使っているわけではありませんが、先日そのムックを書くのに使ったときも1.3.14 Betaで不安定さを感じたことはありませんでしたから……。
ただし、ベータ版はやっぱり不安なので、1.2.6を使っていたという人にとっては大きく進化していますよ。やはり最大のポイントはVSTプラグインをサポートしている点。膨大に存在するVSTのエフェクトが活用できるわけですからね。ちなみにVSTプラグインはAudacityをインストールしたフォルダ内にあるPlug-Insフォルダにプラグインファイルを入れておけば次回起動時に認識してくれます。
個人的にはWindows版においてASIO対応してくれると嬉しかったのですが、2.0.0でもASIOは非サポートのままでMMEとDirectSoundとなっていました。調べてみるとSteinbergのASIOのライセンス契約とオープンソースであるAudacityという点で、うまくかみ合わないみたいですね。自分でソースコードをダウンロードしてコンパイルすれば使えるようです。この辺なんとかうまく解消してくれるといいのですが…。
【関連サイト】
Audacityのサイト