VOCALOID3にヤマハ非サポートの隠しコマンド!? ささやき声が出せるぞ!

2月3日、情報処理学会・音楽情報科学研究会による第2回目となる「歌声情報処理最前線!!」に参加してきました[2回目だから!!となっているんだとか。どういう学会だ(笑)]。これについては、AV Watchの連載で記事にする予定ですが、11あった発表のうちの1つが、ボーカロイドの父、剣持秀紀さんによる「歌声合成ソフトウェアVOCALOID3VOCALOID Job Plugin」というもの。

ここでは、VOCALOID3での音声合成方式がどうなっているのかについて、数式なども交えながら、難しい発表がされていたのですが、実はそんな話に混じって、VOCALOID3に用意されている隠しコマンドについても発表されました。さっき自分でも試してみて、実現できたので紹介してみたいと思います。

「歌声情報処理最前線!!」で講演した剣持秀紀さん



そう、それはタイトルにもあるようにVOCALOID3で「ささやき声」が出せるというもの。Megpoidに「Whisper」というささやくような歌声のライブラリがありますが、そうではなく、本当に「こそこそ話」をするように、ささやくことができるんです。

まずは、VOCALOID3 VY1V3を使って作ったこのビデオを見てください。

ね、これまでにボーカロイドでこんな声が出るのを聞いたことないですよね?これは母音を無声化するという技であり、専門用語を使って言うと「スペクトル包絡(ほうらく)はそのまま使用し、ソースにささやき声の母音の伸ばし音を使用」ということをしているのです。ちなみに前半の普通の声でしゃべるようなイントネーションになっているのは、PITPBSを使っての調教ですね。


講演では数式を交えた難しい話が中心ではあったが……

では、具体的にどうしたら、こんなささやき声が出せるのでしょうか?これは、発音記号に「_0(アンダーバーゼロ)」を加えるのです。分かる人なら、これだけの説明で分かると思いますが、そもそもVOCALOID3で発音記号そのものを使ったことが無い人も多いと思うので、簡単に説明しましょう。

VOCALOID3 Editorでは、ひらがなで歌詞を流し込んでいけば、簡単に歌わせることができます。が、流し込んだ結果をよく見てみると、たとえば「」と入力すると「こ[ko]」のように記号がついてきますよね。


ひらがなの後に発音記号が自動的に入力される

この記号がVOCALOIDの発音記号です。基本的にはローマ字のようなものなのですが、「」は「る[4M]」であったり、「にょ」は「にょ[Jo]」であるなど、少し独特なものになっています。この辺、詳細については「VOCALOID3公式完全マスター」で紹介していますので、よかったら参考にしてください。この本では先ほどのしゃべるようなイントネーションにするためのワザも紹介していますよ。

で、VOCALOID3ではこの発音記号を元に発音をしているのですが、たとえば「」をささやき声にするには「こ[ko_0]」と「_0」を後ろに追加するのです。このように発音記号をいじるには、音符内の文字をダブルクリックして、歌詞をエディットできる状態にした状態で「ALT」キー+「下矢印」を押すと発音記号が入力できるようになるので、ここで修正をするのです。こうして、母音の無声化をした結果が先ほどのビデオなのです。


発音記号の後ろに「_0」を付ける 

ビデオで示したとおり、母音を無声化すると、音程=ピッチの変化はわかりにくくはなるものの、ある程度のニュアンスは残っているので、ささやき声にも、いろいろと変化はつけられそうです。

この方法、剣持さんが講演で発表していたものの、実はヤマハ非サポートの裏ワザ。実際マニュアルにも一切記載はないんですよね。ただ、後で剣持さんに聞いてみたところ、実はこの裏ワザを発表したのは今回が初めてではなかったとのこと。昨年末の楽器フェアで話していたので、すでに使っている人もいるそうです。私個人的には、チェック不足で、今回初めて知ってびっくりした次第です。

なお、これはVOCALOID3 EditorでもTiny VOCALOID3 Editorでも使うことができましたが、VOCALOID2では使えません。本来の使い方ではないのかもしれませんが、このささやきボイスを実現させるためにVOCALOID3 Editorを導入するというのもアリなのではないでしょうか?
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