先日の米国NAMM SHOW 2012でお披露目され、大きな話題になっていたMOTUのDigital PerformerのWindows版。私自身がNAMMに行っていたわけではないので、ネットから流れてくる情報などを断片的に見ていただけでしたが、昨日、MOTUの国内代理店であるハイ・リゾリューションに話を聞きに行ってきました。開発元ではないので、すべてが明確になったというわけではないものの、その概要は見えてきたので紹介してみましょう。
今回、発表になったのは単独のWindows版というわけではなく、Digital Performerの新バージョン、Digital Peformer 8(以下DP8)。そのDP8がMacとWindows両対応のハイブリッドパッケージとして発売されるとのことです。
まだ詳細の発売時期まで確定しているわけではありませんが、すでに開発も大詰めに入っており、春には発売できるとのこと(春というのが3月をさすのか4月なのか、5月なのかは分かりませんが…)。また、今回は海外での発売と国内での発売は、ほとんど時間差なくいけるのではないか、という話でした。もちろん、国内で発売するものには、ちゃんと日本語のマニュアルも同梱されるとのことですから、その点は安心ですね。
でも、私個人の率直な感想として最初に感じたのは、何で今頃?という思い。これについては、ハイ・リゾリューション側も同じ感想を漏らしてはいましたが、「さまざまな状況判断から、この時期になったのだろう」とのこと。ご存知のとおり、MOTUではMachFiveなどのソフトウェア音源は以前からMac/Winのハイブリッドだし、同社のオーディオインターフェイスのドライバは当然Windows版を出していたため、アンチWindowsだったわけでもないし、Windowsでの開発力がなかったわけでもありません。
ただDPだけは1985年登場のMIDIシーケンサ、Performer時代から27年間、一貫してMacのみをプラットフォームとしたソフトだったのですが、ついにWindowsに対応したということのようです。「Logicが先日パッケージ販売をやめてダウンロード販売だけにしたため?」との質問に対しては、それも背景の1つになかったとはいえないだろうけれど、だいぶ以前からWindows版の開発は水面下で進めており、Mac版とまったく同じクオリティーがやっと出せるようになったのがDP8だった、ということのようです。
またMac版、Windows版ともに、64bitのOSにネイティブ対応。もちろん32bitでも従来同様確実に動いてくれるとのこと。ここで気になるのがそれぞれのプラグイン環境ですが、これはMac版、Windows版で状況に違いが出る模様です。
まずMac版はAU対応で、MASに関しては現状まだハッキリしないとのこと。またVSTも今のところ見送りのようです。プレスリリース上では「Mac OS X版は当面の間、AUプラグインのみのサポートになります」と記載されているくらいですからね。
一方、Windows版は当然VST対応となります。VST3のようですね。さらにReWireにも対応するので、さまざまなソフトとの連携は可能のようです(64bit環境でのReWireがどうなっているかは分かりませんが…)
では、DP7からDP8へのバージョンアップでは、何が変わっているのでしょうか?これについてはMac版での比較ということになりますが、DAWとして派手な仕様変更などはない、とのこと。ただ、前述のとおり64bit化するなど、かなりプログラムは作り直しているほか、グラフィックエンジンを一新したため、動作がキビキビとするようになっているとのことです。システム的にいえばAPIであるCarbonからCocoaへと移っているため、その点でも高性能化が図られているという話でした。
またプラグインに関していうと、DP7で好評だったギター用のプラグインを中心に15種類のプラグインを新たに追加したとのこと。具体的には2種類のクラシックギターアンプ、LiveRoom|B、クラシックギターペダル、モデリング技術をしようしたアナログディレイ……。さらにマルチバンドダイナミックEQ、ディエッサー、Subkick(キックドラムエンハンサー)、Springamabob(モデリングによるビンテージスプリングリバーブ)などが追加されているそうです。
またDP7用にはDP ControlというiPhoneでリモートコントロールできるアプリがありましたが、新たにiOSアプリをリリースします。DP8ではCueMixをiPadで操作できるアプリを登場させるとのこと。このアプリ自体は無償で、DP8とほぼ同時期にリリースされるとのことです。
【修正】
すみません、このアプリはDPそのものをコントロールするのではなく、MOTUのオーディオインターフェイスのミキサー部「CueMix」をiPadで操作できるようにするものとのことでした。お詫びして修正します。
ところで、NAMM SHOW開催中にTwitterなどで「Windows版はHP(Hewlett Pckard)のHP Z WorkstaionsとHP Elitebook Mobile Workstationsの2機種でのみ動作を保証する」といった話が流れてきていましたが、この点については明確に「ウソ」との回答がありました。これは単にNAMMの会場でデモしていたのがHPから提供されたこの2機種上であったという話であり、動作機種を限定するものではないそうです。もちろん、今後動作条件というのはハッキリと出てくると思いますが、広く一般のWindowsで動くようなので安心ですね。
その他、気になる点として「Mac版とWin版のデータの互換性」について質問したところ、ここは問題ないようです。実際、NAMM会場で動かしていたWindows版はDP7用に作ったデータをそのまま読み込んで使っていたそうですから。ただし当然のことながら組み込まれているプラグインに違いがあれば、そこは問題になります。ただ、DP8の標準プラグインで使っている限りは、双方向でデータの互換性は保たれるようです。
もうひとつ個人的に気になったのがプロテクトの問題。これまでDPではDVD-ROMに特殊な加工を施してプロテクトを行っていましたが、Mac、Winともにすでに光学ドライブを搭載しない機種が主流になりつつあり、この仕組みだとトラブルが発生しがちです。事実、以前、私の持っている光学ドライブを搭載していないMac MiniにDP7を入れようとしたところ、かなり苦労しましたから……。
この点については、まだ確定していない模様です。ただ、そうしたトラブルをさけるため、DP8ではメディアに加工するタイプのプロテクトではないだろうとのことでした。またWindowsとMacのハイブリッドということを考えてもも、双方で扱いやすい方法をとるはず、とのことでした。
前述のとおり、発売はもう少し先になりますが、1月18日以降にDP7を買ったユーザーはWindows/MacハイブリッドのDP8が無償で入手できるとのことですから、DPの導入を検討している人は、今購入しても損はなさそうですよ。