前回の記事でチラっと触れた話ですが、正式オープンになったので、お伝えいたします。10月21日のVOCALOID3の発売日に合わせ、オフィシャルガイドブックがヤマハミュージックメディアから発売されます。
出版社やタイトルからも想像できるとおり、ヤマハ研究開発センター・VOCALOID3開発チーム監修によるVOCALOID3のマニュアル本ですね。VOCALOID3の歌声ライブラリやVOCALOID3 Editorには冊子としてのマニュアルは同梱されていません。インストールに関する簡単な印刷物とPDFのマニュアルという構成であるため、「詳しい操作方法はオフィシャルガイドブックをどうぞ」というスタイルになっているわけです。
で、そのオフィシャルガイドブックの執筆を私が9月いっぱいかけてやりまして、つい先日、すべての校正作業も終わり、印刷会社へと流れていったところです。
この本はVOCALOID3 Editorに関するマニュアルになっており、12章立、トータル144ページというもの。最初の16ページがカラーで、後半は2色という構成です。各章の内容は以下のとおりです。
Chapter O1 大きく生まれ変わったVOCALOID の新バージョン、VOCALOID3
Chapter O2 VOCALOID3 の基本的入力方法をマスターする
Chapter O3 コントロールパラメータを積極的に活用しよう
Chapter O4 トラックとパートの上手な使い方
Chapter O5 伴奏や効果音用に使う2 種類のWAV トラック
Chapter O6 曲として仕上げるためのミキサー操作術
Chapter O7 エフェクトを用途に応じて増やせるVST プラグイン
Chapter O8 VOCALOID2 ライブラリをVOCALOID3 で使うには
Chapter O9 標準搭載の6 つのJob プラグインを使ってみよう
Chapter 10 Job プラグインを追加してVOCALOID3 の機能を拡張する
Chapter 11 さらに人間らしく歌わせるためのプラグイン、VocaListener
Chapter 12 DAW と連携させて高い完成度の曲に仕上げる
Special Interview VOCALOID の父、剣持秀紀さんインタビュー
各章の詳細については、目次ページを掲載しておきますので、ご覧になってみてください。見ていただけると分かると思いますが、対象としているのは、VOCALOID3でVOCALOIDに初めて触れる方からVOCALOID2を使いこなしてきた上級者まで結構広めです。ざっくりいえば、前半が比較的初心者向け、後半が上級者向けといった感じでしょうか。
これまでもDTMステーションの記事で触れてきたとおり、VOCALOID3 Editorの基本的な入力方法は従来のVOCALOID2のそれを踏襲しているため、VOCALOID2を使ってきた人であれば、あまり違和感なく、すぐに入力に着手できると思います。ただ、トラックエディタウィンドウというものが新設されて、パートという概念が出てきたり、コントロールパラメータもVELやOPEなど従来とは動きが違ったものが登場しているので、前半部分もそれなりに上級者の役に立つのではと思っています。
後半ではVSTプラグインの組み込み方やミキサー機能との組み合わせ方、またJobプラグインの組み込み方法やその利用法、そしてDAWとの連携方法にいたるまで、VOCALOID3 Editorに関して全般的に解説しています。初心者にはなかなか難しいところもあるかもしれませんが、ミキサーにおけるインサーションエフェクトの使い方やセンドエフェクトの使い方など、信号の流れも含めて親切に解説してみました。
また個人的な思いもあり、どうしてもとお願いして入れさせてもらったのがChapter 11の「VocaListner(通称ぼかりす)」のページ。VOCALOID3の発売日にはまったく間に合わず、開発中の発展途上版ではあったのですが、やはり、ぼかりすはVOCALOID3の目玉機能ともいえるものなので、実際の使い方やその効果がどうなるかなどを含めて解説しています。
製品同梱のPDFマニュアルでは触れていないことや、簡単にしか書かれていない内容も、図や画面を多く交えながら解説していますので、VOCALOID3の使いこなしにはきっと役立ってくれるはずよ。いわゆる大手出版社の本ではなく、ヤマハの書籍なので、どれだけ書店に並ぶかが心配なところですが、見かけたらぜひ手にとってご覧になってみてください。きっとVOCALOID3が欲しくなると思いますから(笑)。
思い返せば、このオフィシャルガイドブック作成、なかなかハードながら楽しいお仕事でした。最初にこの話があったのは「故・植木等のボーカロイドができたってホント!?」の記事掲載確認をボーカロイドの父、剣持秀紀さんとTwitterのDMでやりとりをしていたときのこと。剣持さんから、「本の話が担当者から行くので、ヨロシク」との連絡があったのです。ただ、ちょうどお盆休みの時期で、結局具体的な打ち合わせができたのは8月下旬。そのとき、「VOCALOID3は10月21日発売が確定したので、それに合わせて本を作りましょう」といわれてビックリしたのです。「そんな短期間でゼロから本を作るなんて無理じゃないか……」って。ただ、その後は、VOCALOID3の開発現場の方々も無理やり巻き込みながら、なんとか作り上げていったのです。私も開発現場と直接やり取りすることはあまりないので、なかなかいい経験でした。みなさん開発の最終追い込みの超多忙な中、いろいろと対応いただきありがとうございました!
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