Windows版のソフトシンセというかDAWとして人気のImage Line SoftwareのFL Studio。先日、M3を見に行った際、同人CDを売っているブースで「どんなソフトを使って作っているんですか?」と多くの人に聞いてみたところ、かなりの高確率で「FL Studio」との返事が返ってきたのには驚いた覚えがあります。
そのFL Studioが、ついにiPad版およびiPhone版として誕生しました。iPad版がFL Studio Mobile HD、iPhone版がFL Studio Mobileというものですが、iPad版のほうを使ってみたので紹介してみましょう。
FL Studioを私が一番最初に出会ったのは1998年か1999年。Fruity Loops(フルーティーループス)という名前のオンラインソフトのドラムマシンでした。当時はまだそれほど多くなかったTR-808/909風なユーザーインターフェイスのドラムマシンで、とても面白く遊んだ覚えがありますが、その後SONARにバンドルされたりするうちに、FL Studioという名前のDAWに進化し、いまやメジャーDAWの一角にまでなってしまいました。
そのFL StudioのiPad版がアナウンスされたのは今年の2月。いつ出るのか、いつ出るのかと首を長くして待っていたのですが、先日ついに登場したのです。iPad版とiPhone版が別々のアプリとなっていたのは、ちょっと気に入らないところではりますが。で、iPad版、使ってみました。
起動してすぐに出てくるのは、お馴染みFL Studioの顔ともいえるドラムマシン(あ、各ボタンは顔のアイコンになってませんでしたが…)。これなら、すぐに打ち込めます。もちろん、ドラム音色はいっぱいあるので、好きなパーツを自在に並べていくことができます。最近のFL Studioって、独特な進化をしているだけに、ときどき触ると、使い方にかなり戸惑うのですが、このiPad版は、そうしたこともないですね。
次に音色選択の画面に。結構いろいろな音色があります。アコースティック系も含めていろいろあるようですが、やっぱりFL Studio、シンセ系が充実していますね。音色を選んでキーボードの画面に行くと、リアルタイムで演奏することができます。この際、iPadを回転させるボタンをオンにしておくと、傾き加減によってピッチベンドがかかるチョーキング演奏ができるのも楽しいところです。またモードを切り替えるとドラムパッドの表示になり、ここで直接叩くことも可能です。
それから例によってCoreMIDIにも対応しています。そのため、Camera Connection Kitなどを介してMIDIキーボードと接続すれば、そちらを使って演奏することもできました。この辺の設定メニューもしっかりしているので、いろいろと細かな調整が可能になっています。
よく見ると、デモ曲が何曲か入っているのに気づいたので、これを読み込んでみました。トラック画面を見ると、これはFL Studioというよりも、まさにDAWという感じですね。GarageBandなんかとも近い雰囲気といっていいでしょうか……。ただ、GarageBandとは根幹的な違いがいろいろあることも確かです。そう、GarageBandは基本的にリアルタイムレコーディングによってトラックを構成していくもので、基本的にエディットは考えられていません。
それに対しFL Studio Mobile HDはシーケンサであって、前述のとおりドラムマシンとして打ち込みができるのはもちろん、楽器パートもピアノロール画面でこまかくエディットしていくことができます。当然リアルタイムレコーディングしたものにクォンタイズをかけたり、ベロシティーを調整するといったことも可能です。
ただし、FL Studio Mobile HDにはオーディオトラックが存在しないため、ボーカルなどを扱うことはできません。ただし、完成したデータをWAVファイルとして書き出すことができるので、これをほかのアプリで読み込んでオーディオトラックと合わせていくというのも手かもしれませんね。
一方、エフェクトのほうはリミッタ、リバーブ、ディレイ、EQ、アンプシミュレータ、フィルターと一通りそろっているので使いではあります。とくにアンプシミュレータあたりは凝った作りになっているのでなかなか面白いですよ。
以上簡単にFL Studio Mobile HDについて紹介してみました。Windows版のFL Studioがすごいソフトに進化してしまっただけに、ちょっと別モノという感じもありましたが、個人的には非常に使いやすくて便利なアプリであると感じました。iPadで打ち込みをしたいという人にとっては、かなり使えるソフトといえるのではないでしょうか。
あ、それからもう1点。FL-Chanはどこにも登場してきませんでしたね。
【追記】
FL Studioのドラムマシン画面のインパクトが強かったので、オリジナルと思い込んでましたが、Twitterで指摘があって確認したら、Xewton Music Studioとソックリですね。確かに使っていて、何か使ったことのあるUI……という印象は持ったものの気づいていませんでした。
で、調べてみると公式なアナウンスは見つけられなかったものの、音楽方丈記で詳しくレポートされていました。これによると、ImageLineがXewtonに作らせたのがFL Studio Mobile HDおよびFL Studio Mobileであり、Xewton Music Studioがベースになっている、と。基本的な機能も同じだけれど、ドラムマシン画面などが新たに追加されている、とあります。
それぞれの差なども細かくまとまっているので、参考にされてはいかがでしょうか?
【音楽方丈記】
・Image Line SoftwareがFL StudioのiPhoneアプリ版 FL Studio mobile をリリース予定?
・FL StudioのiPhone/iPad版がついに登場 : Image Line Software – FL Studio Mobile