東京と大阪の会場を1年毎に交代しながら開催されるシンセサイザの祭典、Synthesizer Festa。今年のシンセフェスタは10月9日、10日の2日間、東京・新宿区の廃校になった小学校の跡地、芸能花伝舎で開催されています。
ここでは各楽器メーカーが勢ぞろいして、新製品の展示を行ったり、セミナーやコンサートなどが行われているのですが、ちょっと面白かったのがクリエイターズ横丁というコーナー。ここにはインディーズレーベルや同人音楽サークル、専門学校、個人メーカーなどが展示販売を行っていたのですが、そこで「monotron++」なるすごいものを発見しました。そう、KORGのmonotronを改造した機材で、VCAやMIDI端子が追加された機材が販売されていたのです。
そのmonotron++を販売していたのはbeanic.jpの武田元彦さん。本業はソフトウェア開発だそうですが、趣味でハードウェアの開発もしており、今回monotron++を初公開したとのこと。見た目は、monotronとはまったく異なるものとなっていますが、いろいろな機能を追加したため、monotronのオリジナルのケースには収まらなくなり、独自のシャーシに入れているというわけです。
ではどんな機能が追加されているのか。もともとmonotronはMS-10/20の回路を復刻したのがうたい文句となっていましたが、VCAがありませんでした。そこでMS-20と同等のVCAを搭載したとのこと。これがある意味ノイズフィルター的な機能もになうので、S/Nがよくなるという効果ももたらします。
さらに、monotronのVCOはノコギリ波だけだったので、ここに矩形波を追加しているのです。この際、パルスの幅の調整できるようになっています。また、モジュレーション用のLFOをディケイのみのEGとして使うためのスイッチも追加されています。
そして目玉はMIDI機能の搭載です。外部のMIDIキーボードなどからmonotron++を演奏できるようになっているのです。もちろんモノフォニックシンセなので、和音を弾けるわけではありませんが、ピッチベンドやモジュレーションホイールも効くようになっています。またMIDI制御をするため、リボンでは不要だったGLIDE機能も追加されています。
そのmonotron++、なんとたったの2万円という価格で販売されていたのですが、シンセフェスタ会場を一通り見た後に立ち寄ったときには、3台あったものが当然のごとくすべて完売となっていました。武田さんに聞いてみたところ、すべて手作りだから、せいぜい月産3台くらいが限界。受注販売するというわけにもなかなかいかない、とのことでした。
そもそも2万円という値段も、どう考えてもボランティア価格ですよね。やはり部品代はともかく、手間賃を考えたら完全に赤字ですから。で、その中身ですが、monotronに2つの基版を追加して構成されています。ひとつはVCAや矩形波などを追加するシンセサイザとしての拡張用基板。もうひとつはMIDI変換の基板です。
このうちのMIDI変換の基板は、その場で1,000円という価格で販売されていたので、私も購入してきました。といっても、本当に基板であって、部品などは別途自分で購入し、ハンダ付けして載せる必要があります。そもそも、monotronを改造するわけですから、それなりに電気工作が必要になるので、誰でも気軽にというモノではありませんが、monotronのMIDI化はなかなかの魅力です。
会場では1,000円で販売していましあが、Web上でも1,200円で販売されているので、シンセフェスタに行けなかった方は、ここから注文してみるのもよさそうです。
一方、シンセサイザとしての拡張基版のほうは、特注の可変抵抗(ボリューム)を使っているので、一般販売は難しいとのことでした。
私も時間を見つけて、部品を買い揃え、改造してみたいと思っています。
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