すでにニュースサイトでご覧になった方もいるかもしれませんが、「ポンキッキ」のキャラクタであり、Twitter上でも人気の「ガチャピン」がVOCALOIDとして10月8日に発売されることになりました。名前は「ガチャッポイド」このネーミングからも想像できる人も多いと思いますが、Singer Song Writerなどをリリースする大阪のソフトメーカー、インターネットの製品です。
この製品が従来のVOCALOID製品と違う最大のポイントは、ヤマハの「VOCALOID-flex(ボーカロイドフレックス)」という技術(システム)を世界で初めて採用し、ガチャピンの声質で「しゃべり声」が作成できるサービスがご利用できることにあります。このVOCALOID-flexとはいったい何なのでしょうか?
混乱している方もいると思うので、ガチャッポイドの製品に関して整理をしておきましょう。単体で発売されているガチャッポイド自体は、「初音ミク」や「がくっぽいど」などと同様のVOCALOID2製品であり、歌声データベースにガチャピンの声が使われているということ。この時点でVOCALOID3になるといったことはありません。
では、VOCALOID-flexとはいったい何なのでしょうか?これはパッケージソフトとはまったく独立したもので、ネット上で提供される有料のサービス(ASPとかクライドコンピューティングと呼ばれるタイプのもの)。値段に関してはまだ発表されていませんが、月額固定の料金になっている模様です。そしてガチャッポイド購入者には、ガチャピンのVOCALOID-flexサービスを6ヶ月無償で利用できるという特典があるのです。
VOCALOID-flexを一言でいえば「しゃべり声」を作り出すシステム。文字やイントネーションを入力すると歌ではなくしゃべる声をつくりだしてくれるのです。もちろん、VOCALOIDという名前がついていることからもわかるとおり、声優さんの声をサンプリングしたデータを元に声を合成していますので、リアルなしゃべり声が期待できそうです。その声優さんとしてガチャピンの声が収録されているため、ガチャピンのしゃべる声をユーザーは自在に作り出すことができるのです。
ここで、いろいろな疑問が沸くのではないでしょうか? 初音ミクの声でしゃべるのはないか、Megupoidはないのか…。以前にヤマハから聞いた話では、VOCALOID2の歌声データベースがVOCALOID-flexでも利用できるとのこと。ここは発表されていないので何ともいえませんが、やはりいずれ登場すると考えるのが自然だと思います。おそらくパッケージと同様に初音ミクはクリプトン・フューチャーメディア、Megupoidはインターネット、氷山キヨテルはAHS……といった感じになるのではないでしょうか?中には登場しないものもありそうですが。
次の疑問はパッケージソフトとの関係です。これは完全にクラウドで処理するシステムのようですから、パッケージは不要です。つまり歌は不要だけど、しゃべりだけ欲しいという人はパッケージを購入せず、VOCALOID-flexの月額料金だけ支払えば利用することができるのです。
そして気になるのは、実際の使い方です。今年4月にAV Watchの私の連載、「Digital Audio Laboratory」でVOCALOID-flexについて開発者のみなさんにインタビューをしているので、ぜひご覧ください。ただ、結構長いインタビューなので、簡単にまとめるておきましょう。
プロトタイプとして見せてもらったシステムのユーザーインターフェイスは、従来のVOCALOIDのものとは大きく異なるものでした。文字を入力するとともにイントネーションに当たるピッチの変化を指定。さらに音素の長さ(ひとつの音の長さ=時間)を指定するとともに、音量の変化も指定できるというものになっていました。これによってイントネーションを自在につけられるというわけです。
プロトタイプでは、実験的にいろいろな入力方法を作っていましたが、正式サービスでは比較的簡単な方法に絞られるのかもしれません。
インターネットの報道発表を見る限り、VOCALOID2製品であるガチャッポイドの発売は10月8日ですが、VOCALOID-flexのサービススタートがいつになるかは明記されていません。つまり10月8日以降になる可能性も大きいわけです。
理想は、VOCALOID-flex機能がVOCALOID2のエンジンもしくはエディタに搭載されること。こうすれば、もっと抑揚をつけた歌声が作り出せると思うのですが、それにはVOCALOID3もしくはVOCALOID4といった次期製品まで待つ必要がありそうです。