とっても昔の機材、AMDEK CMU-800というものをご存知ですか? 先日実家の自分の部屋を片付けていたら、1980年代初期のパンフレットが大量に見つかり、その中のひとつがこれ。1982年に発売された日本初の本格的なDTM機材ともいえる製品です。
個人的にも、非常に思いで深い機材なのですが、4ページのこのパンフレットをスキャンしてみたので、今回はこのCMU-800のパンフレットを見つつ、昔を振り返ってみましょう。
まずは、このAMDEKというメーカー、聞いたこともないという人が大半だと思いますが、現在のローランドDGの前身であり、ローランドの子会社。実際、CMU-800を出してしばらくしてから社名をローランドDGに変更しており、Roland DGロゴのCMU-800も存在しているのです。
CMU-800を一言でいえば、パソコンとシンセサイザを接続するインターフェイスであり、かつシンセサイザ音源も搭載した機材です。現在であれば、それはMIDIインターフェイス機能搭載のシンセサイザということになりますが、CMU-800自体はMIDIには非対応。というのも、このCMU-800が発売された1982年はちょうどMIDIの規格が生まれた年でもあり、まだMIDIがまったく普及していなかったからです。
MIDIの普及前に使われていたのはCV/Gateというアナログシンセをコントロールする方式。CVとはコントロール・ボルテージの略で、0~5ボルトの電圧を使って音階をコントロールするというもの。1ボルト上がると1オクターブ上がるという取り決めになっていました。一方、Gateはキーのオン/オフをコントロールするものであり、この2つを使って自動演奏を行っていたのです。
もっとも、当時高校生だった私自身は、65,000円もするCMU-800を買う財力はなく、人から借りて使っていましたが、そのCV/Gateはまったく使わず、CMU-800自体を音源として鳴らしていました。そうここには6ch分のシンセサイザとドラム音源が搭載された画期的な機材だったのです。1chがメロディー、2chがベース、3~6chがコードで、9chがリズムという構成。付属のシーケンサソフトを使って演奏させることができたのです。
ただし、CMU-800本体は特定のパソコンに対応したインターフェイスというわけではありませんでした。まだパソコン(という言葉すらなく、当時はマイコンと呼んでいました)のCPUが8bitで、メモリ容量は32KB(キロバイト)やせいぜい64KBという、今から考えるとあまりに原始的な時代。NECやシャープ、Appleなどがマイコンを発売していたため、それらにCMU-800を接続するためのインターフェイスとシーケンスソフトが別途用意されていたのです。
このカタログにもあるとおり、具体的にはNECのPC-8001、PC-6001、PC-8801、またシャープのMZ-80C、MZ-80K、MZ-80K2、MZ-80K2E、MZ-1200、またMZ-80BおよびMZ-2000、そしてAPPLE II用のものがそれぞれ発売されていました。
私自身はお年玉を貯めて購入したPC-8001を持っていたので、CM-PCというインターフェイスを使って接続。カタログを見ると「CMU-800のプログラムは、PC-8001の場合、32Kシステムでしか動作しませんので、32Kシステムに増設されていない方はご注意ください」とあります。そうPC-8001は標準で16KBでしたからね。
興味のある方は、ぜひこのパンフレット、じっくりと読んでみてください。大昔の文章から、思わぬ発見がいろいろあるかもしれませんよ。
【関連情報】