iPadではなくiPhone用に復活したReBirthのデキ

1996年にスウェーデンのベンチャー企業Propellerheadが開発したReBirth RB-338。RolandのTB-303を2台とTR-808TR-909をソフトウェア的に復元して組み合わせたReBirthは、まだソフトシンセというものがほとんど存在しない時期だったこともあり、世界中から大きな注目を集めました。

そのReBirthも役割を終え、2005年には製造終了となり、殿堂入りし、現在ではフリーウェアとして配布されています。しかし、そのReBirthが5年のブランクを経てついに復活!iPhone用のアプリとして5月1日に800円で発売されたのです。


ReBirth For iPhone


ご存知のとおりPropellerheadは、大ヒットとなった統合型ソフトシンセであるReasonやギタリスト向けレコーディングソフトであるRecordを開発したメーカー。それと同時にDAWとスタンドアロンのソフトシンセ(たとえばReasonや初音ミクをはじめとするVocaloid2など)を有機的に接続して同期させるReWire規格を作り上げた企業でもあります。

私自身がこのPropellerheadの最初に出会ったのは1997年。「海外のソフトメーカーがTR-808やTB-303をシミュレーションする、とんでもないソフトをフリーウェアで配布している」という話を聴いて、ダウンロードしたことを今でもよく覚えています。正確にはフリーウェアではなく製品になる前のβ版だったのですが、起動してみて、かなりのショックを受けました。

今でこそソフトシンセが当たり前の時代ですが、当時はまだほとんど見かけないころで、確かFPDというMIDIデータをWAVファイルへ変換する非リアルタイムで動作するソフトがあった程度。そこに、TB-303が2台、TR-808とTR-909という往年の名機が、まさにソックリな音でリアルタイムで動くソフトが登場したのですから、本当に驚きだったのです。

ReBirthは、その後Windows/Macハイブリッドのソフトとして発売されて大ヒット。バージョンアップしたり、機能縮小版がリリースされるなどしましたが、基本的に最初の時点で完成されていたので、2005年の製造終了までほぼ同じ形を保ってきました。

https://www.youtube.com/watch?v=4HQ2GVMi2tQ

ReBirth for iPhoneのプロモーションビデオ

そのReBirthがそっくりそのまま、iPhone用のアプリとして復活したのです。イギリスの雑誌の記事が元となり、「PropellerheadがiPad用にReasonをリリースするのでは……」という噂が飛び交っていましたが、まずはよりシンプルなReBirthから登場したようです。iPad専用ではなくiPhoneおよびiPod touchで動作するから、すぐにでも多くの人が使えそうです。


ReBirthはiPhoneやiPod touchで動作する

ちなみに開発自体はPropellerheadではなく、「Synth」、「FourTrack」、「Recorder」などDTMソフトをiPhone用に開発してきた実績のあるRetronyms。

その画面、そして音を聴けば、まさに脱帽モノの完成度であり、PC版のReBirthを完全に再現してくれています。具体的には前述のとおりTB-303が2台、TR-808とTR-909が1台ずつの4つのモジュールが搭載されているほか

・パターン・シーケンサ
・パターン・コントロール・フィルタ
・ディストーション
・コンプレッサ
・ミキサー
・フル・オートメーション機能
・パターンを組み合わせてのソング作成機能
・Mod対応機能

などを備えています。また作ったソングをほかのReBirthユーザーと共有する機能も新規に搭載されています。

一方PC版から削除された機能を強いてあげれば外部機器とMIDIを使っての同期機能がないこと。というのも、現時点iPhone用のMIDIインターフェイスというものが存在しないので、どうにも仕方がないところでしょう。ただ、すでにLINE6がMIDIインターフェイスを発売することを表明していますから、そのうちアップデートによって対応するようになるかもしれませんね。

ただし、触ってみるとちょっと問題も感じました。というのも、iPhoneでの操作だと、画面が小さすぎて操作しづらいのです。もちろん、画面を拡大することもできるし、操作したいモジュールを一発で大きく表示させるといった機能もあるのですが、それでも操作性が、いまひとつという印象です。


モジュールごとに拡大表示することもできる

画面をもっと大きく表示させれば、使いやすくなるのではと、iPadにインストールして、2倍表示モードで映し出したところ、確かにパッと見た目は大きくなったのですが、操作性は変わりません。また、拡大すると文字もつぶれてしまうので、必ずしも見やすいわけでもありません。


iPad使えば表示は大きくできるが、操作性は変わらない

こうした操作性の悪い理由は、これがiPhone用にゼロから作ったソフトではなく、PC版のソフトを移植したことにあるようです。つまり、マウスでの操作を前提にした作りになっているためのようです。

逆にいうと、先日使ったKORGのiELECTRIBEのユーザーインターフェイスが良すぎるのかもしれません。インタビュー記事ももあったとおり、iELECTRIBEはマルチタッチ対応で、各ボタンを同時に押せたり、複数のつまみを同時に動かせたりしますが、ReBirthでは、ひとつずつしか操作できず、たとえばTR-808の16個並ぶボタンのところを指でスライドさせても、反応してくれないのです。

もしiELECTRIBE的な操作性を実現させるために作り直すと、ゼロからの作り直しを強いられてしまうのかもしれませんが、ぜひ今後のアップデートで対応してほしいところです。

まあ800円のソフトに、あまり文句をつけてもかわいそうではありますが、音源としてのデキは間違いありません。興味のある方はぜひ入手してみてはいかがでしょうか?

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