Windowsにおいて、カーネルミキサーを介さずにオーディオを出力したり、レコーディングしたりできるASIOドライバは、レイテンシーを小さくできるとともに、より高音質な入出力が可能であることからDTMにおける標準となっています。
このASIOとほぼ同等なことをMicrosoftがWindows標準の機能として搭載したのがWASAPIです。このことは以前にも紹介したとおりですが、このWASAPIをAppleのiTunesが標準でサポートしているというのをご存知ですか? そうWindows Media Playerもサポートしていないというのに……。
本来のDTMの話題からはちょっと離れますが、簡単な方法によってWindowsをより高音質なプレイヤーとして活用するできる可能性があるので、その設定方法について紹介してみましょう。
音にこだわりのある人にとって、Windows標準のプレイヤーソフトであるWindows Media Playerは「音が悪い」として避けられてきたことは事実です。その背景にはやはり、MME/DirectSoundドライバが採用されており、カーネルミキサーを経由することから、音質劣化が発生していたことがあるのです。そのため、ASIOドライバが利用できるプレイヤーソフトである、Winampやfoobar2000、uLilithといったソフトが使われてきました。
しかし、PCで音を聴くのに、わざわざ特別なプレイヤーソフトを使うのは面倒という人もいるでしょう。一方で、普段はiPod/iPhoneで音楽を聴くので、PCではiTunesを使っている、という人もかなり多いのではないでしょうか?
そのiTunes、残念ながらASIOには対応していないものの、バージョン9.0以降でWASAPIを対応しているので、これを利用することで、ある程度ながら音質を向上させることができるのです。iTunesのオーディオコントロールを行っているのはQuickTime Playerなので、WASAPIに設定するためには、まずQuickTime Playerを起動します。
そして、[編集]メニューから[設定]-[QuickTime設定]を開き、「オーディオ」タブを選んでみてください。ここのデバイス項目に「オーディオの再生に使用」という欄がありますが、この設定を「Windows Audio Session」にしてください。これがWASAPIを意味しているのです。
たった、これだけの操作で音が多少なりとも音質が向上する可能があるのですから、嬉しいですよね。ただし、WASAPIを利用するには条件があります。それはWindows Vista SP1以降かWindows 7である必要があります。
Windows XPの場合はOSがWASAPIをサポートしていないため、グレーアウトされて選択することができません。またWindows 7の64bit版は本来WASAPIをサポートしているのですが、iTunes側がまだ対応できていないため、現状のiTunes 9.1では利用できないようです。
とはいえ、実際に聴き比べてみたのですが、あまり大きな違いは感じられませんでした。ネット上の掲示板などを見ると、「劇的に変わった…」という声もあるので、環境によってはそうなのかもしれませんが……。あまり音に違いが出なかった背景にはWASAPIの動作モードというものと関係があるようにも思いました。
実は、WASAPIには「排他モード」、「共有モード」というのがあり、前者の場合は、1つのアプリケーションでそのオーディオインターフェイスを占有することができ、後者は各アプリケーションで同時に使えるというものです。
iTunes/QuickTimeでは後者のようで、結果として、Windows標準のミキサー、つまりカーネルミキサーも効いてしまうのです。となると、レイテンシーは小さくできても、音的には、それほど改善が見込めないのかもしれません。
ごめんなさい、共有モードであることは確かなのですが、それゆえにカーネルミキサーを通すという話は間違いですね。ただ、私の手元のマシンの動作として、カーネルミキサーを通っているような音となっています。原因がハッキリ究明できていませんが、また改めてテストして確認してみたいと思います。
追記2
以前テストしたのがHD-AudioのS/PDIF出力でテストしたのが原因だったかもしれません。インターネットのINASIOドライバのドキュメントによれば、HD-Audioの場合は排他(Exclusive)モード、USBオーディオの場合は共有(Share)モードを選択するとあるので、USBオーディオを使うと改善するのかもしれません。後日、別記事で検証してみたいと思います。
一回いろいろ追記したのですが、どうやら最初の考察で正しいようですね。共有モードにするとカーネルミキサーをとおり音質劣化するみたいです。
また、やや納得のいかなかったのは、出力フォーマットの設定です。96kHz固定となっているオーディオインターフェイスであっても、44.1kHzや48kHzを設定できてしまうのです。本来であれば、使用可能なサンプリングレート以外はグレーアウトされて、設定できなくなると思うのですが、どうもドライバ側?またはQuickTime側で勝手にリサンプリングを行ってしまうようなのです。これでは、やはり高音質を求めるのは難しいのかもしれません。
確かに、排他モードを採用すると、多くのユーザーにとっては、扱いづらい仕様になってしまうとは思いますが、ぜひ、今後のバージョンでのサポートを期待したいところです。
排他モードにすると、そのアプリケーションがオーディオドライバを占有してしまい、ほかのアプリケーションで音を出せなくなるので不便です。がiTunesが排他モード対応したからすぐに高音質になるというわけでもなさそうですね。