誰でも簡単に高音質な録音ができるポータブル型のリニアPCMレコーダーが各社から発売され、大手量販店にはリニアPCMレコーダーのコーナーまで設けられるようになっています。このリニアPCMレコーダー市場にKORGから少し毛色の異なるレコーダーが間もなく発売されます。
MR-2というこのレコーダーは、マイクを内蔵し、SD/SDHCカードに高音質で録音するという意味では既存のリニアPCMレコーダーと同様であり、実際リニアPCMレコーダーとしても使うことができるのですが、リニアPCMとは別にDSDというまったく異なる方式でレコーディングする機能を装備しているのです。
DSDというのはDirect Stream Digitalの略でSACD(SuperAudio CD)で採用されているデジタル・レコーディング方式。一般の音楽CDをはじめ、DAWなどで用いられているPCMとは大きく異なる方式であり、より生音、原音に近い音でのレコーディングが可能といわれているものです。DSDに関する詳しいお話はまた別の機会にしたいと思いますが、これまでAV WatchのDigital Audio Laboratoryでもたびたび取り上げてきたので、気になる方はそちらを読んでみるといいでしょう。
Digital Audio LaboratoryのDSD記事のまとめ(AllAbout内)
そのDSD、主に業務用として使われているため、機材の価格も非常に高く、一般ユーザーが使える機材はあまりないのですが、そのDSDに対応したコンパクトなレコーダーとしてMR-2が登場したのです。一般のリニアPCMレコーダーと比較すると、やや大きめではあるものの、片手に収まるサイズ。価格は75,600円とリニアPCMレコーダーと比較すると、やや高価ではありますが、従来のDSDレコーダーの価格からすると1桁から2桁も安い製品となっています。
もっともKORGがこうしたDSDレコーダーを出したのは、今回がはじめてではありません。これまでMR-1、MR-1000、MR-2000と3つのDSDレコーダーを発売しており、中でも2006年末に発売したMR-1はMR-2の前身となるポータブルレコーダーであり、DSDの世界では驚きを持って迎えられた製品でもありました。ただ、記録メディアが内蔵HDDであり、マイクも外付けであったため、ほかのリニアPCMレコーダーと比較して機能的に見劣りしていた面もあったのです。
そこで、高性能なマイクを内蔵するとともに、SD/SDHCにレコーディングする形に設計しなおされたのがMR-2というわけです。発売前の製品をちょっと使ってみましたが、確かに超高音質でその場の空気感まで非常にリアルに録音することができます。ちなみにMR-2は最高で24bit/192kHzでのリニアPCMレコーディングにも対応しているのも大きな特徴。音質的には24bit/192kHzはDSDとほぼ同程度のものという印象でした。
発売前の製品をお借りしてDSDでレコーディングしてみたところ、確かに非常に高音質。内蔵マイクで捉える音も非常にクリアで好印象。マイクの音の好みはあるとは思いますが、生っぽさという面では、既存のリニアPCMレコーダーを超えているといって間違いないでしょう。
とにかく、今ある音をできる限りいい音で保存したいという場合には、このDSDでのレコーディングはお勧め。ただし、問題は再生環境です。MR-2で再生するのであれば問題ないのですが、DSDのデータをそのまま再生できる環境がほとんどないのが実情。DVDメディアに焼くDSDディスクというSACDに近いフォーマットがあり、付属ソフトがこれに対応しているので、DSDディスクを活用するというのが限られた数少ない手段といえそうです。