9月8日、Steinbergから波形編集ソフト兼マスタリングソフトである、WaveLabの新バージョン、WaveLab 11がリリースされました。ラインナップは、従来通り上位版のWaveLab Pro 11およびWaveLab Elements 11の2つで、以前のバージョンからのバージョンアップなどは、Steinbergサイトからオンラインで購入可能。
今回のバージョンアップで、最大22.2サラウンドレイアウトのマルチチャンネル編集に対応し、ステムマスタリングも可能になったりと土台の強化が行われています。また、オートメーションの一機能としてクリップエンベロープによるパラメーターの自動化が可能になったり、新たにプラグインが追加されたりしています。それから、瞬時に簡単にエフェクトを掛けれるTrack Inspectorが搭載されたので、ライトな使い方も可能になりました。一方、残響音を取り除くDeReverbや新しいディザリングプラグインが搭載されたり、WaveLabだけでできることが増えた印象。ビデオ周りも強化され、全体的に間口が広がり、より使いやすくなったWaveLab Pro 11に搭載されている機能を中心に紹介していましょう。
WaveLabは、音楽制作ソフトCubaseを開発しているドイツSteinbergのソフトで、オーディオ波形編集ソフトとして誕生から20年以上経つ歴史のあるツール。登場して以降、さまざまな機能強化が図られており、CDのマスタリング機能であるオーディオモンタージュという機能を搭載したことで、プロの世界でもマスタリング用のツールとして幅広く浸透するようになっていきました。
現在のWaveLabのマスタリング機能や波形編集機能はかなり充実しており、最近ではビデオと連携して編集する機能が強化されるなど、ポストプロダクション全般で使える便利なツールへと進化していっています。今回のバージョンアップで、音楽だけの波形編集ソフト、マスタリングツールとしての役割だけでなく、ビデオの音声編集や音声配信の制作がより簡単になった印象です。
では、WaveLab 11のバージョンアップポイントを見ていきましょう。音楽的なところでいうと、まずは最大22.2サラウンドのマルチチャンネル編集に対応しました。映画やゲームの音楽制作に携わるエンジニアの方をメインに業務用としての機能強化が行われた形ですね。
またプロ向けの内容としては、ステムマスタリングに対応したことでしょうか。ステムマスタリングとは、たとえばドラム、ベース、ギター、シンセ、ボーカルなど パート別に書きだしたファイルを使ってマスタリングする手法。ミックスとマスタリングの中間の作業であり、従来の2チャンネルのマスタリングよりも音作りや全体の調整の自由度が高く、多くの場合Max8チャンネルのステレオに分けられます。WaveLab 11ではエンジニアが使いやすいようにトラックグループやトラックレーンという機能が搭載されており、普通のDAWでステムマスタリングを行うことも可能ですが、WaveLab 11はより特化した作りになっているため、使い勝手がよくなっています。
一方、個人で音楽制作しているクリエイターにも関係のある内容としては、まずは新しいプラグインが追加されました。追加されたプラグインは、Frequency 2、Squasher、Quadrafuzz v2、Imager、MixConvert V6、VST AmbiDecoderのそれぞれ。以前「Cubase Pro 11、Cubase Artist 11、Cubase Elements 11が誕生。Newプラグインの搭載、サンプラートラックの機能向上やグローバルトラックなどが追加に」という記事で、Cubese 11を紹介しましたが、そこで追加されたプラグインが、WaveLab 11にも搭載されました。
Frequency 2になり、ダイナミックEQ機能が追加されたので、各バンドの右上にあるDYNボタンを押すと、ダイナミックEQモードに切り替わり、最大8バンド分ダイナミックEQを扱うことができます。ダイナミックEQを使おうと思ったら、基本はサードパーティー製のプラグインを入手するしかこれまで手段がなかったのですが、デフォルトで搭載されたのは嬉しいところ。
またマルチバンドコンプ/サチュレーター/ゲートのSquasherは、昨今のEDMなどで使われる、強いコンプが特徴のプラグイン。ピード感のあるコンプを掛けたり、存在感を出したり、音圧を上げたり、モダンなサウンドデザインをしたり……、マルチバンドのコンプとゲート、歪みが一緒になっているので、自由度高く面白い使い方が可能。
Imagerは、ステレオの広がりをマルチバンドで調節できるプラグインで、最大4バンド扱うことができ、バンドごとにステレオの広がりやパン、音量を調整できます。ローミッドを左、ハイミッドを右にしたりして、1つの楽器でも2つの楽器が鳴っているかのような効果を出すことも可能。どれも高品質なプラグインとなっています。
さらにメータープラグインのSuperVisionも新搭載されています。レベル、ラウドネス、スペクトラムカーブ、位相スコープなど計17つのモジュールを最大9つまで表示することが可能で、必要な分を自分でカスタマイズして表示できます。マスタリング時に便利に使うことができるので、1つメーターを表示させる用のモニターを用意して、そこに常時起動しとくというのもいいですよね。
ここまでは、Cubaseにも新しく追加されていたプラグインでしたが、DeReverbはWaveLabで初めてお披露目になったプラグインです。部屋の残響音などを除去するプラグインとなっており、入力信号からリバーブをリアルタイムで削除するように設計されています。LEARN機能が付いているので、信号を読み込んで、REDUCTIONを操作すると残響音を消すことが可能。そのほかにもパラメータが付いていますが、手軽ながら精度よく無駄な響きを取り除くことができます。
また、少し地味ではありますが重要なものとしてディザリングプラグインが新搭載されています。ディザリングとは、ビット深度を変更したときのノイズ、エラーを防ぐための処理で、たとえば24bitの楽曲を16bitに下げるときに使います。MAAT Audioのプラグインスペシャリストによって開発された新しいディザリングプラグインは、7種類のノイズシェーピング、2種類のディザ、オートブランキングなどを装備している最新式のプラグイン。最終的に書き出す際になるべく作った音をいいように聴かせるための処理にも力を入れて開発されたわけですね。
プラグイン以外のところでは、クリップエンベロープによるパラメーターの自動化機能が追加されています。クリップエンベロープを使用して、VST3プラグインのパラメーターを自動化できるようなっており、ボリューム、パン、エフェクトのウェット/ドライの値を操作できます。
では、ビデオや配信の編集も行う人に関係する新機能についても見ていきましょう。まずは、Track InspectorにCleanセクション、Enhanceセク
また、オーディオトラックにダッキング機能が搭載されてました。これは音声とBGMのボリュームバランスを取るのに便利な機能で、トークのトラックをソースに設定することで、自動で話しているときはBGMを小さくしてくれて、話していないときには大きくしてくれます。細かく音声とBGMのバランスを取ることなく、声が聴きやすい動画を作ることのできる便利機能ですね。
ほかにも、映像音声編集の強化、オーディオモンタージュのパフォーマンスの向上、新しいスタートアップアシスタント、VST2/VST3プラグイン処理の改善、バッチプロセッサの機能強化……など、20以上の追加の新機能と改善が行われています。マスタリングを行っている方、マスタリングに興味のある方、映像の音声を編集している方など、使用用途が広がったWaveLabをぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。
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