先日SteinbergからAbsolute 5が発表されると同時にダウンロード販売がスタートしました。これはソフトウェア音源が詰まったパックで、Cubaseユーザーにはお馴染みのHALionやPadshop、Groove AgentをはじめとするSteinberg音源の最上位版がセットになっているほか、新たなシンセサイザなどが詰まった音源全部入りのパッケージです。Cubaseで利用できるのはもちろん、Studio One、Ability、Live、FL STUDIO、Pro Tools、Bitwig Studio……とどのDAWでもプラグインとして起動して利用可能。プリセット数は7,500以上、容量130GBというパッケージとなっています。
バージョン5になって追加されたのは、Backbone、Amped Elektra、Electric Bassの3つの音源。それから、Polarities、Sounds of Soul、Future Past PerfectというPadshop 2などの3つのエクスパンジョンも収録。実際に起動して試してみたので、Absolute 5とはどんなものなのか、アップデートの概要を中心に紹介してみましょう。
Absoluteは、2012年11月に発売されていたAbsolute VST Instrument Collectionから続くシリーズ。Absolute 5になって収録されているインストゥルメント音源の数は、28個と豪華な内容となっています。実際に収録されている音源は以下のそれぞれ。
Sampler & workstation | Synthesizer and electronic music | Drums & percussion | Cinematic instruments |
・HALion 6 | ・Retrologue 2 | ・Groove Agent 5 | ・World Instruments |
・HALion Sonic 3 | ・Sounds of Soul | ・Future Past Perfect | ・Dark Planet |
・Padshop 2 | ・Backbone | ・Studio Strings | |
Brass | ・Polarities | ・Prime Cuts | ・Symphonic Orchestra |
・Hot Brass | ・Skylab | ・Rock Essentials | |
・Anima | ・World Percussion | ||
Organ | ・Voltage | ・B-Box | |
・Model C | ・Auron | ||
・Triebwerk | Bass | ||
Pianos | ・Granular Guitars | ・Electric Bass | |
・Amped Elektra | ・Hypnotic Dance | ||
・The Eagle | ・Trium | Choir | |
・The Grand 3 | ・HALiotron | ・Olympus Choir Micro | |
・The Raven |
表には、エクスパンジョンも含まれていますが、とにかく膨大な量の音源が含まれていることが分かると思います。サンプラーのHALion 6をはじめ、シンセのRetrologue 2、Padshop 2などおなじみの音源から、ドラムやベース音源まで収録されているので、このパッケージ1つで音楽制作の環境をグッとレベルアップできます。
HALion 6については以前「サンプラーの枠に収まらない、強力な音源に進化したHALion 6を使ってみた」という記事で詳しく紹介したことがありましたが、まさにソフトウェアサンプラーの最高峰といえる音源。Cubase Pro 11などに収録されているHALion Sonic SE 3とはもちろん互換性があるけれど、HALion Sonicがプレイバックサンプラー&シンセサイザーであるのに対し、HALionはより積極的に音作りができるサンプラー。もちろん、利用できるライブラリの数も膨大です。
同様にCubase Pro 11に入っているリズムマシン、Groove Agent SEの上位版になるのがAbsolute 5に入っているGroove Agent 5。こちらも以前「全DAWユーザー必見。Steinbergの高性能ドラム音源、Groove Agent 5の実力」という記事で紹介したことがありましたが、エレクトロニックビートに使えるリズムマシンという側面がある一方、超強力なアコースティックドラムとしても使える音源であり、ドラム・リズムを充実させたいという人にとって、大きな力になるツールでもあるのです。
このHALion 6やGroove Agent 5を含めAbsolute 5に収録されているすべての音源はmacOS Mojave、macOS Catalina、macOS Big SurおよびWindows 10 (64ビット版)で動作します。またMacはVST 3、AAX、AUに対応、WindowsはVST 2、VST 3、AAXに対応しています。つまり、冒頭でも書いたようにほぼすべてのDAWで利用することができます。
価格は、通常版で55,000円(税込)、Absolute 4からのアップグレートは11,000円(税込)。またGroove Agent 5やHALion 6を持っている場合に適応されるクロスグレード版も用意されているので、値段のほうは、ぜひご自身でチェックしてみてください。もし音源を1つずつ揃えたら数十万円の内容なので、かなり割安な価格設定ですね。たとえば、HALion 6単体の価格は、36,000円(税込)なので16,000円の差額で、これだけの数の音源を入手できるわけです。
では、少し新製品をピックアップして、簡単にどんな音源になっているのか見ていきましょう。まずは、最大8レイヤーを直感的に重ねることのできるドラム音源、Backbone。エレクトロドラムを作るときに最適なこのインストゥルメント音源は、キック、スネア、ハイハット、パーカッションなど、オリジナルのドラムキットを作ることができます。サンプルを重ねたうえで、ピッチやフィルター、リバーブなどのエフェクトを掛けたり、目玉であるサウンド分離機能、DECOMPOSEというSteinbergが開発した機能を使ってユニークなサウンドエディットができます。
DECOMPOSE機能では、読み込んでいるサウンドがTONALとNOISEに分かれます。PRELISTENをオンしてモニタリングしたい方にソロを入れると、どいう風にサウンドが分かれているか聴くことが可能。またSENSITIVITY、CUTOFF、DURATIONを使って、TONALとNOISEに分ける具合を調節できます。調整が終わり、APPLYを押すと、新たにTONALとNOISEに分かれたレイヤーが生成されるので、これを使って個別にサウンドメイクが可能なのです。
作ったドラムサウンドは、オーディオデータとしてダイレクトに書き出し可能なので、ストックを作っていくこともできるし、流行りのドラムサウンドプリセットが用意されているので、そこからカスタマイズしていくことも可能。UIがとてもよくできているので、感覚的に使うことのできる優れた音源ですね。以下がBackboneを使ったデモトラックとなっています。
次にエレピ音源のAmped Elektra。エレピ音源は、いろいろなメーカーから発売されていますが、この音源は単純に音がよく、昔から使われ続けている音色も作れるし、いろいろな音楽ジャンルにハマる音色も作れる存在。DIやアンプを選択して手軽に音作りをしていくことができます。もちろん、各種エフェクターも装備されているので、この音源上で、幅広くサウンドメイク可能。さっと使えて、ビンテージ感もあるいい音源だと思います。
最後にElectric Bass。名前の通りベース音源となっており、Amped Elektraと同様にHALionから独立したインストゥルメントです。シンプルな操作性と良質な音色を持ち合わせており、70年代風のソウルフルな音からロックなピックキングサウンド、存在感のある音色までこなせるオールラウンダー。ちなみに約13GBと容量が大きいのでダウンロードに少し時間がかかりますが、それだけ本格派となっています。
ベースのピックアップの種類をJ-Bass、P-Bass、MMスタイル、フロントとリアの切り替えなどを行え、ラインとアンプのミックスをノブで調整可能。アンプを変えたり、エフェクトボードをカスタマイズできたりと基本的な部分をしっかりおさえたスタンダードな設計になっています。またフィンガーからミュート、スラップ、ピック弾きなど7つのアーティキュレーションを持ち、リアルなオートレガート、スライドも搭載しています。こちらもデモトラックがあるのでぜひ試聴してみてください。
この追加された3つの音源だけでも約50,000円ぐらいの内容なので、お得感満載ですよね。また、エクスパンジョンとして追加されたのは、Polarities、Sounds of Soul、Future Past Perfectのそれぞれ。Polaritiesは、神々しい響きと邪悪なノイズなど両極端なサウンドを探究とのこと。これは、Padshop 2のエクスパンジョンで、エレクトロニック&アコースティックライブラリーです。Sounds of Soulは、ソウルミュージックのシンセサウンドを網羅したRetrologueエクスパンジョン。Future Past Perfectは、NYハウス、フューチャーハウス、テクノのGroove Agentのエクスパンジョンとなっています。
なお、最近Absolute 4を買ったという人であれば、グレースピリオドと呼ばれる救済法により、無償でAbsolute 5へバージョンアップできる仕組みも用意されています。具体的には7月23日以降に購入または製品登録した人が対象です。詳細はこちらに用意されています。
以上、Absolute 5についてその概要を紹介してみました。Steinbergの定番の音源から最新の音色を持つインストゥルメントまで、幅広い楽器を網羅したパッケージとなっているので、ぜひ試してみてはいかがでしょうか?
【関連情報】
Absolute 5製品情報
Steinberg Online Shop
【価格チェック】
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