MiDiPLUSが再上陸、真空管搭載オーディオインターフェイスSTUDIO VALVEなど発売開始

以前、DTMステーションでも何度か取り上げてきた中国のDTM機器メーカー、MiDiPLUS CHINA。国内代理店の交代などのがあって、しばらく見かけなくなっていましたが、2021年9月から株式会社ファインアシストを通じて、正式流通がスタートしています。これを機会にラインナップも一新され、オーディオインターフェイス3機種の販売やストンプ型のMIDIコントローラーであるMIDI-SPYなどが発売開始されたほか、ユニークでインテリジェントなMIDIコントローラーである4 Page Boxなどもされる予定です。

「中国のメーカーってどうなんだろう?」と思う方も少なくないと思いますが、実は同社は、誰でも知ってる複数の大手メーカーのオーディオインターフェイスやMIDIキーボードなどを設計・開発している頭脳集団。そしてMiDiPLUSの親会社はLONGJOIN(ロンジョングループという、世界中のDTM機材、電子楽器の製造を請け負うトップメーカーでもあるのです。今回発売されるオーディオインターフェイス3機種をチェックすることもできたので、どんな製品なのか見てみましょう。

MiDiPLUSが11月に再上陸する

実際の製品チェックに入る前に、MiDiPLUSというメーカーをご存知ない方も多いと思うので、やや複雑な同社のバックグラウンドから簡単に紹介していきましょう。

MiDiPLUSは、1974年に設立された台湾初の電子オルガンメーカー、Ta Horng Wood Enterprise & Musical InstrumentのDTM機材部門として1994年に独立した会社でした。その後、2011年に中国のLONGJOINグループと資本関係を持ち、主な製品は中国側で開発・製造するようになっています。

2019年、上海の展示会でお会いしたMiDiPLUSの社長の黄健恒さん(右)とLONGJIONグループ会長・陳逸さん(左)

そのMiDiPLUSが開発・製造するMiDiPLUSブランドのオーディオインターフェイスおよびTAHORNGブランドのMIDIコントローラーを、以前に国内で取り扱っていた会社から変わり、冒頭で紹介したファインアシストが9月から正式に販売するようになったのです。

2019年のMusic Chinaで展示されていたMiDiPLUSのSTUDIOシリーズ

そのMiDiPLUSブランドで出る、今回のオーディオインターフェイス、STUDIO M PROシリーズ。実は私自身は、2年前にモノは見ていました。そう、2019年10月に上海で行われた展示会、Music China 2019で披露されており、当初は2019年末か2020年初頭には発売される予定だったのが、コロナ禍の影響などもあり、だいぶ遅れてしまったようですね。

もともと発表された時点で新オーディオインターフェイスのラインナップは6種類ありましたが、現在製品化されているのは

STUDIO VALVE (実売価格 32,780円[税込])
STUDIO 2 PRO (実売価格 19,800円[税込])
STUDIO M PRO (実売価格 15,950円[税込])

の3製品。いずれもブラックボディーで24bit/192kHzの入出力に対応したUSBオーディオインターフェイスになっているのですが、もっともユニークなのがSTUDIO VALVEです。

真空管搭載のUSBオーディオインターフェイス、STUDIO VALVE

これは仕様的には2IN/2OUTのオーディオインターフェイスで、フロントにコンボジャックが2つあり、リアにはTRSのバランス出力が搭載されているというもの。+48Vのファンタム電源スイッチもあり、Hi-Zに対応するためのINSTボタンもあるので、コンデンサマイク、ダイナミックマイク、ライン入力、ギター入力とオールマイティーに使えるオーディオインターフェイスとなっています。

中央に赤く光っているのが真空管。入力音、出力音をこの真空管に通すことで音が変化するようになっている

そのSUDIO VALVEの最大の特徴は真ん中に真空管が搭載されていること。「真空管搭載のオーディオインターフェイスって、何だ?」と思ったら、入力信号をこの真空管を通してサチュレートすることができる一方で、PCからの出力時に真空管を通した温かみある音にすることも可能になっているんですね。ファインアシストに確認してみたところ、この真空管、スロバキア製のJJ ELECTRONICECC83Sというもの。ギターアンプなどにもよく使われているタイプのものですね。

さすがに真空管を使うだけにACアダプタの利用が必須となっていますが、それ以外の基本部分はシンプルなUSBオーディオインターフェイスとなっています。ただ、最新のオーディオインターフェイスとして、あれ?と思ったのは、USB Type-Cではなく、USB Type Bの端子となっていること。そのため、MacBook ProなどUSB Type-C端子のみのPCと接続する場合は、間にUSB Hubを噛ませることが必須となってしまいます。もっとも、Type-Cは抜けやすいので嫌だ…という人も少なくないのでType Bであることにメリットを感じる人も少なくないとは思いますが……。

リアにあるメイン出力は6.3mmのTRSのバランスとなっている

では、その真空管、どのように使うのでしょうか?まず、STUDIO VALVEの電源を入れると赤く光るのですが、これ真空管のヒーターによる色ではないですね(笑)。ECC83Sはヒーターが光るほど明るくはならないので、イルミネーションとして赤いLEDが入っていて、それによって赤く光らせていたのです。

そして、これを機能させるにはVALVE TO OUTPUT/INPUTというボタンを使います。これが消灯しているとオフの状態、赤くなると入力に対して機能し、青く点灯すると出力に対して真空管が機能する形になっています。

真空管右のボタンを押して青く点灯させるとPCからの出力が真空管に通るようになっている

そしてどのくらい真空管で増幅させるかを決めるのが、その下にあるDRIVEノブ。これが左に絞り切っておくと、実質的にはったく真空管を通っていない状況でボタンをオフの設定にしているときと変わりません。が、これを右に回していくとだんだん大きく増幅されてサチュレーションしたサウンドに変化していきます。右に振り切ると、かなり歪んだ音になりますね。

もっとも出力に対してかけた場合、歪むというほど激しいかかり具合ではなく、少し柔らかい音になる……といったニュアンス。非常にS/Nはよく、クリアなサウンドだからこそ、この真空管がいい感じに機能してくれるんですね。オーディオファンの人たちにうまくプロモーションしていくと、もしかしたら大ヒット製品になるのでは……という印象を持ちました。いずれにせよ、DRIVEのレベルは好みに合わせて調整するのが良さそうですね。

ツマミ部分のLEDはレベルに応じて光るレベルメーターの役割も担っている

またLEDのレベルメーターが搭載されているほか、入力レベルに応じて、入力ゲインのツマミのLEDが点灯するのも面白いところ。ダイレクトモニタリングボタンや、左チャンネル(または右チャンネル)にギター入力したときも、ステレオでモニターできるMONOボタンなども用意されています。

STUDIO VALVEの右側にはダイレクトモニタリング用のボタンが用意されている

今回STUDIO VALVEと同時に発売されるSTUDIO 2 PROはSTUDIO 2 VALVEから真空管を取り除いたもので、それ以外の機能はほぼ同等。サイズ的には真空管がない分、横幅が2/3程度のサイズになっているほか、真空管がないためACアダプタも不要で、USBバスパワーで動作するようになっています。唯一の違いはダイレクトモニタリングがボタンスイッチではなくボリュームになっている点で音量調整が可能になっていること。その意味ではSTUDIO 2 PROのほうが融通が利くともいえそうです。

STUDIO VALVEから真空管を取り除いた形の2IN/2OUTのオーディオインターフェイス、STUDIO 2 PRO

もう一つ同時発売になるSTUDIO M PROは1IN/2OUT(DAW側から2IN/2OUTとして見え、ステレオ入力の2chとも同じ信号が入ってくる形)という仕様になっており、ヘッドホン端子もリアにあるため、手のひらサイズで非常にコンパクト。もちろんUSBバスパワーで動作するし、STUDIO VALVE、STUDIO 2 PROと同様にLEDのレベルメーターも搭載されているので、視認性も抜群です。ただし、本体だけだとダイレクトモニタリングはできない仕様となっています。

入力はモノラルのみだが、非常にコンパクトなオーディオインターフェイス、STUDIO M PRO

と、ここまでがハードウェア側の特徴ですが、STUDIO M PROシリーズが面白いのはWindowsのドライバです。USBクラスコンプライアントなので、Macの場合はドライバ不要ですぐに使えるのが特徴なのに対し、Windowsの場合は、MiDiPLUSサイトからドライバをダウンロードしてインストールする必要があります。しかも先進的なのは、すでにWindows 11に対応したバージョンもリリースされており、この秋にWindows 11に乗り換えてもすぐに使うことができそうですね。

MiDiPLUS STUDIOシリーズ共通のドライバ。v.5.20.0はWindows 11/Windows 10共用となっている

で、そのWindowsドライバの何がユニークかというと、ドライバ自体はSTUDIO VALVE、STUDIO 2 PRO、STUDIO M PRO共通となっているのですが、いずれの場合も仮想ドライバを装備しているため、オーディオインターフェイス的には2IN/2OUTだけど、DAW側からは8IN/8OUTで見えるようになっているのです。どこに、どの音を割り当てるかは、Audio Mixer Controlというマトリックスミキサーで設定できるようになっています。

Cubaseから見ると8IN/8OUTのオーディオインターフェイスとして見える

これを見ると仮想ドライバが入出力とも12個ありますが、使えるのはこのうち6つずつということのようですね。また、Application Playback 1/2というのがあるので、これを割り当てることでループバックが可能になるわけです。しかもその音量レベルは自由に設定できるので、状況によってバランスを調整することも可能です。

マトリックスミキサーを用いて、仮想ドライバ、ループバックを自由にアサインできる

また、前述の通りSTUDIO M PROの場合、ハードウェア操作上ではダイレクトモニタリングはできないものの、このマトリックスミキサーを利用することで、ダイレクトモニタリングでもループバックでも自由に行うことが可能となります。

とはいえ、こんな大きいマトリックスミキサーを使うのは難しそう……という方は、シンプルモードというものも用意されており、もっと簡単にループバック設定などができるようにもなっています。

もっと簡単にループバック設定などができるシンプルモードのミキサーも用意されている

このように価格も手ごろですし、機能的にも充実しているので、今後定番のオーディオインターフェイスとして使われていくことになるかもしれません。

最後に、オーディオインターフェイスとはちょっと異なるMiDiPLUS製品2つについても軽く紹介しておきましょう。

フットペダル操作でMIDI信号を出力できるMIDI-SPY

まずMIDI-SPYはエクスプレッションペダルやフットスイッチの情報をMIDI データに変換し、さまざまなMIDI機器のコントロールを可能にするというユニークなアイテムです。たとえばMIDIプログラムチェンジの操作をフットスイッチで行うとか、外部に取り付けたエクスプレッションペダル操作でシンセのフィルターをコントロールする…なんて使い方もできそうです。以下に紹介ビデオがあるので、ご覧になるとよく分かると思います。

なおUSB接続でPCに対して信号を送ることもできるため、ソフトシンセのコントロール用としても威力を発揮しそうです。

もうひとつ、まだ発売日や価格は確定していないとのことですが、4 Pages Boxというユニークな機材も登場する予定です。これはコンパクトなボディにさまざまな機能を凝縮したインテリジェントMIDIコントローラー。CC(コントロールチェンジ)、TRI(トリガー)、NTE(ノート)、SEQ(シーケンサー)の4 つのモードがあり、8つのキースイッチを使って、自由にMIDIデータを送出することできるというものです。

キースイッチ操作でMIDI信号を自由に作り出せる4 Pages Box

オンオフタイプのコントロールを26種類送出できるので、プラグインシンセのキースイッチなどにアサインすることで、オクターブの少ないMIDIキーボードを使用時にもトランスポーズを行わずに演奏が可能になります。CCモードでは自由にコントロールチェンジ情報を出力することができたり、SEQモードでは8ステップのシーケンサとして使えるなど、小さいながらも自在にMIDI信号を作り出すことができるという意味で、とっても便利な機材です。しかも普通のMIDIケーブルでの接続のほかにBluetooth-MIDIでの接続も可能であるため、さまざまな活用ができそうです。
いずれも、工夫次第でかなり幅広い使い方ができそうなので、また新しい情報が入ったら改めて詳細を紹介できればと思っています。

【関連情報】
STUDIO VALVU製品情報
STUDIO 2 PRO製品情報
STUDIO M PRO製品情報
MIDI-SPY製品情報
4 Page Box製品情報

【価格チェック&購入】
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