DTMステーションでもこれまで何度か取り上げてきた、ドイツ・ベルリンのDAW、Bitwig Studio。新世代DAWとして2014年に誕生して以降、順調に機能の進化を果たしており、先日最新バージョンであるBitwig Studio 4が発売されました。ライブパフォーマンスで使えるということで世界的にも注目を集めたわけですが、もちろんレコーディング用、打ち込み用、アレンジ用、ミックス&マスタリングツールなど音楽制作用途全般でも大いに活用できるDAWであり、既存のDAWとはひと味違う存在感を放つツール。既存のDAWと一緒に使うサブDAWとしても大きな威力を発揮するところもポイントです。
アップグレードプランの有効な既存ユーザーは、Bitwig Studioを起動すると、無償で最新バージョンにアップグレードでき、新規ユーザー向けの通常版またはダウンロード版が50,875円(税込)です。アップグレードプランは、通常版を買ってから12か月間有効となっているため、これが過ぎてしまっている場合は、12ヶ月アップグレード版の20,900円(税込)を使って最新バージョンにアップグレード可能。また、クロスグレード版は34,100円(税込)となっています。Bitwig Studioが最新バージョンになって、どんな強化がされたのか、その概要を紹介してみましょう。
Bitwig Studioは、新世代のDAWとして発売当初「Ableton Liveの競合DAW」などと言われて大きな話題になっていました。ドイツのBITWIG社によって開発され、ループ素材を切り替えながらリアルタイムに曲を構成していくライブパフォーマンスに向いた機能も装備しているだけでなく、音楽制作に向けた機能も非常に充実しています。比較的新しいDAWだけあって、今どきの音楽制作にマッチした機能が多数搭載してあり、ユニークな側面も持ち合わせています。
以前Bitwig Studio 3が出た際に書いた「サブDAWとしても大きな威力を発揮するBitwig Studio。まもなく3.1も登場し、国内では数量限定の格安パッケージが販売中」で紹介した、The Gridは、ほかのDAWでは見たことない機能で、自分でシンセサイザなりエフェクトなりの設計までできてしまいます。モジュラーシンセのようにオシレーターやフィルター、エンベロープジェネレーター、LFO、ミキサー……といった部品=モジュールを1つ1つ組み合わせてシンセサイザを作成可能。直感的に扱えるので簡単に操作でき、自分だけのシンセやエフェクトを作れてしまう面白い機能です。
さて新機能について見ていきましょう。Bitwig Studio 4になってオーディオ・コンピングが搭載されたので、MIDIのみだけでなく、オーディオも活用していくことが可能になりました。Bitwig Studioは自分だけのループや素材を作って、普段使っているDAWに取り込んで利用していくという活用法が個人的にはおすすめなのですが、バージョンが上がりBitwig Studio内だけでも、できることが広がっています。
オーディオ・コンピングは、ほかのDAWに搭載されているのでご存知の方も多いと思います。これは、録音したテイクのいいところを組み合わせる機す。Bitwig Studio 4では、どのテイクを採用しているか色分けされているので、瞬時に判断しやすくなっています。またオーディオ・コンピングが終わったオーディオクリップを右クリックして表示される「テイクに収める(Fold To Takes)」することで、オーディオ・コンピングし終わったテイクを元に再度編集していくことが可能です。
Bitwig Studioの目玉であるモジュレーションも、Bitwig Studio 4ではパワーアップしています。今回登場したのはオペレーター(Operators)という機能。ランダマイズやシーケンサーのようなこの機能はいわゆるループミュージックで活用する機能で、これには4つのモードがあります。
まず、「Chance(チャンス)」では、各ノートの発生確率を高くしたり低くしたり設定できます。ループさせている間、ノートが発音されたり、されなかったりするので、毎回違う偶然的な音楽を作ることが可能。
「Repeats(リピート)」では、各ノートを任意の音符の長さに分割したり、分割したノートの発音タイミングを調整した、ベロシティを調整した、再トリガーしたり……など変更できるため、1本の長いノートにでも複雑性を持たせることができます。
「Occurrence(出現)」では、各ノートを条件によって再生するかどうかを決めることができます。たとえば、最初のループだけ再生させたり、逆に最初のループだけでは再生させなかったり、直前のノートが発音された場合に再生させたり……、状況によってノートを出現させることができます。
最後に「Recurrence(繰り返し)」では、各ノートをループの回数によって再生させるか選択することができます。たとえば、1回目のループでは再生せずに、2回目では再生させたり、3回目では……、と決めていくことができます。
単純なループを作って、オペレーター機能を使うことで、フレーズを複雑化させていくことが可能なので、新しい発見などを見つけられると思います。たとえば、40%の確率で8分音符が流れてきて、1拍目のシンバルを4回目のループ時にだけ再生し、リピートを使ってポリリズムを作ったり……、ループするごとに違う結果にすることができます。これを録音していき、後で加工して楽曲に仕上げたり、ライブパフォーマンスすることもできますね。
また、エクスプレッション・スプレッドという機能が新搭載されています。ゲイン、パン、ピッチなどのパラメータが変化する幅をしていすることができ、これにより再生する毎に違う結果をもたらすことが可能。オペレーター機能と同様にノートにランダム性を持たせることによって、平凡なフレーズを複雑にすることができます。エクスプレッション・スプレッドは完全にランダムになるわけではなく、変化する幅が視覚的にも分かりやすくなっているので、自分で変化の幅を制御しつつ、ランダム性を利用して音楽を作ることができます。
そして、このタイミングでM1 Macにネイティブ対応し、M1のBigSur環境でも使えるようになっています。もともと、Bitwig StudioはWindows、Mac、そしてLinuxでも使えるDAWなので、今回のバージョンアップでほぼすべてのPCで安心して使えるようになったわけですね。試しに、M1 Macにインストールして、Bitwig Studio 4を起動させた上で、アクティビティモニタでチェックしてみたところ、確かにM1 Macネイティブで動作していることを確認することができました。
ほかにも、Bitwig Studioは日本語にローカライズされているので初めて使うユーザーでも利用しやすく、書き出しや読み込みの機能も強化されています。驚いたのは、FL Studio(FLP)やAbleton Live(ALS)のファイルをBitwigにインポートすることができるようになった点。もちろんメインのDAWとしても使いやすくなってるし、セカンドDAWとしての便利さもかなり向上しています。
Ableton LiveやFL Studioのファイルをそのまま開くことが可能になっている
ちなみに以前「既存のDAWとは違うアプローチの音楽制作ツール、Bitwig Studio 16-Trackが15,700円で発売開始」という記事で紹介した、Bitwig Studioに弟分ともいえるバージョン、Bitwig Studio 16-Trackというソフトも存在しています。最大16トラックまで扱える形で上限が設けられたバージョンですが、ほかのDAWとはちょっと制作スタイルが違う、機動性の高さは上位版と同様。気軽にサクっと音楽制作をするための新感覚のDAWで、制作アイディアを膨らませたり、曲作りの最初のキッカケをつかむために便利。まずはBitwig Studio 16-Trackから使い始めて、ここからBitwig Studioにアップグレードするのも一つの手。Bitwig Studioの体験版も配布されているので、まずはこれを試しみるのもよさそうです。
なお、先日からDirigentサイトにて、アーティストのYuri UranoさんによるBitwig Studioプロジェクト解説というユニークな連載が始まっています。
実際にYuri Uranoさん作成のプロジェクトファイルをダウンロードでき、いろいろチェックできるので面白いですよ。今後は、The Gridの解説記事も公開予定とのことなので、楽しみです。!
【関連情報】
Bitwig Studio 4製品情報
Bitwig Studio 4ニュースページ
Bitwig Studioデモ版ダウンロード
Yuri UranoによるBitwig Studioプロジェクト解説
【価格チェック&購入】
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※パッケージがBitwig Studio 3などとなっていても、Bitwig Studio 4発売以降にアクティベートするとBitwig Studio 4としてインストールされます。