上はプロのマスタリングスタジオ用のSequoia、一般DTMユーザー向けにはSOUND FORGE ProやACID Pro、またエントリー向けDAWとしてはMusic Makerなどを展開するドイツのMAGIXが、AUDIO PLUGIN UNIONというプラグインエフェクトのブランドを立ち上げており、ユニークなエフェクトを次々と開発、発売してます。
国内での販売窓口は、ソースネクストが行っていることもあり、低価格な設定になっているのも嬉しいところ。今回、紹介するcolorFX Suiteという音に色付けをするプラグイン3本のセットは9,900円。具体的にはテープサチュレーションソフトのTape Machine、真空管サチュレーションのTube Distortion、ビット解像度を落とすBitcrusherの3つ。Windows限定ソフトが多いMAGIXのソフトではありますが、WindowsでもMacでも動作し、VST2、VST3、AUに対応したプラグインとなっています。実際試してみたので、どんなプラグインなのか紹介してみましょう。
AUDIO PLUGIN UNIONはMAGIX内にあるブランドの一つで、プラグインエフェクトにターゲットを絞った製品群が揃っています。以前にも「ドイツMAGIXのプラグインエフェクト11本セット、wizardFX Suite。基本プリセット選択だけで使える即実践の便利ツール」という記事でwizardFX Suiteを紹介したことがありましたが、wizardFX Suiteが1パラメータで簡単に音を調整できるエフェクトだったのに対し、今回のcolorFX Suiteはパラメーターも複数あり、より積極的に自分で音を作り込んでいくタイプのもの。
各トラックに掛けて思い切り音を変化させる使い方もできるし、マスタートラックに掛けて、全体的に少し暖かみの音に仕上げる……といった使い方もできるエフェクトとなっています。
では、実際にどんなエフェクトなのか、それぞれを簡単に紹介してみましょう。まずはテープサチュレーションソフトのTape Machineから。
これはテープレコーダーにレコーディングしたような音に仕立てるエフェクトで、ちょっと昔っぽいサウンドにするためのエフェクト。読者のみなさんの年代によって、「テープは死ぬほど使ってきた」という人、「見たことはあるけど、触ったことはないし、実際にどんな効果があるのかも分からない」という人もいると思います。そのため、人によって受け止め方はそれぞれだと思いますが、MAGIXがこれを利用したデモビデオを作っているので、これをちょっとご覧になってみてください。
なんとなく雰囲気はお分かりいただけたでしょうか?このビデオではドライブというパラメータを上げていくことで、音が歪んでいくことが分かると思いますが、テープに大音量を突っ込んだような音になっていくんですね。単なるディストーションなどでの歪み方とは異なり独特な音の割れ方になっているのが感じられたのではないでしょうか?
音の大きさによってメーターが触れるのも楽しいところですが、画面右側にはノイズとかフラッターというパラメーターがあります。ノイズはテープ特融のヒスノイズというもので、このパラメーターを上げていくとサーーっという雑音成分が増えていきます。高音質化という面からすれば、明らかに使ってはいけないパラメーターではあるのですが、これがあることで、昔っぽい音が演出できたり、フラッターはモーターの回転ムラやテープ走行の乱れからくる音の揺れを演出するもの。
またテープ速度というパラメーターはピッチが上がったり下がったりするわけではないものの、テープ速度の変化による音質の変化をシミュレーションしてくれます。テープスピードとテープ・ヘッド・メカニズムによって、低音域の周波数を選択的に増幅できるので、より暖かみのあるサウンドに仕上げらるというわけなのです。
一方画面左側には入力フィルタ、右側には出力フィルタがあります。これらは直接テープレコーダーとは関係ない機能ですが、それぞれ左に回すとローパス、右に回すとハイパスになる形で、出力側にはさらにそれを強調するレゾナンスまで用意されているため、より積極的な音作りが可能。Tape Machineは単なるテープシミュレーターを超え、かなり音を大きく変えることができるエフェクトとなっています。
まあ、パラメーターがいっぱいあって、初めての人、テープレコーダーを知らない人にとっては最初は取っつきにくい面もあると思いますが、プリセットがたくさん用意されていますから、まずはこれらを使ってみるのがいいのではないでしょうか?またパラメーターにマウスカーソルを置くと、それぞれの説明がポップアップされる仕組みになっているので、これらもよく読みつつ、実際の音の変化を確認しながら音作りをしていくと面白いですよ。
続いて、Tube Distortionを見てみましょう。これは真空管アンプを通した音をシミュレーションするエフェクトで、テープシミュレーターとは違った方向で暖かみを演出してくれるもの。
画面を見てみると分かる通り、ユーザーインターフェイス自体はTape Machineとよく似ています。画面上部に入力信号、出力信号それぞれのVU+トルゥーピークメーターが搭載され、下側にサチュレーションをコントロールするドライブ、より積極的に歪ませるディストーションがあるほか、左右にフィルターが搭載されている点もよく似ています。使い方もドライブとディストーションを上げていくことで、音が歪んでいくという点でそっくりではありますが、その歪み方がかなり違うので、制作している曲、トラックがどちらに向いているか、両方使うのがいいのかなど、比較してみると面白いと思います。
もちろん、そんなに強くかけず、緩めに全トラックに掛けていくことで、雰囲気を変えていく……という使い方もあるので、いろいろ試してみるといいですよ。
ちなみに、このメーター部分、アナログ風なメーターだけでなく、左側の入力、右側の出力とも、4種類の表示方法を切り替えて使うことができます。スペクトラムを選ぶと周波数状況が分かるスペクトラムメーターに、波形を選ぶと音が波形で表示され右から左へと流れていきます。そしてラウドネスを選ぶとトゥルーピーク、ショートタームラウドネス、統合ラウドネスのそれぞれで表示されます。なお、VU+ピークメーターが「メートル」というカタカナ表記になっているころは、笑って許してあげましょう!
そして3つ目のBitcrrusherも見た目はよく似ているもののの、前述の2つとは打って変わり、完全なデジタルエフェクト。レートクラッシュとビットクラッシュという2つの大きなパラメーターがあり、左のレートクラッシュではサンプリングレートを落としていくことによる音質劣化を演出でき、右のビットクラッシュはサンプリングのビット深度を下げていくことでの音質の劣化を演出できるものです。以下がそのビデオです。
昨今のハイレゾとはまったくの逆方向、44.1kHz/16bitどころかか22.05kHz/8bitとか、さらには4kHz/4bit……といったLo-Fiなサウンドにしていくことができるのです。またジッターパラメーターがあったり、色パラメーターでは、あえて歪を追加することによってビット深度を下げた際の音色変化を調整することができるようになっています。
このようにcolorFX Suiteは、3つの方向の異なる音色の調整ができるエフェクトがセットになったものであり、ミックス用、マスタリング用として、かなり使えるもの。これがセットで3,980円という値付けは、さすがにソースネクストというか、ちょっとMAGIXが可哀そうに感じてしまいます。
前述の通り、これはWindowsでもMacでも使うことができます。また公式対応にはなっていないものの、M1 MacのStudio Oneで試してみたところもまったく問題なく使うことができました。
しかし、今回Windowsユーザーにとっては、さらに嬉しいセットとして、このcolorFX SuiteとMusic Maker 2021 Premium Edtionのセットというものも出ています。このDAWについては以前「初心者向けのDAW、Music Maker 2021が13,500円でリリース。これでもかという機能テンコ盛りは既存DAWユーザーにも有益かも!」という記事でも紹介していましたが、いろいろな活用法ができるので、ほかのDAWを使っている人にとっても買っておいて絶対に損のないものだと思います。もちろん、このMusic Maker上でcolorFXを使うことも可能ですから、これですべて完結させることも可能です。
【関連情報】
colorFX Suite製品情報
Music Maker 2021 Premium Edition製品情報
【価格チェック&購入】
◎ソースネクスト ⇒ colorFX Suite
◎ソースネクスト ⇒ colorFX Suite + Music Maker 2021 Premium Edition